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マーケティングアジェンダ2020 参加レポート #MA20

マーケティングアジェンダ2020の参加レポートです。このような情勢の中、200人以上のマーケターがあつまり情報のアップデート&コミュニケーションが活発に行われました。行けなかった方も多いと思いますし、行った方の振り返りとレポート用に、主にキーノートを中心としまとめましたので是非ご覧ください。(ぜひ使ったよ~とか参考になりましたとかTwitterなどで一言だけいただけるとうれしいです(^^))

なお、Twitterのまとめはしまこさん(https://twitter.com/simakoo1)が行った雰囲気満載でしてくれていますのでこちらをどうぞ。

今年のテーマは『人間理解』

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今年のテーマは【人間理解】。エンゲージメント、ファン、UGCなど顧客理解がより大事になってきた時代において注目のテーマ設定です。

ラップアップのコメ兵ホールディングス藤原さんのお言葉を借りますと、すべてのキーノートにおいて「人間理解」は本質的で、最重要と捉えマーケティングしているものの、アプローチや視点が違っていて、

・キーノート②𠮷野家 河村社長、サツドラ 富山社長、:顧客に価値を伝えることの重要性
・キーノート③刀 森岡さん:徹底的な人間理解による価値の探し方
・キーノート①富永さん、ニューロサイエンス 辻本さん:人間理解のやりかた、順番

という順番と内容で理解をするとわかりやすいです。なお、キーノート③だけは公開NGでしたので、簡単にまとめる程度になります。ご了承ください。

ちなみに、withコロナということで名刺交換はEightで、フェイスガード&マスク着用必須の中行われました。少し窮屈で、声も聞こえにくかったですがあるべき姿かと思います。

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それでは本編です。

キーノート①「人の非合理性は、行動経済学と脳科学で解明できるのか」

思っているよりはるかに人間は論理的に選択をしていない。意思決定は脳のシステムにより起こっているということを解き明かすという、トップマーケター富永さん、ニューロサイエンティスト辻本さんによるアカデミックなセッションからはじまりました。(前述のとおり、人間理解の方法論ととらえていただくとよいかと)

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まずは、ブランドができる仕組みから整理。後程高広さんのお話もまとめますが、ブランディング=広告配信と広義過ぎる理解から直す必要があります。

【ブランドができる仕組】
①ブランドからの提供価値定義
②顧客ごとの戦略
③顧客ことのコミュニケーション
④顧客ごとに接触
⑤印象の蓄積

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ブランドはいわば『言葉の集合』。①の約束、決めごとの言語化が初めに必要。しかしそれの定義が難しく高コストだったため、もうすこし曖昧なペルソナ化、説明化をしてきた。
サイエンス的にも本質的価値を言葉にすることはとても難しく言語化できている範囲は限定的。実際、言語化されていることと、実際に脳内で起こってることに乖離がある。」

ブランディングとは、高広さんの言葉を借りると「生活者の生活に入り込むこと」。消費者の生活に何をもたらすかを約束(ブランドエクスポージャー)し、体験(ブランドエクスペリエンス)してもらうことがゴールです。約束のためには言葉が必要です。しかし、この言語化は限定的にしかできないということです。

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また「いいプレゼンと評価されてるものは、人の動きに反応している。しかし、評価の理由を聞くと動きに言及していない」とも。

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では、インスパイアをコミュニケーションで達成するのはどうする?という話がありました。

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「ここで記憶を因数分解してみる。潜在記憶は言語化は困難。陳述記憶は頑張れば記述可。特に陳述記憶のエピソード記憶がインスパイアにおける面白い点。色、匂い、音などで呼び起こされる。」

エピソード記憶の言語化は難しいですが、ここにアプローチすればブランドをインスパイアさせられるということです。(この記憶の因数分解の話、理系にはめちゃくちゃ面白いです)

繰り返しになりますが、結局、言語化は非常に難しく、言葉で説明できることは限定されます。

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マーケターは機能やお得で買う理由を与えるようにしがち。しかし、ブランドに対する好きを作った方がいい。それを脳科学で因数分解すると、『家でも食べ物でもまずFeelが起こらないとコンバージョンしない』ということ」

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このFeelがまずは先という話は、このあとみなさんとの会話でも賛否がわかれるところでした。家電や食品はやはり「機能・味」の評価が最低限ないとFeelにすら到達しないという議論も。

