豆腐・豆乳料理フルコースがこの価格で!?~宇豆基野本店~

誰にも教えたくない名店、まさにこの言葉がぴったりのお店に出会ったしまった。東京都足立区北千住の駅から徒歩3分の場所にある歴史と重厚感漂う建物、ここが宇豆基野本店だ。民家、もしくは骨董品店のようにも見える佇まいから、飲食店と気づかず通り過ぎてしまう地元民も多い。

国産大豆を使用した湯葉、豆腐、お惣菜を販売し、朝9:00~、昼12:00~の2部制でブランチも展開する。営業日は土日祝日のみ、ブランチは3ヶ月前の月初め(例えば、2020年2月分の予約は2019年11月に開始)に平日電話予約のみで受け付ける点は注意が必要だ。私が2020年1月分を予約しようと10月4日に電話をしたところすでに満席、キャンセル待ちであり、知る人ぞ知る人気店である。

3ヶ月以上先かと諦めかけていた矢先、急きょキャンセルが出たことがわかり当日思わぬ形で訪問することができた。ブンランチメニューは月替わり。湯葉や豆腐が主役でありつつも季節を感じられる食材がふんだんに使われており、まさに感動と驚きの連続であった。10月の献立を紹介する。

➀ブドウと豆乳ジュース:食前酒ならぬ食前豆乳とのことで、当日朝作り立ての豆乳を使ったブドウジュースをいただく。ブドウのほのかな酸味やミネラル感と豆乳の甘味が想像以上に合い、すぐに飲み干してしまうほどだ。

ぶどうジュース

②湯葉3種食べくらべ(くみあげゆば、さしみゆば、平ゆば):お湯から湯葉を引き上げるタイミングを変えることで、食感も風味も全く異なるから不思議。ソースはたまり醤油オリーブオイル、醤油あん、岩塩レモンと3種あり、お気に入りの組み合わせを見つけ出すのも楽しみだ。

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③鯛酒蒸し(蕪、ゆず、紅葉人参、銀杏九十):漆器のお椀を開けた瞬間息をのむほどの美しさが目の前に広がった。鯛の酒蒸の上に彩豊かな人参、さつまいも、ゆずがお上品に腰掛ける。澄し汁は魚の出汁が効いてじわりと胃に染み、全身の細胞にうまみが伝わっていくような、静かなけれども確かな感動を味わえる逸品だ。

たい

④寄席豆腐:大きな木樽を抱えた職人が目の前で豆乳ににがりを混ぜて豆腐を作ってくれる。出来立ての豆腐はヘルシーなホイップクリームのように軽く、口の中で一瞬で溶けてしまうから不思議だ。まずはそのまま、そのあと醤油あんをたっぷりとつけていただく。

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⑤湯葉つくり体験:宇豆基野名物の一つが湯葉つくり体験だ。店内に構える巨大鍋を取り囲むようにスタンバイし、お客さん自ら湯葉を掬い取る。モンゴル産岩塩をお好みで振りかけていただく湯葉の大豆の香り、のどごし、温かさは思わずため息が出る程だ。お代わり何度でも自由というもうれしいポイント。

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⑥栗と鰤のサラダ:華やか!美しい!秋真っ盛り!すべてが一皿に凝縮さ感動しかない。葉物野菜のシャキシャキ感を味わい、栗のまろやかさと紫芋のほくほくさに秋をかみしめ、しつこくなく甘味さえ感じられる脂ののった鰤に私の大好きなお手製パプリカドレッシングをかけていただく。見た目も味もボリュームも満足としか言いようがない。

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⑦生麩田楽:正直なところ、これまで食べた生麩のうち最もおいしく、田楽味噌はごはんや豆腐にかけていくらでも食べられるほどの美味さであった。やや行儀が悪いが、最後お皿からなくなるまで味噌を箸ですくって食べてしまったほど。

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⑧鰹ごはん:この日偶然鰹が手に入ったのでとの理由で、お品書きのきのこごはんから急きょ変更くださったよう。土鍋で炊いたごはんに鰹を載せ、みょうが、白髪ねぎがダンスしているかのようにごはんの上にふわりと広がる。鰹と薬味のマリアージュが間違いなくおいしいのはもちろんのこと、土鍋で炊いたゆめぴりかの1粒1粒が十分に水分を含み、立ち上がっているかのうようで美しく、そしておいしい。

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⑨わらび餅・麩饅頭・コーヒー:その場で手作りのわらび餅、柔らかく弾力があり楊枝できることができないくらいの麩饅頭を、コクのあるコーヒーとともにいただく。

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これだけ十分に頂いて一人3,000円という安さには驚きだ(2020年からは3,300円とのこと)。またお料理、安さだけではなく、お店の職人さんや店員さんの「大好きな湯葉や豆腐料理を存分に味わってほしい」「お客様に喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい」という心遣いが所作に現われていることも一層の感動を引き立てる。

土日祝日しか開店していないこと、ブランチの予約は3ヶ月前の月はじめから、しかも日中平日(10:00~16:00)電話予約のみですぐに埋まってしまう点には注意が必要だ。しかし平日朝から電話をかけて北千住に訪問してまでも味わうべきお料理とお店の方の心意気がここには確かにある。




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