【前編】変わらない気持ちで、新しいステージへ。『日向公園 / 初恋』リリース記念メンバー鼎談
曲が生まれる時の良いパターン
ながいせんせ まずは、『日向公園』。……『日向公園』っていうか、今回のこのシングルひと塊の話でいくと、アルバム以降のこの1年弱の曲作りっていうのは「次はじゃあまずシングルを」みたいな感じのゴールで作っていった?
じゅんじゅわ いや、そんなに明確にゴールが見えてたわけじゃないんだけども、長期的に見たらアルバムは作りたいなっていうのはあって。でもアルバムを作るっていうのは結構時間がかかるから、そのポイントポイントみたいな感じでシングルを出していきたいなっていう流れで考えて。だから意外とそのアルバム、こんな曲、こんな曲……みたいなのもちょっとずつ考えながら作ってる感じはありましたね。
ながいせんせ 結果、今回のこの2曲だったけども、他にもなんとなく。
じゅんじゅわ そう。他にもなんとなく、形にはなってないけども頭の中にある曲は数曲あったけど、やっぱこの『日向公園』ができたのが結構でかかった。これができて、「なるほど、この感じでいきますか」っていうのが、なんかちょっと見えてきたというか。だから一番最初に『日向公園』ができたんだけど、それがきっかけというか。
ながいせんせ それとペア組ませるんだったら……みたいな感じで、『初恋』?
じゅんじゅわ そう。てかこの『初恋』と『日向公園』ができた流れで言うと、「次のアルバムどうしよう」みたいな話を、まああの、いつもの3人で話してたんですよ。晃平くん(GREENBACK)と甲斐大河と。
ながいせんせ 3人っていったら普通こっち(バンド)じゃ(笑)。
じゅんじゅわ (笑)いや、でもその一旦、なんつうんでしょう。生み出しの時間というか(笑)ガチの感じじゃなくて「いやどうしようかねえ」みたいな、世間話みたいな流れで話してて。で、いつもそういう流れで「タイトルから決めよう選手権」みたいなのが始まるんだけど、それで一番最初に出たのが『日向公園』だったんだよね。まずそのワードが出て、「なるほどねー」っつって家に帰って……実際に俺の近所にある公園なんだけど、そこに行ってみて、久しぶりに。で、なんとなく思ったことを書いてみたっていうところから始まった。
ながいせんせ じゅんじゅわんちの近くに日向公園があるってことは知ってたの? そのテーマを出した人は。
じゅんじゅわ いや、なんかね、片っ端からワードを探してって、「試しに地図開いてみますか」みたいな感じで(笑)始まって。Googleマップを開いて、自分の家とか近所とか見てみたら、ここに日和田小学校があって、日向公園があって……「日向公園? ……よくね?」みたいな(笑)。で、実際に行ってみたら、意外となんか結構湧いてくるもんがあって。
あのー、なんつうんだろうね。曲が生まれる時の良いパターンというか。結構勝手にどんどん湧いてくるパターン、あんまり悩まないパターンで案が出てきたから「これはいけるやつやな」っていう感じで、書き始めたっていう感じ。
「もうここの人間ではない」っていうところが一番、肝の感情
ながいせんせ ふっしーは歌詞を読んでどんな感想を抱いた?
ふっしー 「滑り台を登るのが、簡単なのに今はできない」っていう。
じゅんじゅわ 恥ずかしいっていうね。
ふっしー うん。すごく共感できる。あと、Cメロの部分。あの歌詞はめっちゃ好きだなって思って。
じゅんじゅわ ああ、「まっすぐに……」のとこ。あそこは、いいですよねえ。でも結構伝えたいところ、そこに詰まってるというか。
元々はちっちゃい頃に遊びに行ってたところで、でも実際この歳になって行ってみたら……なんていうんでしょう。もちろん懐かしいとかいう感情もあるんだけど、ちゃんとその深層心理を考えたときに、一番最初に出てきたのはもう「恥ずっ」だった。「なんで俺こんなところに……」みたいな。自分の、ここにいる異物感というか。それになんかちょっと耐えられなくなる感情があって。
ふっしー ちっちゃい頃は当たり前だったのに。
じゅんじゅわ そうそうそう。でも、まあ例えばちっちゃい子がわーって遊んでるところに、おじさんが一人で「おお懐かしいな」みたいなのやってたら(笑)「ヤバ」みたいな感じになるし。
ふっしー まだおじさんじゃないでしょ(笑)。
じゅんじゅわ (笑)でもまあまあ、その異物感というか、「自分はここの人じゃないな、もう」っていう感情を、その曲に落とし込めたという。だからそこだよね、「まっすぐに生きていたいよ/でももう斜めを知っている」っていうのは。「もう僕はもうひねくれてしまってるから、こんな純粋無垢な子供たちのようには遊べないですけども……」って感じで。そういう……気持ちというかね、これが結構『日向公園』で伝えたいメッセージ的なところ、ありますね。
