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ニンジャスレイヤー二次創作:【アラスカ、銀の浜辺:ゾーイ】新たなヴィジョン

この記事は本家スレイトよろしく、更新分のみを表示するためのものです。
過去分は上記の本体記事にまとめてありますので、そちらをご覧ください。


** スレイトに新たなヴィジョンが映し出された **


【アラスカ、銀の浜辺:ゾーイ】

 ……時刻は既にウシミツ・アワー。フートンの中で眠っているはずのゾーイは今、その意識をはっきりと覚醒させていた。極めて特異な環境下に置かれているとは言え、健全な生活を送っている少女が、何故?

「ウウーッ……!」理由は極めて明解……隣で眠る男が断続的な唸り声を上げているがためだ。グレイハーミット。またの名を……シルバーキー。ゾーイの保護者であり、銀の浜辺の主。(なにか、嫌な夢でも見てるのかな……)夜の帳が下りた寝室で、ゾーイは親代わりである彼の心を案じた。彼がこうも魘されるのは、滅多にないことだ。

 悪夢は、ゾーイにとってはそう珍しいことでもない。荒唐無稽なオバケが出てくるようなもの。取るに足らない内容のはずなのに、恐怖だけが喚起されるもの。そして、過去の記憶……様々なケースがあるが、確実に言えるのは、起床時の気分がもれなく最悪だということだ。それでも、シルバーキーと朝の挨拶を交わし、朝食を食べれば、いつの間にかそんなものはどうでもよくなっている。

(シルバーキー=サンも、昔何かあったのかな)彼は過去を語らない。しかしある意味では自分以上に特殊な境遇に置かれている彼が、尋常ではない体験をしてきたのだろうということぐらいは、幼いゾーイにも容易に想像がついた。それが本人にとって辛いものだったのかはわからないが……もしそうであるなら、少しでも助けになりたいと思う。いつも自分がそうしてもらっているように。ゾーイはそっと腕を伸ばし、フートンの外へとはみ出した彼の手を握った。

(……でっかい手)ゾーイとて、これで悪夢が収まるなどとは考えていない。ただ、彼は常日頃からこういった迷信めいた気休めが好きだったし、ゾーイもまた、そういったものを得意げに語る彼の笑顔が嫌いではないのだ。それで十分だった。

「ウーン……サン……」(……ん?)「フミコ……サン……」「……え、誰?」寝言から飛び出した知らない名前に、思わず声が出る。「ゴメン……フミコ=サン……いや……チガウ……誤解……アイエエエ……!」……ゾーイはそっと握っていた手を離した。「ハァーッ……」溜息が漏れる。(そっかぁ……まぁ……そういうこともあるよね……オトナだし)肩の力が抜け、徒労感に襲われる。だが、同時にどこかホッとしたような安堵感もあった。こんな悪夢なら、いくらでも見ればいいだろう。

(フミコ=サンって誰……とは、聞かないでおいてあげるか)ゾーイはそれだけ決めると、横でなおも魘されているシルバーキーを尻目に、健やかな眠りについた。


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