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vol.3 成功する地方移住と田舎暮らしについて語る決定版~イノシシを捕まえて報奨金で儲ける方法~

太田製作所さま サウザーの白熱教室
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※試聴版。オリジナル版(55:54)は購入後に視聴可能。

第三話(全六話)
「地方移住は甘くない」と前回は締めくくったが、では具体的にどう甘くないのかを第三話では説明していく。
結論から言うと、都市の生活に慣れた人は地方・田舎の特性に順応できず苦しくなっていく。
そのことを述べていくにあたって、まずは地方・田舎とはどんなものなのか、考える。
まず都市だが、これは英語で言うならばシティ。対義語はカントリーである。こうすると高層ビルが立ち並ぶシティと、青空の下で緑の丘陵が広がるカントリーの画が浮かんでくる。シティでは多くの人がスーツを着て、あくせくと勤め人をしている。カントリーでは人間がまばらに居て、ラフな格好をして牧歌的な生活をしている。そんなイメージも浮かんでくる。
シティは近代に出現した人工物で、その歴史はまだ200年ほどだ。さらに都市への人口集中は100年の歴史もない。
さてカントリー、地方・田舎と聞くと、牧歌的なイメージに続いて次のようなイメージも湧いてくる。

・陰湿
・噂好き
・保守的

このようなウェットな人間の特性は、都市にはあまり見られない。都市では人間関係は希薄であり、他人には無関心、ドライな特性を持つ。
このギャップについて深く理解せずに地方移住をすると、先住民と齟齬が発生しストレスが溜まって悩むことになる。

なぜカントリーにはウェットな特性があるのだろうか。

田舎の人の性格が悪いから?
陰湿な人しか残っていないから?

そうではなく、この陰湿でウェットな特性は石器時代から続く、人間という動物としての「群れ」の特性そのものなのだからである。

つまり人間の群れはもともと陰湿なのだ。

太古の昔、我々の祖先は肉食獣や飢えと常に戦っていた。常に淘汰圧に曝されていた。鋭い牙や爪を持たぬ動物が自然環境や外敵に対抗するには必然的に「群れ」を形成する。
この「群れ」の特性がカントリーに今なお残っているウェットな性質の正体だ。
群れにおいては、メンバーが重要だ。メンバーに問題があれば瓦解し、その群れは滅ぶ。そのため群れの仲間には関心を持つし、その情報も群れの中で速やかに伝播される。悪く言えば相互監視、ウェットな特性となる。
この特性をシティの人は「陰湿」「噂好き」と毛嫌いする。しかしこれこそが人間が持つ生来の気質であり、「群れ」を形成しないシティの生活が特質なのだ。
群れでの生活では、助け合いが必要だ。各人が得意を活かして、群れに貢献することがメンバーには求められる。

つまり群れにおいては、実用性が重視される。
有体に言えば、無能や怠け者は要らない。

これはとても冷たく、シビアに感じる。しかしながら石器時代の祖先が淘汰圧と戦っていたことを思えば、無能や怠け者に厳しいのは当然のことだ。
カントリーには、この文化が根強い。いや、根強いというよりは、やはりそれが人間という動物の群れの本来の姿なのだ。
ここまでで、地方・田舎では石器時代に形作られた「群れ」のウェットな特性が息づいているために、それを知らない都市からの移住者は面食らう、ということがわかっていただけたかと思う。

続いて、さらに具体的に説明をしていこう。

群れの人々は新参者をジャッジせんとして直接接触を試みる。そのとき、まず初手で繰り出されるのは「おすそ分け」である。自分の畑で採れた農作物などを片手に、カントリーの人々は新参者を訪ね、交流を始めようとする。
この作法は、シティの文化しか知らぬ者には異様に映る。隣人になぜそこまで興味関心を持つのか、理解ができないからだ。むしろ不審感すら抱いてしまう。しかし人間の群れとしての性質を色濃く残すカントリーにおいては当然の作法なのだ。

人類は「お金」「金融」という概念によって経済活動を広げたが、この発明と普及はここ百年ほどの歴史しかない。その以前の取引では「物々交換」が基本であった。野菜と魚を交換する、米と毛皮を交換する、という原始時代から祖先がやってきたことが、シティでは失われたがカントリーでは続いている。
そのためまず、カントリーの人々は「おすそ分け」の形で接触を試みるのである。

「おすそ分け」の狙いは何なのだろうか。最初に釘を刺しておくと、カントリーの人々は「ありがとうございます」という”言葉だけ”など期待していないし、ましてやお返しの品物、”物体それ自体”も期待してはいない。
彼らが無意識下で真に望んでいるのは、新しく群れに加入する人(移住者)との

「人間関係のバランスシート構築」

である。新しく知り合った人とのバランスシートは最初、もちろん白紙だ。この白紙のバランスシートに「貸し・借り」の取引実績を刻んで人間関係を構築したいのだ。
先述の通り「群れ」の意識を色濃く残すカントリーにおいてはメンバー間で関係を深めたいという本能がある。そのためバランスシート構築が無意識下で望まれる。人間関係のバランスシートは、言い換えれば「信用」という無形資産でもあり、数字では表せない仮想通貨でもある。

そこで手っ取り早くバランスシートを構築できる手段が物々交換での取引であるから、先住民はまず「おすそ分け」の形をとり接触を試みるのである。
この心の動きを理解していなければ、突然の「おすそ分け」に対して「ありがとうございます!」と口だけで対処してしまう。これがいけない。
繰り返すが先住民が求めているのは感謝の言葉などではない。「貸し・借り」による人間関係のバランスシートの構築なのだ。
そこでは物々交換もしくは労働力の提供が暗黙のうちに求められている。言葉にせずとも、態度には出さずとも、おすそ分けのお返しを無意識下で求めてしまう。

それが人間という動物が持つ「群れ」の本能だからだ。

このバランスシートを構築する意思がない者に対しては、カントリーの人々は厳しい。
単体では弱い人間という動物が、過酷な自然環境で生き残るには、群れを作って助け合う必要があり、祖先はそうしてきた。その太古の昔に刻まれた本能がそうさせる。
このことを理解したら、返礼の品を用意することが必要なのだが、いちいちお菓子を買ったり、労働力を提供していたりしては大変だ。既に自分の商品やお金を持っていれば対処できるが、それらがない人は地方移住することは難しいのだろうか?

その対策として本作が提案するのが「イノシシ狩り」という文字通りのワイルドカードなのである。

つづく

ヤコバシ著

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