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紫陽花の魅力

日本の夏は、年々暑さを増しているようだ。
春から夏に移るとき、徐々に、というより、突然、季節が変わるように感じられる。

それでも、夏に栄える植物は、毎年何食わぬ様子で姿を見せてくれる。
どんなに暑い夏が来ても、待ってました!と言わんばかりに芽を出し、花を咲かせる。
バテそうな心と体も、そんな健気な植物の様子に励まされる。


夏の始まりの花と言えば、紫陽花
花が少なくなる梅雨の時期を代表する花である。

紫陽花は日本原産の花木で、太平洋側の海岸沿いに自生している「ガクアジサイ」が原種。
他の紫陽花と区別するために「ホンアジサイ」とも呼ばれている。
そのガクアジサイが江戸時代末期にヨーロッパに渡り、鉢花用に改良された。
これら「西洋アジサイ」が日本へ逆輸入されて、多くの園芸品種が誕生した。

他にも紫陽花には北米原産の「アナベル」や「カシワバアジサイ」があり、これらも西洋アジサイと並びとても人気がある。

ヤマアジサイ
太平洋側の山や沢沿いに自生している

5月の母の日辺りから、沢山の種類が出回り始める紫陽花の鉢花。
色も豊富で、花の咲き方もいろいろ。
花房が手毬のように咲く「手毬型」、
額縁のように周りに咲く「ガクアジサイ型」、
円錐状に花を付ける「カシワバアジサイ」や「ミナヅキ」、
花の色が徐々にアンティークカラーに変わる「秋色アジサイ」など、数多くの紫陽花を見ることができる。

カシワバアジサイ

紫陽花は、色が変化することでも知られる花。
鉢花を庭に植え替えたら花の色が変わった、ということはよくある。

もともと紫陽花の花には、
赤色色素「アントシアニン」が含まれており、
根から吸収した「アルミニウム」と結合すると、花が青色に変化する。

アルミニウムは酸性の土に多く含まれていて、
土の酸性度(pH:ペーハー)の濃度や根の吸収量によって色の出方に違いが出る。
なので、酸性の土は青色に、アルカリ性の土は赤色になりやすい、という。
(もちろん品種によって様々なので、実際に育ててみて、色の出方を楽しむのも一つかと。)

また、秋色アジサイは、咲き始めは鮮やかなピンクやブルーでも、咲き進むにつれてくすんだアンティークカラーに変化する。
これは、活発に作られていた花の色素が、時間と共に分解され、消えていく、いわゆる老化現象によるもの。
最後まで美しくあろうとする紫陽花の魅力の一つでもある。

実は、別名『七変化』とも名付けられている紫陽花。
花色が様々に変化する様子から、そのような名がつけられたとされている。
紫陽花が好きになると、どんどん庭先に迎えたくなるのは、変わりゆく花の姿を見てみたい、という好奇心を掻き立てられるから。
なるほど、七変化、その名前の所以に納得させられる。

さて、「あじさい」は「紫陽花」と書く。
まず、この花が「あじさい」と呼ばれた由来は諸説あるが、
「集まった藍色の小さい花」という意味の「集真藍(あずさい)」の発音がなまったもの、と言われている。
確かにあじさいは小さな花が集まって咲いている。
尚、花弁のように見えるところは、実はガク。
花は更に小さく、とても控えめに咲いている。

では、漢字の由来は?
これはもともと中国語の表記からくる日本語の当て字である。
唐の詩人・白居易が、日本のある寺に咲いていた紫色の花(おそらくライラック)に「紫陽花」と名付けたのだが、後に白居易の詩・紫陽花詩を「あじさい」と誤って日本語訳したことにより、漢字と読みがセットになり広まった、と言われている。

ピンクの秋色アジサイの咲き始めの頃

切り花にしても楽しめる紫陽花。
ただ、切り花の紫陽花はとても水が下がりやすい。
なので、軸の先は茎の断面が広くなるよう鋭利に切り、
中の白い綿のようなものをハサミやナイフの先でかき出してあげると、水上りが良くなる。

また、7月半ばを過ぎてからの秋色アジサイや、白から緑へ色を変えたアナベルは、水に入れて飾りながらドライフラワーになっていく。
真夏は生花が長くもたない分、紫陽花のドライフラワーを飾るのもおすすめ。

もちろん、逆さに吊るしてもそのままの状態で綺麗なドライフラワーになる。
ユーカリやスターチスなど、他のドライフラワーに適した花と合わせてスワッグにしたり、リースなどの花飾りを作って楽しむこともできる。

アナベルのリース

夏の始まりから終わりまで、様々な姿で楽しませてくれる紫陽花。
一度庭に根付くと、毎年少しずつ育ち、大抵変わらず花を咲かせてくれる。
そして、夏の水枯れと西日などによる強烈な日差しに気を付ければ、とても育てやすい植物。
何か植物を育ててみたいと思うなら、紫陽花がいい。

そして、夏を爽やかに彩る紫陽花の魅力を、間近で感じてもらえたらと思う。

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