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自分に呪いをかけないで

「恋を読む」という朗読劇シリーズ。一大ブームを巻き起こした「逃げるは恥だが役に立つ」を作品化。
ドラマ放送時「そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」で泣いたのを思い出した。

ドラマはガッツリ見てた&世間の流れと同様にどハマリした(恋ダンスは踊れない)ので、結構複雑だった。思い入れが強すぎると、そのギャップを埋めるのに苦労するからだ。
そこに推しの石川界人が出演。しかも風見さん役。ええっ⁉津崎さんじゃないの⁉あのこじれた感じは絶対津崎さんでしょ⁉風見さんもまぁこじれてるけどこましゃくれた感じはなんか違わない⁉と複雑みマシマシで臨んだ当日。夜の部だけ観劇。

結果、てのひらぐるんぐるん返す。最高。
出口を出て呟いた「石川界人の百合ちゃんになりたい…」という寝言…

以下ネタバレ含む感想です。

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原作は未読なので原作ファンの方とは解釈違いで相容れぬ関係になるかもしれないが、ドラマファンとしてはオンエア部分まるっとやってくれたので物足りなさも感じなかった。
全日キャストが違い、どの日も俳優と声優がミックスして組まれている。私が行ったのは
津崎:荒木宏文
みくり:妃海風
風見:石川界人
百合:友近

という組み合わせ。

白ホリのセットに各シーンに合った映像を写して描写する感じは、朗読劇というより普通のお芝居みたいだった。そういう意味では舞台役者組の方が違和感なかったと思う。
オープニングはみくりの脳内妄想劇を描写した某トーク番組のシーンから。これ友近さんいたから便利だっただろうなぁ(笑)ドラマに忠実だった気がする。
舞台前方には椅子が4つ用意され、後ろの壇上に小部屋が2つ作られ、その小部屋が風見と百合のそれぞれの別時空を描いていた。よくできてる…
前方の椅子のうちセンターの2つはダイニングテーブルとセット。これが2人の部屋を描いていて、最初は客席を向いて座っているが、距離感が縮まるときちんとテーブルを向いて互いを見て座る、という流れだった。抱き合うシーンは1つの台本を2人で持つという表現で、実際行わないのが朗読劇らしい。唯一、キスシーンだけは顔を重ねて即暗転、という手法が取られていた。

荒木さんは正直、あんまりイメージなかったんだけど(直前に舞台幽白でコエンマ見てたからかな…)紺のカーディガンにメガネ、顔ちっさいなぁ!という見た目はしっくり。ただ、ちょいちょい噛んでたのが…クレバーな津崎さんのイメージがブレたなぁ、とも。逆に恋愛に対してのポンコツな津崎さんは納得。声が低いので、しっとりしたシーンはとても良くて、コミカルなシーンも先述の「噛み」が功を奏してか(笑)ハマっていた。
妃海風さんはさすが宝塚トップ娘役!というかわいらしさ、そして小賢しさ(この作品のキーワード)がピッタリ。アドリブシーンと思われる観光のシーンも2人の息やタイミングが合っていて(京都に行ってる体でした)その後のシーンとの落差を十分に味わえた。津崎さんじゃないけど、「大好き」の破壊力がすごかった(かわいくて)。
友近さんは元々の(テレビで見る芸達者な)キャラクターの印象が強くて、正直上書きできず…特に名言セリフが多いキャラで、グサグサくる言葉を丁寧に放つイメージなので、友近さんの強さとはまた違う色を感じていたからかもしれない。特に「呪い」の名言、あれはコレジャナイ感が拭えなかった…石田ゆり子さんの印象が強すぎた。でも全体を通しての違和感は少なかった。調和は取れていて、作品としては十分に成立していたと思う。

そして石川界人さん。石川界人くん。推しだから最大限に贔屓目かもしれない。いやたぶんそう。だけども言わせてほしい。これは私の語り場だから。

私の期待を最高の形で裏切ってくれてありがとう!!!!!

クロップドパンツに白地のストライプシャツという爽やかだけど大人とも子供とも言い難い絶妙な衣装に、あの声。そう、あの声。ドラマの風見さんとは違ったけれど十分に風見さんだった…そしてあの台詞…

「自分に欲情しないと思っているでしょう」

…私、死ぬかと思った…自分に言われたわけでもないのに…あの声のそれを聞いて、公演中なのに地団駄踏みそうになった…有楽町マリオンの11階、通路際の席で。萌えるって、悶えるってこのことなのか。「抱きたいと思っているのに」もあったっけ…破壊力でうろ覚えになってしまっている。百合ちゃんと別れた後、台本で顔を隠して「恥ずかしっ…!」という演出が素っぽくて(言ってしまったことが恥ずかしい風見+実際に恥ずかしい石川)これにも絶命しそうになった。声が出そうになった。
百合ちゃんが他人の手本になる生き方を語る時に返した「そんなこと言わないで」にも全面的に降伏。泣きそうになった。たぶん「他人の手本になる生き方」を考えるところが自分に通ずるものがあって。無理してた頃もあったなあと思ったとたんにこれがくる。半泣きでひれ伏せるしかない。この作品、どのキャラクターも憎みきれず愛しい部分があり、風見さんはだんだんと人間らしさが出てくる、クールな部分が剥がれていくのがそれ。その良さが石川界人の声と台詞で存分に感じられた。
また、モブキャラを各人が演じる部分が所々あるのだが、彼の声優らしい演じ分けも良かった。みくりの元彼の強めの「小賢しいんだよ」や、みくりの就職活動の面接官のおじいちゃん風など。

全体を通して本当に満足した。カーテンコールも3回あり、本来なら2回の予定だったようで、2回目のカーテンコールが終わった後すぐに閉演アナウンスが流れたんだけど、拍手が鳴りやまなかったので演者が出てきた感じだった。

唯一残念だったのはやはり「呪い」のシーンかと。全話分を2時間強でまとめるためには端折るのは仕方ないことだとわかってはいるものの、あれは風見さんに言い寄るポジティブモンスターがいて成立するシーンだと思っている。が、そのくだりは一切出てこないので、突然シルエットで登場した女性(声は妃海風さん)に向けて言う。2人の距離感が変わってきてから登場したライバル的存在がいてこそであり、ここは前後の流れが不自然に感じてしまった…友近さんは強めに、呪文を唱えるように話していたけれど、個人的には憐れみを感じて説き伏せる、冷静に話す言葉だと思っていたので、そこも解釈が違ってしまった。作品の雰囲気を壊すほどとは思わないけれど。

演出の三浦さんはロロという劇団主催で、活動の幅が舞台以外でも広くて興味深い方。一度作品を見てみたいなと長いこと思っていた折に見られてよかった。想像力を試されてるような舞台演出っぽさが要所面白かったので、また違った形で見てみたい。あれだけ映像を使った演出…お値段理解…って感じの作品でしたが、お値段以上に満足した。
荒木さんが噛んだことをいじって(「スキップ」を「スピップ」?と言った)その後も引っ張る石川界人を見て、いい座組なのだなぁとほっこり。カーテンコールで真っ先に両手で手を振ってくれたのも愛おしかったです…。

この作品、毎日キャストが変わるので、他の組み合わせも見てみたかった。個人的には石川さんが津崎さん、荒木さんが風見さん、という逆のパターンだったらどうなんだろうなと。パンフレット購入して各日のビジュアル見たけれど、木村達成×壮一帆の風見×百合がむちゃくちゃ好みでした…

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