マガジンのカバー画像

聖地のランドスケープ

16
世界中の聖地のランドスケープの構造を解明するためのフィールドワークの軌跡。
運営しているクリエイター

記事一覧

ある桜から教わった話

それは何の前触れもなく突然訪れた。 これまでも日本だけでなく世界中の聖地を調査していたので、不思議なことは何度もあった。だが今回は明らかに偶然ではないのだろうと確信している。宇宙まで突き抜ける青空が広がる暖かい春の昼下がりに、僕はその桜に呼びかけられたのだ。 仏陀の誕生日にあたるその日、僕は昼過ぎまで吉野で存分に千本桜を堪能して、近くにある龍鎮の滝へと車で向かっていた。その道中で路傍に立てられた一枚の看板が何気に目に入った。それを通り過ぎてから、数百メートルくらい進んだ時だ

「世界の中心へ」(2019年8月)

●8月1日/1st Aug ひょんなことから本日は京都大学の基礎物理学研究所に訪れる。 コトは先月、大学の広報から突然連絡があったことまで遡る...。京都大学の基礎物理学研究所が主催する研究ユニット「未来創生学」の国際シンポジウム最終日にパネラーとして登壇の依頼が来ていると連絡に驚く。 基礎物理学...? 覚えが無いが、コンタクトしてみると生命現象の大統一理論を研究している研究者だった。 やりとりしていると、どうやら僕の「まなざしのデザイン」を読んだようで、是非登壇してディス

永遠へのまなざし

 中世から近代へと移り変わりの中で提出された問い___。つまり「世界は善なるものか、それとも悪なるものか」という問いを進めると次に何が立ち現れるのか。世界が善なるものであれば問題なし。しかし悪なるものであれば、そこには「救い」が必要になる。  その救いとは、神の絶対的秩序が地上へ実現することであり、「永遠なるもの」を手に入れるということである。この世界が永遠の秩序を獲得したのであれば、それは悪からの救済を意味する。近世西欧の神秘思想ではそのように解釈したのではなかったのだろう

原因不明の地球磁場の活発化

Earth’s magnetic field is acting up and geologists don’t know why Erratic motion of north magnetic pole forces experts to update model that aids global navigation. Alexandra Witze Natureより 09 JANUARY 2019 「地球の磁場が壊れた動きを見せているが、地質学者たちにはその理由がわ

世界樹について

ユグドラシル ユグドラシル(古ノルド語: Yggdrasill, [ˈyɡːˌdrasilː][1])は、北欧神話に登場する1本の架空の木。 世界を体現する巨大な木であり、アースガルズ、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ヘルヘイムなどの九つの世界を内包する存在とされる。そのような本質を捉えて英語では "World tree"、日本語では、世界樹(せかいじゅ)[2]、宇宙樹(うちゅうじゅ)と呼ばれる。 ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」の「神々の黄昏 (楽劇)」の冒頭「ワルキュー

エクスターンシュタイネについて

エクスターンシュタイネ エクスターンシュタイネはドイツ北部にある、5つの巨大な岩の柱で出来た場所であり、おそらく有史以前から神聖な場所としてみなされてきた。 紛れもなく神秘的て魔術的な場所であるエクスターンシュタイネは、シャルルマーニュが西暦782年にサクソン人の異教を廃止するまでは、異教徒の信仰の中心であったと考えられている。そして、それは中世を通じて、キリスト教の隠者によって使われていた。 エクスターンシュタイネには天文学的な岩の整列やその他の魅力的な特徴があり、ネオペイ

ペイガニズムについて

ペイガニズム ペイガニズム(英: Paganism、仏: Paganisme:パガニスム、羅: Paganismus)とは、自然崇拝や多神教の信仰を広く包括して指し示す、印欧語圏における言葉であり、アブラハムの宗教(アブラハムの一神教)の視点から用いられている言葉である。侮蔑語や差別用語として使われることが多い。 一方、アメリカ合衆国では1960年代以降、ペイガンと自己規定する人々のさまざまな折衷主義的で個人主義的な無数の宗教運動が各地で発生しており、ペイガニズムという言葉を

