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TXTの歴代アルバムロゴをたどる

 韓国のボーイズグループ、TOMORROW X TOGETHER(以下TXT)のカムバックは毎回新しいロゴの登場からスタートします。タイトルと同時にお披露目されるTXTをかたどったロゴは、アルバムごとのコンセプトの特徴が凝縮されたTXTの作品を語る上で非常に大切な存在です。

 そこで今回はTXTの歴代アルバムロゴと、さらにそこから派生してアルバムごとのアートワーク変遷をたどっていきます。



The Dream Chapter

 彼らにとって初めての物語であるThe Dream Chapter(夢の章)。アルバムロゴをはじめとしてティーザーなどの映像、アルバムのアートワーク、使用する関連グッズなど、コンセプトを表現するための全ての要素(TXTの作品ではブランド・アイデンティティという名称でクレジットされています)はHuskyFoxによって制作されています。

 HuskyFoxは韓国に拠点を置くブランディングを専門とする会社で、TXT以外にもBTSの『LOVE YOURSELF』シリーズ(うち『轉 “Tear”』はグラミー賞「ベスト・レコーディング・パッケージ部門」にノミネートされました)やLE SSERAFIMのロゴなども手がけています。

 The Dream Chapterの3作品はなんと2021年のiFデザイン賞を受賞するなど、音楽性だけでなくデザイン性でも高い評価を得ました。(詳しくはこちら

 それではもう少し詳しくそれぞれの作品を見ていきましょう。

STAR

 ホワイトイエローの2つのL字が重なりあっただけの一見シンプルなロゴですが、TXTの名前の由来「それぞれ違う君と僕がひとつの夢で集まって共に明日を作って行く」が表現されたデビュー作にぴったりのロゴです。アルバムのパッケージでもスリーブと箱本体にそれぞれL字がプリントされていて、スリーブをはめることによってロゴが完成するようになっています。


MAGIC

 少年たちが冒険の中で経験していく様々な感情がこの弾けたロゴで表現されています。アルバムのアートワークはかつてfromis_9の『My Little Society』やSEVENTEEN『An Ode』にも携わったstudio gomin.が手がけています。


ETERNITY

 タイトルの通り「永遠」を意味する円形を使用したロゴです。前作での明るく弾けたようなロゴから一転して、現実の世界を徐々に知り始めた少年たちの心情がこの落ち着いたロゴに反映されています。このアルバムのアートワークはかつてBTS『O!RUL82?』や『花様年華』シリーズ、LOOΠΔ(今月の少女)のデビュープロジェクトを手がけたStudio XXXが関わっています。このアルバムの斬新なポイントはなんといっても誰もが幼い頃に一度は使用したことがあるであろう交換ノート日記帳を思い出させる「鍵付き」なところではないでしょうか。

筆者撮影


minisode1 : Blue Hour

 ゲームの世界から飛び出してきたかのようなこちらのロゴはSparks Editionによるものです。彼らは他にもBTS『MAP OF THE SOUL : 7』やGOT7・ユギョム『POINT OF VIEW:U』のアートワークを手がけています。パンデミックによって落ち込んだ私たちの心にそっと寄り添ってくれたこのアルバムにぴったりの爽やかなロゴです。歌詞カードのフォントなど細部にまでこだわりが感じられます。(↓のInstagramをご参照ください)


The Chaos Chapter

 2021年3月に社名がHYBEへと変更になったことがおそらく関係しているのだと思いますが、The Chaos Chapter(混沌の章)からはブランド・エクスペリエンス・デザイン(注)を担当するHYBE内のデザイナーたちが多くクレジットされるようになりました。そのうちの1人、LONETONEはTXTの作品以外にもBTS『BE』やENHYPEN『BORDER:CARNIVAL』のブランド・エクスペリエンス・デザインを手がけています。

