薄造りについて
今回は刺身の薄造りについて書きます。お刺身を作る際に、1つでも参考にしていただけるところがあればと思います。
刺身の中でも特に「薄造り」は、できると「おおっ」て喜びがあるので、敢えて薄造り 笑。
マグロがよく拍子木に切られてますが、あれは「平造り」です。それも刺身なのですが、ちょっと感動が少ないといいますか・・・マグロに失礼ですが。それも十分奥深いんですけど。
私は魚の身、筋肉と脂肪の美しさが引き出されたほうが好きなのもあって、薄造りのほうをよく作ります。あとは、じつはあまり刺身を大量に食べないからですね。大きな塊に切ると肉みたいでしょう?それなら焼肉のほうが好き。
ではどこからを薄造りと言うか、感覚で2mmです。透けてるととくに感じが出ますね。
で、どんな魚が向いているか、それはお好みで・・・なのですが白身が多いです。マグロ、カツオなどは色が濃赤で透けないですし、身がとても柔らかく厚く切ったほうが食感がいいですね。
締まった白身を薄造りにしたときの、凛とした質感。
口に入れたときに、艶めかしく纏わりつく舌触り。それを実現するために、条件があります。
・刺身がよく冷えていること
・切断面を滑らかに仕上げること
です。
出来上がりの刺身が冷えているためには、
・刺身自体がチルド室などで冷えていること
・それを切る包丁が冷えていること
・それを置く皿がよく冷えていること
さらにこだわれば、
・手まで冷たくすること
です。
・作るのに時間をかけすぎない、手早く
のは言うまでもないですね。冬は部屋が寒いのでラクです。
結構たくさん項目がありますが、
まずは、
・刺身自体と皿が冷えていること
かな、と思います。
刺身自体がよく冷えていると水分が出にくくなり、ダレません。もし水分が多いようなら、ほんのうすく塩(粗塩)をして、キッチンペーパーで拭き取っておきます。表面を触ったときに、軽く糊でもついてるかな?という、指に吸いつく感じがよいです。
また、脂の多い鰤のような魚の場合、とくによく冷やさないと、脂が溶け始めたときの「ダレ感」は収拾がつきません。
とにかく目的は、綺麗に切りやすい状態に持っていくことなので、手段は何でも結構です。
よく和食屋での修行でカマボコで練習した、というのを聞きますが、それに近くするということかもしれません。ほんとに今もそれで練習している人がいるのかは知りませんが・・・。
カマボコもまあまあ値段しますよね笑。
次に切断面ですが、よく切れる包丁で、あてる瞬間から切り終わるまで、止めずに引き切る。とにかくゴシゴシやらずに、包丁の重さで引いて切る。もし一度にできなければ、真ん中で休んでもいいと思います。無理して一度にやろうとして、ヘンに力で押すほうが良くないかと。するとツルっとした表面で口当たりよく、見た目にも艶が出て美味しそうにみえます。
ここで、道具についても書いておきます。
・包丁
刺身包丁が必要かというと、そんなことないと思います。万能包丁でもよく研がれていれば、刃が薄いので結構つくりやすいです。刃が薄いほうが、切ったときに抵抗なく刃が通過します。
・俎板
木の古い俎板。表面がザラついていて、刺身の「サク」が動きにくいほうがやりやすいです。樹脂のつるつるしたものだと、包丁に刺身がついてきてしまいます。
・布巾
包丁が汚れると、それも摩擦になります。常に拭いてベストな状態を保ちます。ほとんど水があるかないかくらいの布巾です。包丁、ひいては刺身に水がつかないようにします。
そして、最後に。置き方です。
薄造りにした刺身は、もちろん薄いのでペラペラです。そのままただ並べるとどうなるかといいますと、刺身こんにゃくのようになります。
べったり濡れてて、お互いにくっ付き合っていて、ハリがないですよね。
ある意味、それの逆に、
冷えて程よく水分の抜けた刺身を、
くっつき過ぎないように、
両端(外側)を引っ張りながら置いていく。
ということです。
実際に例を見てレビューしてみます。
↑斜めに細長く引いた刺身の両端を引っ張り、外側を浮かせて立てています(平目)
↑これも立てていますが、皮を残すことで立体感を容易に出せるようにしています。(鯛)
↑外側を引っ張り、内側を少し緩めるようにして変化をつけてます。(間八)
私は整然としたものよりこういう薄造りが好きですね。
並べるときは外から内列へ。あまりゆっくりやるとワザとらしくなってオーラが抜けますので、邪念なく。少々の差は気にせずリズムよくやってしまいましょう。
こうして書いてみると、細かいですね笑
ただ、全部やらなくても刺身は十分美味しいと思います。失敗しても、和えて酢の物にしたり、ヌタやタタキ、パスタに入れてペスカトーレに転用したりできますし。ぜひやってみてください!
#魚料理 #家庭料理 #刺身 #寿司 #和食 #写真