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超フェアな世界でも、格差は勝手に生まれる

格差の原因は「誰かの搾取」であると、一般的に思われています。

ところが、仮に「誰も搾取しない、誰も不正をしない世界」を作っても、格差は消えないかもしれません。

いくつかモデルを作って実験をしたところ、面白い結果が出たのでメモ。

・全員の能力が平等
・全員の初期財産が平等
・全員のチャンスが平等

この条件下で2種類のモデルを作って、シミュレーションをしてみました。

モデル1: サイコロを振って出た目だけスコアが増える 
モデル2: コインを投げて表だったらスコアが2倍

サイコロの目だけ、スコアが増えるモデル

実験1は、サイコロの目だけスコアが増える、スゴロク形式の世界観。

前提条件
・全員の能力が平等
・全員の初期財産が平等
・全員のチャンスが平等
ルール
・サイコロを振って出ために等しいスコアを得る。
・初期のスコアは0

シミュレーションしてみたところ、トライアル回数が低い状態では格差が生まれますが…トライアル回数が増えるほど平等になっていきます。

トライアル10回の分布
縦軸: スコア
横軸: ユーザーをスコア順にソートしたもの


トライアル100000回の分布

縦軸: スコア
横軸: ユーザーをスコア順にソートしたもの


サイコロの目だけスコアが増える…といったゲーム環境下では、トライアル回数が増えるほど格差は減っていきます。

スコアが大きくなるほど、サイコロの目の影響度が下がるためです。(10万点に1点足そうが、6点足そうが変わらない)。

このためトライアル回数が増えるほど、全員が平均値(3.5  * 試行回数)に近づきます。いわゆる平均回帰ですね。

こういうゲーム環境下では、トライアル数が回転するほど格差がなくなり平等になります。

コイン投げに勝つと、スコアが2倍になるモデル

実験2は、サイコロではなくコイン。コインを投げて、表がでたら「スコアが2倍になる」というゲームです。

前提条件
・全員の能力が平等
・全員の初期財産が平等
・全員のチャンスが平等
ルール
・コインを投げて、表だったらスコアが2倍になる。
・初期のスコアは1

理屈の上では、「プレイヤーは平均50回勝つ」し、「勝敗数のブレは正規分布に収まる」はず。

なので、まぁそんなに差がつかないだろう…と気軽に考えてたのですが

正直、予想よりもヒドかった!


トライアル30回のスコア分布
縦軸: スコア
横軸: ユーザーをスコア順にソートしたもの

ものすごい超格差グラフ。半分以上の人が、グラフとして反映されない程度のスコア。

縦の数字が変なのは…「メーターが振り切れてる」からです。2億とかいっちゃってる。縦軸の数字は、 2^1e6 = 2 * 10^8 = 2億ぐらい。 

トライアル100回のスコア分布
縦軸: スコア
横軸: ユーザーをスコア順にソートしたもの

こっちは1.2京ぐらいですね… 回数が増えるほど、分布が極端になっていく。

「スコアが倍率で増える環境」では、トライアル回数が増えれば増えるほど、どんどんと格差が増えていくようですね。

全員の能力が一緒でも、初期財産が一緒でも、チャンスの数が一緒でも、「50%の確率で財産が2倍」というゲームを100回プレイするだけで、この程度の超格差は自然に生まれてしまうようです。

ちなみに2つのモデルの比較では、後者のほうが超格差ですが…後者ワーストプレイヤー陣のほうが、前者のトッププレイヤー陣よりハイスコアです。

もにゃもにゃ考える

あくまで実験と気づきのメモなので… ここから先に、すごい解決法とかはありません。経済や金融の人からすれば、当たり前の話だったりするかもしれません。

ただ、実生活への応用としては、「収入を得たら、収入をアップさせるものに使う」というのが、非常に大事なポイントに見えます。拡大再生産ですね。

サイコロのルールで、プレイヤーのスコアがスケールしない。それは「プレイヤーのスコアに対して、スコアの増加量が独立かつ一定」だからです。一方、コインのルールで、プレイヤーのスコアが級数的にスケールする。それは、「プレイヤーのスコアが増えるほど、スコアの増加量も増える」からです。

収入を得たら、収入をアップさせるものに使う」というルールを自身に課すことで、自分の収入の増加曲線をルール2に、(ちょとづつ)寄せることができます。

ピケティのいう、資本収益の増加速度は、労働給与の増加速度よりも大きい…というのは、こういうことなのかなぁ…と思いました。

将来、人種や性別や年代や場所や…もろもろの差を無くして、搾取もなくして、不正もなくしたとしても、それでも格差はなくならない。完全にフェアな環境を作っても、ランダムネスだけで、ここまで格差が生まれてしまう…というのは、ちょっと衝撃でした。

SNSにおけるソーシャル格差なども、こんな感じで「同じような能力」「同じような面白さ」の人でも、ランダムの積み重ねでフォロワー数に大きな差がついたりするのでしょうね。

再分配そのもの手法も、色々と工夫をしないと、このギャップはなかなか解決しなさそうです。

追記、Twitterで似たような議論を教えてもらいました。

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