(注)ブランド・エクスペリエンス(ブランド体験)とは、顧客への商品やサービスの単なる提供だけでなく、ブランドに価値を見出せるような体験の提供を通じてブランドへのファンを増やしていくという考え方。その考え方を実現していくためのデザインのことをブランド・エクスペリエンス・デザインと呼びます。

 それではそれぞれの作品を見ていきましょう。


FREEZE

 タイトルのようにどこかひんやりとした印象を受けるロゴです。このアルバムのアートワークやグラフィックデザインはORDINARY PEOPLEが務めています。彼らは他にもNCT『NCT 2018 EMPATHY』やENHYPEN 『DIMENSION: DILEMMA』のアートワークを手がけています。ロゴ以外で特に注目していただきたいのは、一貫して使用されている割れ目が入ったような独特なフォントで、少年たちが抱える絶望感・不安感が表現されています。


FIGHT OR ESCAPE

 前作FREEZEと同じように中心にハートが配置され、Y2K風のロゴになっています。このアルバムはエディトリアル・アートワークを担当しているLIFT-OFFが手がけたフォントが良い味を出していて個人的にもお気に入りの作品です。2つのヴァージョンで使われている紙の材質が異なっているのも好きなポイントです。

LIFT-OFFによる他の作品(一例)


minisode2 : Thursday's Child

 「別れ」がテーマとなった今作のロゴではThe Chaos Chapterの2作品で中心に宿っていたハートが割れてしまいました。「別れ」を経験した少年の「怒り」や「悲しみ」といった感情がありのままロゴにも反映されています。アルバムにはなんと、このロゴを立体的に作れるペーパートイが入っていますので、ぜひゲットして工作してみてください!


The Name Chapter

TEMPTATION

 「誘惑」に揺れ動く少年の心情がくねくねとしたロゴで表現されています。アルバムのアートワークの中にもマーブリングや、デカルコマニーで描かれたようなイラスト、アール・ヌーヴォーのポスターを彷彿とさせるような書体が用いられており、TXTのこれまでのディスコグラフィーの中でもとりわけ芸術性の高いアルバムに仕上がっています。

「Sugar Rush Ride」トラックポスター(公式HPより)
「Devil by the Window」トラックポスター(公式HPより)


FREEFALL

 前回の迷いが感じられるようなくねくねとしたロゴから一転して、今回は現実世界で感じる痛みや困難へ立ち向かってゆく確固たる意志、そして力強さを感じられるようなロゴです。ロゴモーションでは、前作の最後の曲「Farewell, Neverland」でネバーランドに別れを告げた少年たちが、現実世界へと「落下」していく様子が分かりやすく表現されています。

 今回のアルバムで特にこだわりが感じられたのは、背面に印字された謎のアルファベットです。実はこちら前作から印字されていて、前回の3形態ではmemor(ラテン語で「覚えている」の意味)になりましたが、今回の3形態も併せて並べるとmemores nomi(ラテン語で「名前を覚えている」の意味)になります。まさに「名前の章」を象徴し、コンセプトティザーの最後の一文である「SOMETiMES MAGiCAL MOMENTS CAN BE FOUND iN THE MOST UNMAGiCAL PLACES(時には最も魔法的じゃない場所に魔法のような瞬間が訪れることもある)」にも通ずるような、ささやかな仕掛けが施されています。

筆者撮影


 いかがでしたでしょうか。今回を通して改めて感じたのはK-POPはアーティストを軸として、ロゴ、アルバムのデザイン、MV、衣装、そして楽曲など全てに一貫したメッセージ性があり、それがK-POPが世界を魅了する重要な要素の一つだということです。TXTにおいても、今回取り上げたロゴやアートワークを始めとした、彼らの生み出すもの全てにおける「高い芸術性」そして「作り込まれた独自の世界観」によってファンになった人も多いのではないでしょうか。(もちろん私もその1人です!)

 TXTがまた新たなロゴと共にカムバックした際には追記して参りますのでまた遊びにきてください!最後まで読んでくださりありがとうございました!

サムネイル:TXT公式サイトより


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