人は理由を後付けでつけます。その理由を用意しておくことが重要という事です。『ブランドに対する好きを作るには?』という議論を忘れないこと。脳科学的アプローチ。ぜひ実践してみたいですね。

キーノート②「𠮷野家の成長を支える、経営とマーケティングの融合」

二つ目のキーノートは、𠮷野家河村社長、サツドラ富山社長というこれまた豪華すぎるセッションです。経営とマーケターの関係や、今後どのような経営視点が必要なのかについて語られました。

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↑サツドラ富山社長

「𠮷野家とは何か?顧客にとって、社会にとって、産業として。」という質問に対し、河村社長はこう答えます。

「𠮷野家でのバイトの時、提供しているものが明らかにいただく価値より高いという自信、やりがいがあった。また、客や従業員を選ばないことも魅力。後ろめたさがなく、誇りを持てる。」

会社や、会社が提供するサービスを愛し、自信が持てる、ということは顧客への価値提供(つまりブランディングの実現)において最重要なことです。それこそがプロモーションにもオペレーションにもにじみ出るからです。

「𠮷野家の店長というと社会的地位が高くなく評価されがち。バイトしてることを隠している人もいる。価値が高いものを提供してるのに社員が誇りを持てないのはおかしい。社員全員が自社に誇りを持つことが何より大事。

飲食業自体の地位を上げる。チェーンストア産業は、仕組みだけでなく価値を展開していくべき。社会貢献をしていく。社会貢献しているという意識づけを社員全員にしていく。」

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↑𠮷野家河村社長。さらに、河村社長はこう続けます。

「𠮷野家という屋号や、牛丼を残したい訳ではない。ビジネスウェイ(価値観)を守りたい。『うまい、はやい、やすい』は牛丼だけの言葉ではない。牛丼が中心なのは間違いないが、消費者の選定方法は多様化。ビジネスウェイをブラさず価値を提供していく。」

最後に、マーケターに期待することをこう語りました。

「マーケターはアクセルを踏む、経営者はブレーキを踏む役目、(もしくは、楽屋では経営者が直球・マーケターが変化球を投げる役目ともおっしゃっていました)といった形が理想です。
相互補完。一人でアクセル・ブレーキをすると芯がぶれてしまい説得力が無くなる。マネジメント層は自分発揮に固執しがちだが相互補完が必要。お互いが“多様性に対する許容”をする。

提供価値を信じ、価値の提供を実践し、顧客の期待に合わせて変化させていく。この理念こそが𠮷野家の強さだと感じました。あなたの会社は、自社のサービスを社員は愛せていますか?どんな価値を提供するのがミッションか、社員全員が話せますか?

キーノート③「どんな戦略でも使える“武器”とは? 森岡毅 × 伊東正明」

残念ながら、USJ立て直しでおなじみ森岡さんと伊東さんによる超高密度なセッションは非公開となります。

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しかし、消費者の本能の追求(人間理解)を徹底し、顧客理解をしたうえでの戦略策定にこだわることがとにかく重要であることだけお伝えしておきます。

サンゴの養殖に成功した金城さんの”価値を伝える”というお話

まとめに入る前に、少し話はそれます。各グループに分かれて行うアクティビティで、サンゴ養殖に世界ではじめて成功した金城さんのお話を伺うことができました。非常に学びが多く個人的には最高の時間を過ごせたので是非共有させてください。

現在、全世界の海におけるサンゴ礁の割合は0.2%程度といいます。しかし、そのわずか0.2%が、65%もの海洋生物の生態系に影響を与えているとのこと。つまり、サンゴを守らなければ私たちは美味しい海の幸にありつけなくなります。

サンゴの価値を人生をかけて守り、伝えていく活動をしているのが金城さんです。(お時間ある方は詳しくはこちらの記事を見てください。)

その金城さんがわざわざ私たちのために講演してくださいました。その内容を一部記載します。

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金城さんと私。感動しすぎてツーショット。

金城さん:
「7年苦労してサンゴの産卵を達成したのに初めは共感されなかった。そこで感じたのは、『人が人を変えるのは不可能。人は自分で変わるしかない。』その人が価値と捉えられるように伝えて、自ら変われる努力をさせられるかが大事」

まさに、前述のブランディングの整理そのものです。我々は消費者に対し価値を感じていただき、変わってもらうような努力をしなければならないのに、一方方向のサービスを伝えることしかできていない気がします。

