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5月31日(水):「健保沈没」を避けるには

今週の日経ビジネス(5月29日号)における特集記事は「健保沈没」と題したものでした。

健康保険組合の現状でいえば、約1,400ある健保組合の8割ほどが赤字であるほか、近年は一定数が立ち行かなくなって組合数も減少傾向になっています。

このようになる背景は経済成長の鈍化により財源である労使双方からの保険料が頭打ちになったほか、高齢化は加速の一途で、なおかつ昨今では人生100年時代に向けて65歳以上の高齢者の就業者数も増加傾向です。

こうした構造的な問題を受けて同特集では制度設計を見直す必要性に言及をしていました。

制度を現状に即したものに変えていくのは必要ですが、最近は健康経営が叫ばれるようになった通り、根本は医療のお世話になる機会を減らして健康寿命を延伸していくことに他ならないでしょう。

一方で健康寿命に関連した状況を見ると、これは芳しくない状態にあります。

先般には「健康日本21(第三次)」推進のための目標値(案)のことを取り上げましたが(※「健康日本21」とは、健康寿命を延ばすことを目的とし、生活習慣病の予防や食事、運動などの目標を設定しているもの)、2013年度より開始した「健康日本 21(第二次)」の合計 53 項目による目標設定では約10年にわたる運用の最終評価が以下のようになっています。

A、 目標値に達した :8(15.1%)
B 、現時点で目標値に達していないが、改善傾向にある :20(37.7%)
C 、変わらない :14(26.4%)
D 、悪化している :4(7.5%)
E 、評価困難 :7(13.2%)
合計 :53(100.0%)

「目標値に達した」、「改善傾向にある」ものを含めて52.8%という状況ですから、取り組みの有効性・実効性は十分とは言い難い状況にあります。

とりわけ生活習慣病に関連した項目では「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少 」の目標が「悪化」のD評価に該当しているのが実情ですから、ここの改善は急務と言えるでしょう。

現状では健保によって特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上を進めているところもあるので、啓発や仕組み、ナッジなどによってその改善を進めていくのが第一歩だと思います。

それでも改善が進まなければ企業側も採用の条件を見直したり、評価の仕組みを変える、といったことも一考かもしれません。

前者についていえば自社は健康産業なので創業時から禁煙や定期的な運動ができることを採用条件にしていますが、最近では星野リゾートのような企業も採用条件に禁煙を盛り込むなどしている通りです。

後者は健康経営や人的資本経営を本格的に進めるのであれば、健康状態や生活習慣、それに伴うパフォーマンスを評価と連動させることも的外れではないはずです。

従来は業績に関する指標が最優先だったのは致し方ありませんが、今後はこれらの点へフォーカスする意味合いもいっそう高まってくると思います。

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