ながいせんせ 俺、この歌「めっちゃバンドマンの歌だな」と思ったの。
じゅんじゅわ あー、なるほど。
ながいせんせ 「未だにバンドやってますけども……」。
じゅんじゅわ ああ〜、でもそれももちろんある。てか、結局みんなそれぞれ自分の生きてきたフィールドで、割と例えられるというか。それを「公園」っていうところで表現してるだけで。どこ行っても……ね、むかし通ってたスイミングスクールとか、行ってみたら「なんだこのおじさん」みたいな(笑)そういう「もうここの人間ではない」っていうところが一番、肝の感情というか。
ながいせんせ これもまたその、「大人になる・ならない」みたいな話ではあるけど。意外と年上のリスナーさんからの人気もあるじゃんか。
じゅんじゅわ そうだねえ。結構だから……この「大人になる・ならない」シリーズみたいな(笑)多分『コーヒーに慣れて』とか『レモンサワー』とかもそうだし、なんかそのシリーズがあって。でも結構、年を取るたびにやっぱ変わっていく感情というか。年取るたびに、大人になるということに対しての感情は、やっぱ変わっていくから。そういうタイプの曲をどうしても作っちゃうというか。
ながいせんせ どの年齢層にも愛されてるのは、嬉しいね。
じゅんじゅわ ありがたいですね。
みんなが好きなわけじゃないっていうのも受け入れながら
ながいせんせ サウンド面ではどうでしょう。
じゅんじゅわ サウンド面はまあ……でもこれは結構ふっしーとかとも話したりしたけど、前のアルバム『zanpan』が僕の中では今の我々のストライクというか、真ん中みたいなイメージで作ったアルバムだから。逆に、曲を作ってる段階で、その真ん中、軸から外れそうになったら戻したりみたいな、そういうイメージで作ってた。範囲を決めて、そっからはズレないようにみたいな……一本筋通ったアルバムにしたいっていう気持ちがあって。っていうところでセルフタイトルのアルバムを作りたくて。多分、(ミュージシャンなら)みんなそうなるんだろうなって思うけど、一個その軸を作ったら、そっから外れたくなるみたいな。で、今、外れるフェーズに来てて。
ふっしー そうだね。
じゅんじゅわ で、今回は、その一本筋は(すでに『zanpan』という)作品として残ってるし自分たちの中にもあるから、一旦そっからちょっとずれてみようっていうところで、サウンド的なところでいうと、みんなが好きなわけじゃないっていうのも受け入れながらというか。
結構エゴのところを出しつつ、あんまり聴き手のことを考えたりとか、「ここはこうした方が曲って聴きやすいよね」っていうところを逆に崩して。そういうひねくれをもうちょい足した感じにしていきたいなっていう気持ちで、『日向公園』とか『初恋』とかは取り掛かった感じ。
ふっしー そう、今回の2曲、正直今までとほんと違うなって思った。でも逆に、すげーいいなっても思う。
じゅんじゅわ だから『日向公園』は、作ってる途中で本当はもっとパンチの効いたサビ入れようかなっていうのもあったんだけど、「でもこれ、アガったらなんか違うな」。
ふっしー あー、うんうん。
じゅんじゅわ それで、無理矢理わかりやすいサビを作るよりも、ずっと同じぐらいの感情と、バンドの感じもあんまり最初の方は特にアップダウンせずにいく、っていうのを結構意識した。だから聴く人にとってはちょっと平坦に聞こえてしまうかもしれないんだけども、それもなんか、味なのかなっていうところを考えた。『初恋』も結構……『初恋』はどちらかというとキャッチーめではあるんだけど、こだわった部分としては、しっかりとしたサビが一回しか来ない。
ふっしー あー、なるほど。
ながいせんせ 思った。
じゅんじゅわ それを自分の中では、結構チャレンジじゃないけど(掲げた)。最初Aメロ、Bメロ、サビで、大体だったらCメロか、もう一回Bメロかが来て、もっと盛り上がるサビが来ると思うんだけど。今回はあえて落ちて……意外と落ちたまま終わっちゃうみたいな(笑)落ちてもう一回分かりやすいゾーン来るかと思いきや、そのままわーって終わる。でも、作ってる最中に思ったのが、「ここでもう一回サビ来んのはなんか、その曲が持ってるパワーを無駄遣いしそうだな」って。
ながいせんせ うん。今にして思えば、くどくなったりしたかも。
じゅんじゅわ そうそうそうそう。くどいというか、それももちろん正解ではあるんだろうけど、曲が持ってるパワーを無駄遣いせずに爆発させたかったというか。結構そこは引きの考えというか、それで作った感じはありますね。