その人が価値と捉えられるかどうか、それに尽きるのです。

また、そのための企業姿勢についてこう語りました。

金城さん:
企業はいいことをやっているのに企業として発信するのは野暮という人がいるが、それは違う。いいことをやっているなら、やってることをまっすぐ伝えて広げて、それを素直に許容する社会に企業を中心に変えていかないといけない。SDGsが直接売り上げにつながるわけではないが、企業こそ社会を変える力を持っている。」

不思議といいことをやっているのにSNSでは「作為的」とか「やらしい」とかとかく言われがちな世の中です。しかし、実際にやっている良い事は否定される筋合いはありません。それを受け入れられない世の中を変えていかなければなりません。また、金城さんは伝え方の話もされました。

金城さん:
「環境問題を否定的に話すと、ダイバーのせい、政府の開発のせい…サンゴのことを聞いたら悲しくなるようになってしまう。だから悲しい事を悲しく言わない。楽しみを伝えるようにしている。その方が何倍も伝わる。価値を自分事として感じ、楽しく伝える。本当に大事なこと。

伝え方も大事です。悲しい現実を伝えることから始めがちですが、それよりも楽しくなることを優先に伝えるべきです。ゴミ拾いも、エコを押し出すよりゴミ拾い大会にしたほうが、結果的に何十倍もゴミが集まったといいます。結局、そんなもんなのです。

最後に、サンゴの養殖体験をしました。サンゴが愛しくてたまらなくなりました。やっとサンゴの価値がわかりました。伝えるってこういう事なんだなと実感。

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人は自分で変わるしかない。その人が価値と捉えられるように伝える。いいことは(楽しく)発言する。実践しようと思います。金城さん、ありがとうございました。

二日目の夜の高広塾で学んだプレゼンの極意とブランディング

贅沢なことに、スケダチ高広さんによる高広塾が夜開催され、深夜まで高広さんのお話を伺うことができました。学びはあまりにも多すぎたのですが、二つだけまとめます。

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一つ目は“キーワードギャップ”

自分が言いたい事ではなく、聞く方の言葉に合わせるということです。各スライドで伝えたい事、なぜそれを伝えたいのかをシンプルに表現する。サービス名やカタカナ言葉を書いてもそれは自己満足です。
「このスライドは何の目的で書いたのか?それを聞く人の立場にたったときにはどう表現したほうがいいのか?」
という視点を徹底。実際、リアルタイムで高広さんがプレゼンを添削していく様は圧巻で、最終版では何のひっかかりもなく体に浸透していくようになりました。

二つ目は"ブランディング"

ブランディング=広告配信で認知をとることではない。

・ブランディングとは”消費者の生活にブランドが入り込む"こと
・消費者の生活においてブランドが何を約束するのか宣言する(ブランドエクスポージャー)
・約束に沿ったブランド体験をしてもらう(ブランドエクスペリエンス)

生活における(自社商品が解決できる範囲での)消費者の悩みや要望をサービスで解決することがブランディングには必要です。
※ちなみにサービスとは商品を提供することではなく、消費者が悩みや要望を解決するまでのプロセスを含む。よって商品が有形なのか無形なのかは関係ない

この二つの学び・発見だけでも、マーケティングアジェンダに参加した価値があると感謝しました。高広さん引き続き勉強させてください。ありがとうございました。

ラップアップとマーケティングアジェンダ2020のまとめ

さて、まとめに入ります。ファミリーマート CMO足立さん、エステー鹿毛さん、コメ兵ホールディングス藤原さん、スケダチ高広さんによるラップアップです。

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まず全体を通じての感想が語られました。

鹿毛さん、足立さん:
共通言語として会話できるキーワードが欲しい。DX、ブランディング、本能など定義づける必要がある。そのうえで、ブランドを本当の意味で上げられるかしっかり考えよう。

藤原さん:
企業として、流れていくけど溜まっていくものをどう作るのかが大事。人間理解も意識しつつ、今回紹介されたHOWがどうハマるかをブランド側の企業はしっかり見極める。

高広さん:
コンシューマーの理解なのか、ヒューマンの理解なのか。顧客理解の重要性は再認識されたが、次回のテーマとして残されたと思う。

今回はすべてのセッションにおいてDXやブランドが語られていましたが、結局どこに焦点を当てるのかが曖昧だったということでした。私も、徹底的な人間理解についての議論はまたマーケターでしきれてないという印象を受けました。

