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irai.meのクローズにあたっての振り返り

ザーズラック代表の福井 (@fk_mb) です。

本日10月23日、かんたん依頼サービス「irai.me」をクローズする旨のプレスリリースを出させていただきました。ご利用規約上の規定としては、第11条第1項 (通告なきサービス停止) の適用となりますが、休止期間が長くなる見込みであることから、このたび約一週間の期間を設けて告知をした次第です。

なぜirai.meをはじめたのか

クローズに至るまでのざっくりした経緯は上記リリースに譲るとして、リリース時の発表資料では詳しく書かなかった、irai.meを始めるまでのことを書き連ねておこうと思います。

昨年末の「sarahah」「peing-質問箱-」の流行以来、Twitter連携とOGPを使ったWebサービスが続々と出てきていました。これらの「質問」サービスに加え、「bosyu」が「募集」に焦点を当てたサービスとしてリリースされ、こちらも人気を博すようになりました。
こうした形式のサービスは、仕組み自体は昔からあり (OGP画像に目をつけた点、デザインをモバイルフレンドリーにしていた点がポイントか?) 、しかも基本的な仕組みは単純であったため、類似サービスが続々と出ていました。この流れに乗っかかることができないか? と考えて思いついたのが「irai.me」という「依頼」にフォーカスしたサービスでした。

↑のツイートが、最初にアイデアを思いついたときのものです。もっとも、この時点では実際に作ろうとも思っておらず、既に進めていた「SMAST」のリリースに向けて注力しようと考えていました。

しかし、思いつきとはいえ、ツイートから数日の間、この考えがどうも頭から離れない時期が続き、「もしかしたら作れるかもしれないし、案外うまくいくかも?」という考えがどんどん膨らみ、ツイートから三日後の19日にはドメインを取り、二週間ほど経った5月2日にサービスを開始しています。

通常の事業に必要な、事業計画や検証などを全てすっ飛ばして取り組んだので、もはや趣味の領域でした。とはいえ、初心者の状態でひとまず動くサービスを作るには相当の苦労がありましたし、GWには文字通り寝食を忘れての開発をやったりもしました。

どうして撤退するのか

リリースにも記載した通り、修復に手間のかかる不具合が生じ、現時点でのご利用状況と弊社のリソースを考慮すると、速やかな対応よりもむしろ一時的にサービスを停止することが最善だと判断したためです。
この決断をするに至ったのには、ご利用ユーザー数・新規登録者数の低迷が大きな要因であったことは、残念ながら事実です。

irai.meの運営に際して甘かったのは、第一にユーザーにご利用いただくための動機づくりの視点が欠落していたことが挙げられます。

irai.meを出した5月の下旬に、「takk!」という「頼みごとボックス」サービスがcotree社からリリースされ、一定の支持を集めています。
irai.meは、金銭を介するまでもない「ちょっとした」お願いにフォーカスしたのに対して、「takk!」は「できること」(専門) に対して対価を払う点に大きな差があります。
ユーザーサイド、とりわけ高いスキルをもつ方にとっては、わざわざirai.meを通じて名前もわからない人の頼みに応じるインセンティブがありません。irai.meの開発時点では、そうした専門家レベルの方は考慮に入れていませんでしたが、実際のところ「お願い事を聞くよ!」なんて態度は相当の知名度か能力がないとやりづらかったのかもしれません。

第二に、類似サービスとの差異を強く打ちだせず、先行者に取って代わるまでの価値を生み出せなかったことも大きな点だと認識しています。

図:実際に筆者に届いたirai/質問

peingで同じことができるのに、わざわざirai.meを使う理由がありませんし、ユーザーにとってはコンセプトなど些細な差でしかなかったと言えたのだと思います。

反省点

・思いつきだけで無計画に進めてしまったこと
・irai.me関連に時間を取られ、他の仕事をおろそかにしたこと
・勢いに任せて開発をし、完成後にかなりの精神的虚脱期間をつくってしまったこと

これからどうするのか

irai.meをご利用いただきました皆様には申し訳ございませんが、当面の間は他事業に集中させていただきます。

第一に、映像教育プラットフォーム「SMAST」の11月正式スタートをめざします。
弊社の旗艦事業としてぶち上げた「SMAST」ですが、教育系ビジネスがあまりにも「学生起業あるある」すぎることに気がついたのは計画を立ててから相当後になってからのことでした。そういった面からも当該事業に対する不安が高まり、食指が動かなくなったことも、irai.meのアイデアに飛びついて固執してしまった一因です。
「SMAST」に関しては、システム面の確実な設計と、ユーザーのニーズの確かな把握・検証を重ね、必ずやお客様にご満足いただけるよう精進を重ねます。

第二に、「SMAST」リリース後の新事業に向けての計画の策定とプロトタイピングを着実に実施してまいります。
こちらに関しては、現時点で言えることがほとんどありませんが、自信をもって進められるよう着実な準備を行う所存です。

そして、「ザーズラックはどういう会社か、何をする会社か」という面に改めて向き合っていきたいとも考えています。
創業当初の思いを一言で表せば「奇跡を創出する感動を届ける」こと。これだけではものすごく曖昧で空っぽなフレーズでしかありません。
これを実現するために、弊社のリソースで何ができるか、この環境で何が向いているのかを真摯に見直す必要性を感じています。irai.me事業を通じて、この問題のヒントが見つかったように感じているので、さいごに少しだけ書き加えようと思います。

さいごに

創業以来、スピードの遅さや戦略の稚拙さのような面で苦しい局面に追い込まれたことはありましたが、サービス長期停止という形で一つの事業を取りやめることになったことは、自分自身、重く受け止めるべきことであると同時に、大変ショックでもあります。
irai.meはスマホアプリとしての展開も目指していました。既にほとんど完成段階であり、このアプリのためにApple、Google Play両ストアにアカウントも開設した後でした。
創業当初のキュレーションアプリ事業から短期間でピボットし、「教育」「出版」「インターネットサービス」の三つの軸で動いていたなかで、irai.meは三つ目の軸の中核になると考え、ここまで動いてきました。

それだけに、irai.meを使っていただいたユーザーの方々やその反応を見るのは本当にうれしく、サービス上での依頼をきっかけとして物事が動いていくのを見るたびに、コミュニケーションのもつ可能性、そして多くの可能性・展望を感じてきました。まさにコミュニケーションが「奇跡」---チェコ語でZázrak---を生み出す源泉だと確信するに至り、創業時の思いが蘇るようでした。

irai.meは今月末で一区切りを迎えますが、ザーズラックはこれからも、奇跡を起こせるサービスの創出をめざしていきます。願わくは、これからのザーズラックをみなさまと一緒に作り上げていけることを。

Twitter:@fk_mb


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