仮面ライダーアマゾンズS1 全部の理由はここから始まる

先日は仮面ライダーアマゾンズの紹介をしたので、今度はアマゾンズSeason1の内容にどっぷりと踏み込みたいと思います。語られるべき魅力は無限にありますが、私なりの仮面ライダーアマゾンズS1の解釈について書いていきたいと思います。

Seazon1は“水槽”から出た悠が、自分を理解し、どのような立場で、なぜ戦うのかを見つけていく物語だと思う。その戦う理由の原点は「生きるために食べる」というキーワードだ。野座間の会長の「もの食わぬ生命体など最弱にして下劣!」や、仁さんの「そして生きるっていうのは、他の誰かの命を食らうってことだ!」というセリフが象徴するように、アマゾンも人間も食べるという行為からは逃れられず、誰かの命を食うことはやめられない。現に駆除班は食うために稼ぎ、稼ぐために殺している。だから、もともと仲間であった滝沢くんやシグマを殺さなければならないのだ。
アリアマゾンがラップで包んだ生首を冷蔵庫に保存したり、調理された人肉ハンバーグをアマゾンが食べたりと、アマゾンの人間らしい食事がS1では特徴的だ。そこにはエンタメとしての面白さもあるが、人間も残忍なアマゾンとさして変わらず、食らうために殺すのは同じということが表現されている(と思う)。

そして、どうしても食べなくてはならないという本能とは別に、感情がある。それは例えば、モズアマゾンがアマゾンという本能に反して抱く人肉食への抵抗感や、殺すことに強い喜びを感じる殺人鬼の感情だ。その感情を指針に人々は生きていく。
そして、その感情が強固になると、仁さんの「アマゾンは全て殺す」という線引きのようなものになると思うのだ。

では、悠はどのように変化していったか。
まず、悠は"水槽"から解放されることで現れた“僕の中の僕”、つまりアマゾンの部分に恐れをなす。しかし、七羽さんから「ちゃんと自分の力で生きなきゃ」とはっぱをかけられ、ベルトを渡され「僕は僕の中の僕に従う」「食われる前に食う」と、仁さんに立ち向かう。
こうして悠は「生きるために食べる」という生物の基本を実行する。

そうして自由になったはいいものの、残虐性、好戦性というアマゾンの性質が受け入れられない悠は水沢本部長に自分は何者かを問い詰めにいく。人間かアマゾンか「あなたが確かめなさい」と言われた悠は、穏和なマモルに希望を見出しながら、自分が人間であるということを証明するためにアリアマゾンと戦うことにする。
だがその戦いで、悠は人間離れした残虐な戦いっぷりをみせる。「戦えば戦うほど気持ちよかった。それが本当の僕なのか、僕の中の違う僕なのか、自分にもわかりません」という風にアマゾン性を否定しきれなくなった悠は、アマゾン性をコントロールするヒントを得るために囚われの仁さんの元に向かう。

しかし、そこで得たのは人間として生きていくヒントではなく、これからの悠の生き方を決める感情だ。この直前に七羽さんに言われた「どうしたいか、どうするか」の部分である。
仁さんがアマゾンになった経緯を聞いて悠は「たぶん僕はいま怒ってる。あなたたちに」と怒りをあらわにした。その瞬間に彼は自分の中のアマゾン性を認め、生みの親から無条件に殺されるアマゾンを庇護する意思を持つのだ。
そうして「狩らなきゃいけないものは狩るよ。守りたいものは守る。人間でもアマゾンでも」という線引きが生まれるのである。

そして、その線引きを決めた後、アマゾンをどこまで守るかという線の揺らぎが生まれていく。その筆頭がモズアマゾンだ。そこで悠は覚醒してからでは、もうどうにもすることができないのだということを学ぶ。人肉ハンバーグ店では覚醒していないアマゾンは人肉を食べていても許すという立場をとる。こうして、悠の線引きは確固たるものになっていく。

このように彼は"水槽"から出て、生きる上で誰かを傷つけざるを得ないということを自覚し、その上で自分はどうするかを決め、実行していくのだ。

S1は生きることが戦うことに繋がることを描いている。それは悠の「全部の理由はここから見つかるのかも」というセリフにも詰まっている。
このセリフは三崎を食べて一人で泣いていたマモルや、最後の最後に駆除班がマモルを守り仁さんに銃を向けたシーンで呟かれる。
マモルは悠の「正直、人を食べちゃいけない理由なんてわからない」という言葉を受けても「でも三崎くんを食べたのは嫌だったよ、すごく」と答える。
マモルを守る駆除班に仁さんが「なにしてる、そいつは虫だぞ!」と言うと、志藤さんは「ああな!俺にもわからねえ!」と答える。
この、道理に合わない感情こそが戦う理由に、なっていくのだ。だからこのシーンを経て、彼らはS2では新しい線引きで行動をしていくことになる。

つまり「全部の理由」というのはアマゾンズで描かれる争いの原因であり、それは彼らの感情から生まれるのです。
「生きるってことは、他の誰かの命を食らう」ということが絶対的に核にあるから、アマゾンと人間という垣根は絶対的にくずれない。
でもだからこそ、揺れ動く感情がそこにはあり、それが戦う理由へとつながっていくということが描かれていました。

今日から公開の『劇場版 仮面ライダーアマゾンズ Season1 覚醒』は新しい解釈で観られるように、駆除班物語として作られているらしいので、楽しみです!!!

あと、近いうちにSeason2についても書きますので、よろしければそちらも読んでいただければと思います〜

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