また、「本能の理解、自社の顧客の理解はどうすれば実践できるのか」ということについて、こう語られました。

鹿毛さん:
糸井さんの言葉を借りると『自分の中にいる大衆と会話する』。自分の中の本能を見るトレーニングをする。丁寧に生活し導き出す訓練をする。マーケターはできなければいけないと思う。

足立さん:
憑依して考えるのは基本。通常の生活で『自分自身も消費者』として捉え勉強する。

高広さん:
成り切るのは顧客理解のうちの一つ。何種類か持っておく。

鹿毛さん:
成功している人は結構準備している。ずっと考えることではじめてパッと出てくるようになる。

人間理解は習慣に。耳が痛いです。

次に、「うちの会社は何のために存在しているのか?という議論」の重要性について語られました。

鹿毛さん:
それは常に考えている。企業は喜ばれて初めて存続する。売上は喜び料。しかし、世の中に役に立つ会社を存続させるためには利益は必要。この仕事は何のためにやってるのかを考えないといけない。ブランドは人の頭の中にある。ブランディングは愛。

藤原さん:
リレーユース『自分が使っているものを必要な人に渡す』、これをホールディングスとして定義し直した。これによって企業内の循環がもたらされた。

足立さん:
社員に想いが伝わってないとお客にも伝わらない。インナーマーケティングも大事。人間理解は何も社外だけでなく社内にも必要。

キーノート①の「feelから考えること」にたいしても、興味深い見解が得られました。というか、このアジェンダ全体の総括だと私は感じましたのでまとめとかえさせていただきます。

高広さん:
サービスや物が買われるときには『バー』がある。一つの理由だけでバーを超えることはブランドがよほど強くないと難しい。だから、バーの構成要素を考える必要がある。消費者が感じる価値によってバーを越えさせる。

人は後付けで理由をつけたいので、言葉は大事。マーケティングの中で言葉で定義するのは、お客様が『合理的であった』と思い満足できるようにすることなので必要。coolと言っても人によってcoolは違う。考え抜いてその言葉を使おう。

以上でマーケティングアジェンダ2020のキーノートや主要セッションに関するまとめと考察は終わりです。このあとは気になったセッションをまとめます。

気になったセッション

ニールセンさんの調査面白かったので共有します。2020年残りの広告を止めると2021年11%売り上げが落ちるかもというデータです。企業として一番初めに削減しがちな認知広告の必要性について、改めてこういったデータを活用して戦略を練っていきたいですね。

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また、『イノベーション / DXに必要なナラティブとは?』というテーマの、インフォバーン羽村さん、小林さんのセッションも非常に印象的でした。

日本のイノベーションに対する姿勢は表層的。DX・イノベーションを会社や手元のデジタル化という主語となり、会社や社会のためという視点がない。リアリティ、ビジョン、そこからのナラティブが無い。
サーキュラーエコノミーへの変化に向けて企業としてどうするのか。資産と顧客ニーズに合わせてどう企業としてナラティブを作るのか。

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マーケティングアジェンダっぽくないテーマですが非常に興味深かったので、今回なぜこのお話をしたのか講演後羽村さんにお伺いしたところ『日本のマーケターはここの認識が少なく未来を担うマーケターに意識づけしたい』ということでした。この場をこういった視点で使えるということ自体素晴らしいですし、経営層含めてこの意識をもてればより企業活動と社会貢献が紐づき、結果的にドライブされると思いました。

また、DXの定義についてまとめたブレインパッドさんもとても参考になりました。

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DXは横軸【社内業務】と【顧客接点】にわけられ、そこを縦軸【既存ビジネスの拡大(さらにその中でも収益増強と合理化)】と【新たな市場創出】にわけ、計5分類で定義しています。

ありがちなのは合理化×社内業務のコンボ。ラップアップにもありましたがDXをもっと幅広い視点で見なければならないのと、どの部分を目指すのかの定義づけはしっかりすべきですね。

・DXの定義を定めつつ
・データとビジネスを繋ぎ
・業務プロセスに組み込む

というのが、DXという言葉を使い業務をドライブしていくことという結論でした。

最後になりましたが、このような機会の創出に尽力いただいたナノベーション中野さん、カウンシルの皆さん、アジェンダスタッフの皆さん、協力学生の皆さん、ホテルスタッフの皆さん、スピーカーの皆さん、ご一緒させていただいたパートナー・ブランドの皆さん、本当にありがとうございました。

それでは、んちゃ。

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