場の力

聖地のフィールドワークしていると力を持った場に出会うことがある。 言葉では何とも言い難いが、明らかに他の場所とは空気感が異なるのだ。 そうした場の持つ力とは一体どういうものなのかを考え続けている。 聖地は顕著にそうした場の力が強い性質を帯びているが、聖地だけではないだろう。 人間の身体と精神に影響を及ぼす場の力というのがあるのではないかと思う。 ここで言う場の力とは物理的に目に見える形態だけを指すのではない。 目に見えないようなものも含めて、人間あるいはその他の生命に影響を

アイヌ文化の成立についてのメモ

北海道における文化の変遷を少し整理する。 まずは日本列島全体に広がった「縄文文化」は北海道にも同様に存在した。その後、本州では稲作を中心とした「弥生文化」が入ってきたが、北海道では稲作を必要としないほど自然資源に恵まれていたため、縄文文化の生産形態がそのままの形で継続された。これは「続縄文文化」と呼ばれている。  続縄文文化は道内各地で地方色豊かな独自の発展を遂げたが、7世紀頃になると本州の古墳文化の影響を受けた「擦文文化」が道南地方において発生し、徐々に全道へとその勢力を伸

イヤシロチとケカレチ

楢崎皐月は大地電流の研究から、土地には普通生育地帯、優勢生育地帯、劣勢生育地帯の3つがあることを発見した。 アトランダムに選んだ12145カ所で、上下の地層間に流れる電流方向と電流値、酸化・還元電圧値、各地点間の電位差を測定。 そしてある地表の電子密度が高いと、電流はそこから下方に流れるので、これを優勢生育地帯つまりイヤシロチとし、逆に地表の電子密度が低いと電流はそこから上方に流れるので、劣勢生育地帯つまりケカレチとした。 イヤシロチは植物がよく育ち、人も健康になる。 逆に

聖人のシンクロニシティ

ドイツの哲学者カール・ヤスパースは紀元前500年頃を中心に紀元前800年から紀元前300年までの500年ぐらいを枢軸時代と呼んで、この頃に人類の精神的な基礎が出来たという説を述べている。 ソクラテス、釈迦、孔子やイエスの思想の先駆をなした第二イザヤなどはこの時期に現れている。 農業の開始が今から西では12000年前、東では14000年前、都市文明の開始が概ね5000年前。 豊かになるのは余剰の富を生み出すので、芸術も生まれてくるが、一方で悪い奴も現れたり世も乱れる。そうした乱

蛇についてのメモ

折口信夫は「にじの語源はぬじで蛇の精である」と記している。 虹を蛇に結びつける概念は、ほとんど世界中に分布しているようである。 マレー半島のセノイ(senoi)族に属するセマイ族は虹を大蛇に結びつけ、この蛇は有毒な液体を発するので、虹の下を歩くと致命的な熱病におかされると信じている。 インドでは蛇は重要な信仰の対象となっている。 ナーガ (नाग, Nāga) は、インド神話に起源を持つ、蛇の精霊あるいは蛇神のことである。 上半身を人間の姿で表し、下半身を蛇として描く構

ベンガルの歴史メモ

バングラデシュは1971年に出来た新しい国だ。元々は全部がインド文明だったこの地は、1947年にイギリスの統治政策の中で、ヒンズー教徒が住むインドと、イスラム教徒がすむパキスタンとに国が分けられ、その中でもインド亜大陸の辺境に位置するベンガル湾は東パキスタンとして位置づけられた。 しかし、イスラム文化に近い位置にある西パキスタンの支配力が強く、ウルドゥー語を国語にしようとする運動の中で、ベンガル語を話す東パキスタンの抵抗が大きく、1971年に独立国としてバングラデシュ(ベンガ

サンティアゴ・デ・コンポステラに関するノート

 巡礼という行為は中世的である。キリスト教の巡礼地として有名なのは、エルサレム、ローマ、サンティアゴ・デ・コンポステラの三つである。  エルサレム巡礼はイスラム教の台頭によって、ヨーロッパのキリスト教とにとっては困難になる。11世紀から13世紀にかけての十字軍の活動で、エルサレム巡礼の道はある程度確保された。  ローマ巡礼に関して盛んになったのは、カロリング朝、オットー朝の時代である。エルサレム巡礼が危険になってからはヨーロッパのキリスト教徒にとってはこちらの方が容易に巡