こうかん 9月の今日子さん

そうだ
交換しよう
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 巽くんに新札の五千円を譲ってもらって
代わりの五千円を渡そうと思ったら
私の元にも新札が巡ってきた

手元に２枚の梅子さん
しかも両方AAから始まる番号で新札ピカピカの第一刷目、コレすごくない！
こんな幸運を独り占めしてはいけない。
ピカピカの梅子さんの１枚は巽くんが持っているのが相応しい。

でも、どっちを？

これが本のようにれっきとした所有物なら、
別ルートで手に入りましたので、
とお返しするのが当然の流れというもの。

でもお札って、誰のものってわけではないけど
このお札に関しては、今日子さんにあげます、と
私のモノになったお札なのであって
それを返すのはせっかくの好意を無にするよう。

ここはやっぱり交換がいい。

でも、お札だけを渡したら、そのまま返されたと思うよね。
それに、私も手に入りましたのでなんて付け加えたら、いらなかったかな、
なんてガッカリするかも知れないし。

ちょっと考えてさっき封筒を出してきた棚のところを探してみる。
うん、これがいい、
クラフト紙でできたメッセージカード。
サッパリしてて分量もちょうどいい。
メモして渡せば誤解もきっとない。

金曜日、帰りに買い物したら、
おつりで私のとこにも巡ってきました。
梅子さん  交換でお返しします。

うーん、あっさりしすぎてるかも。
よしっ、と梅子さんのイラストを描いてみる。
吹き出しもつけて
『ありがとうございます。』と、これでよし。

ついでに、
"似てませんねぇ"
と書いて、まる"よ"とサインを入れる५✍

横手 今日子
苗字のまる"よ"

分厚い封筒に入れたら恥ずかしくもない
イタズラを仕込んだようなワクワクを隠して
何気なくお返しする。

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「あっ、今日子さん」

次の日、巽くんがすれ違いざまにいう。
「いつもお手紙ありがとうございます。」

お手紙だなんて落書き付きのメモをオーバーな。
ありがとうはこっちだったし。ははは、われながら小学生みたいだと思い出して可笑しくなる。

「良かったらLINE交換しましょう」

ええーと、
交換ね、交換。
 シフト調整はショートメッセージのやり取りだけど、こういうやり取りはLINEがいいか。
巽くんは律儀だからへんに手書きのもの渡して気を使わせてしまったのかもしれないな。
「いいですよ」と答えたら
「じゃあ、あとで！」と急いでホールに向かっていった。

交代時間で他のバイトが少なくなったときに
「今ですよ」と交換する
まごまごしちゃう私に、
「ここのこのマークからQRコード読み取って
あとは"  あ  "でもいいから送って下さい。」
というので、慌てて  "  よ   "  と送る。

横手の      よ    

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交換、交換、
交換しただけ

交換して何日も経つのにトークルームには
"  よ   "  だけが浮いている。

交換ならフィフティ、フィフティのはずなのに
巽くんの水槽にポチャンと入ってしまったよう。
入った拍子にぷくっと泡ひとつ

泳ぎ方も忘れてしまって消えてしまいそう。

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トークルームを覗きにいって
なんだか可笑しくなってきた
こんな状況面白すぎる

"  ろ  "
"  し  "
"  く  "

立て続けにトークを送る

トークルームに、縦に
よ
ろ
し
く

よし、完成。ミッションコンプリート
私はこんな魚です
ああ、スッキリした。
やっぱり、水槽意識しちゃうけど気にしないでおこう。

そんな9月の今日子さん

なんのはなしですか