それぞれの雨が降る

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記事

「それぞれの雨が降る」⑤何にもない私

パフェなんか、食べにいかなきゃよかった。

 校舎からの坂を下りた喫茶店でパフェを食べるのは、いつもテスト明けのご褒美。雨宿りしよう、っていう言葉にのって、食べた。

 土砂降りでも、窓の外を通り過ぎていくのが、陽一だとわかった。腕の振り方、歩幅、鞄の持ち方、陽一の仕草は彩香の脳内に事細かにインプットされている。

  彼氏の話をしている友達の話を私は笑ってきいてパフェを食べる。

  ねぇ、今、

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月が見守っていますo(・x・)/
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「それぞれの雨が降る」④湯気の中の姉妹

「まどかー?」

  妹がお風呂に入る気配が無いので廊下に出ると、制服のブラウスに、下はスウェットという出で立ちで濡れた足跡を一生懸命拭いていた。

  「ほっとけばかわくよぅ」

  まどかと私は、ほんとに真逆だ。性格も容姿も。

  「真面目だねぇ。私が拭いとくから、先にお風呂入っちゃいなよ!」

  「お姉ちゃんがテキトーすぎるんだよ。だって、お母さん帰ってきたら滑るかもしんないでしょ。床材

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たらったらったらった🎶
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「それぞれの雨が降る」③感情は塗りこめる

太田まどかは上機嫌だった。昨日ダメだと思った油絵を潰しにかかったら、まるで魔法にかけられたようにモティーフに生命力が宿った。

  美術教師の新庄に「太田の絵は仕事が足りない。描けたと思ったら一回潰せ。そこから描きどころを掘り返すともう一段、説得力のある画面になる。」と昨年から言われつづけたことを、今やっと体感した。

  これはもしかすると17歳のまどかにとって傑作になるかもしれない。丁寧に筆の

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素敵な景色がみえますか?
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「それぞれの雨が降る」 ①記憶の雨

雨の中、制服の高校生を見かけると、今でもふいに君の横顔を思い出してしまう。

クラスの中で、君はちょっと目立つ存在だった。ひどくおとなしく、ワイワイ騒ぐ女子のグループからいつも外れて、本を広げていた。話しかけても、あまり返事もしない曖昧な笑顔の君は、五月には既にクラスの中で浮いていた。
君が読書家ではないことを、僕は知っていた。視線はいつも外。そうやって眺める姿を、無言で眺める男子は、僕以外に

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たらったらったらった🎶
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「それぞれの雨が降る」②花を買った日

好きだ、と言って欲しかった。

  でも、言わないでいてくれて、やっぱり、ほっとした。彼の優しさに一瞬すがってしまいそうだった。私には手にしてはいけないものだ。いけないものだけど、あの手をさしだされたら、きっと握ってしまう。

  遥子は雨が止んだことに気づかないふりをして病院まで歩いた。ビニール傘の中にいると、世界から遮断されたようで安心する。誰も私をみつけないでほしい。

  よくもあんなふう

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モフモフ♡
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