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『ぐったりしているのを見つけた』の中身

最近芸能人がよく死んでいる。
首を吊った人もいるけれど多くは『関係者が自宅を訪ねたところ、ぐったりしている〇氏を発見した』と報道されている。

さて、こと20年も死にたいと思っていると自殺の方法は自然と耳に入ってくる。そこで『ぐったりしていてそのまま死ぬ』条件を考えてみた。
この条件は案外難しい。

例えば薬を大量に服薬するとする。
精神科で処方される薬の量は上限が決まっていて、一度に服用しても死なないという基準が設けられている。
例えば僕は強めの睡眠薬や睡眠導入剤を処方されているが致死量には達しない。
薬でもう1つ難しいのが『胃洗浄』だ。
薬を大量に呑んだ状態で発見されるとする。もちろん薬の袋を処分するような余裕は本人にはないから一目で分かるだろう。そうすると救急車で運ばれて胃洗浄が行われる。
大量の錠剤は一気に消化吸収されないので口からチューブを突っ込んで直接胃に大量の水を流し込み、強制的に吐かせて丸洗いするという処置だ。拷問に近いものらしく、僕の友人はこれに懲りて服薬自殺は選ばないと言っていた。
また第三者に発見されない場合でも無意識に嘔吐してしまうことが多いので成功率は低い。

薬でない場合に考えられるのは太い血管を切ることによる大量出血。
しかしこれも成功率はとても低い。
ドラマなんかでよく目にする『浴室で手首を切って死ぬ』ということはまず不可能と言っていい。
たかだか手首の出血くらいで死ぬにはかなりの計画が必要だ。
まず浴槽にお湯を張るとする。このお湯はぬるま湯でなければならない。湯舟に対して出血量が飽和してしまうと止血されてしまうので絶えずお湯を入れ替える必要がある。また手首は心臓よりも低い位置に固定し、体が浸かるのは心臓より下までに制限する。
この段取りをすればぐったりしている状態から死ぬ確率は上がるけれど突発的にする行動とは考えにくい。
頸動脈といった大きな血管をざっくり切ればあっという間に死んでしまうのでぐったりもへったくれもない。

次に考えられるのは咳止めシロップ。
薬局で咳止めシロップを複数購入してみると分かるけれど店員に止められる。
これは子供用の甘いシロップでも大量に呑むと命に危険が及ぶからだ。
計画的に購入したり多くの地域を回るなど工夫をしなければ入手は難しい。
ただ沢山飲むと精神薬を呑んだような効果が得られるので少しずつ量が増えていってある日うっかり死ぬということは実際にある。
神経に作用する薬だから不安や緊張、手の震えなんかは和らぐのかもしれない。ちなみに僕は子供の頃からシロップが嫌いなので飲んだことはない。

さて、最後に芸能人ならではの手段を書こうと思う。
ただこれは可能性でしかないし本人が潔白だった場合死人に泥を塗る行為になってしまうのであくまで『可能性』というだけだと前置きをする。
芸能人にまとわりつく噂と言えばクスリだ。いわゆる違法なオクスリ。
種類によって効果は様々で、上がったり落ちたりトンだりできる。
そして過剰摂取しなくとも過度の負担がかかるので死ぬ可能性がある。常用していれば尚更。
最初に書いた胃洗浄も意味をなさない。違法のクスリはそもそも錠剤を呑むタイプではないことの方が多いし中和させる薬もない。複数のクスリでトぶようなドラッグカクテルなんかした日には、そもそもどれがどう効いているのかさえ分からない。
液体に溶かして皮下注射するか、粉にして粘膜で吸うか。熱でいぶして煙から摂取する方法もある。
多くの売人はリピーターを望むため初見で致死量を売ったりはしないけれど、破格の値段で天国へ連れて行く専門家がいないとは言えない。
死にたいという人間が急増している今は特に。
そうすると、ぐったりしてそのまま永眠というケースに近いと言えば近い。ただこれはもちろん買った側、使った側も犯罪者になるので故人に対しての憶測に使うにはあまりに不躾だ。

ただ自殺をするだけならいくらでも方法はあるし家でも簡単にできる。
にも関わらずこの表現をよく目にするのは自殺志願者からすると奇妙だ。不自然すぎる。
こんな風に勘繰ってしまうくらいに。

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