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9月23日(月):「アスリートの遺伝子研究」のあれこれ

先般には「アスリート遺伝子の研究を停止 国立スポーツ科学センター」と題した記事がありました。

こちらは日本スポーツ振興センター(JSC)国立スポーツ科学センターが、トップアスリートらの遺伝子と、競技の成績やけがのリスクとの関連を調べる研究に着手したものの、その後、停止していたことがわかった旨を報じたものです。

研究を途中で終えることになった事実から感じるのは、何のためにそれをするのかという目的や、その先の具体的な運用がやや曖昧だったのだろうと思います。

私も長くスポーツに携わり、現在は健康産業に従事しているなかでの私見ですが、遺伝子の研究から新たな発見がある一方、それ以外の要素で決定づけられる面が多分にあることです。

ケガのリスクについていえば、遺伝子の研究よりも選手の日常をしっかりとトラッキングして状況を可視化したり、それに応じた適切なケアをするほうがよほど現実的、かつ効果的でしょう。

例えば欧州サッカーのビッグクラブでは10年以上も前から、そうしたコンディショニングはシステム化されていました。

選手自身が自分の疲労度を主観的に入力したり、定期的な採血を行って血液データによる客観情報、さらには実際のトレーニングによる走行距離や負荷といったものが統合され、一覧になっているようなイメージです。

そのなかで選手個々にとっての閾値を超えるような状態に近づくとアラートが出て、負荷を軽減するといったコントロールも含めてコンディショニングが行われます。

欧州でも指折りのチームの選手となれば、年俸は数億円~十数億円、移籍金なら百億円を超える選手もいます。

そうした選手がケガによって数ヶ月の離脱をしたり、シーズンを棒に振ってしまえば、そのチームにとっての損失は非常に大きなものとなるのは想像に難くないでしょう。

だからアマチュアスポーツとは比較にならないほど、選手のコンディショニングには重きが置かれて、先端のテクノロジーを使ったり、データの蓄積も行われているわけです。

こういった状況をふまえると、冒頭に触れた遺伝子の研究でパフォーマンスやケガのリスクとの関連を見出していくのは、その運用を含めて相当にハードルが高いと感じますね。

種目によっては身体的なアスリート能力よりもスキルが結果に直結する面もあるし、仮に遺伝子的な資質があってもメンタル面が伴っていないと、スポーツあるあるの「消えた天才」的になってしまうケースも出てきます。

そのような点も含めて考えると、例にあげた欧州サッカーのように現実に立脚した研究を進めていく方が、パフォーマンスアップやケガのリスク軽減にとっての実用的な道筋が見えていくだろうなと思う次第です。

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