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(小説)空き地の主

住宅街の真ん中に、その空き地はあった。

持ち主は柴田俊三という。70代。無職である。『こんなところに土地を遊ばせておくなんてもったいない』とまわりの人が言う。怪しげな不動産屋がアパート経営を勧めに来たり、土地を売ってくれと訪ねてきた者もあったが、柴田はみんな断ってきた。

なぜなら、
近所の子供が、空き地で遊んでいたからだ。

学校帰りに子供たちが空き地に入り、虫を探したり雑草をむしったり、女の子が雑草の花を編んで下手な冠を作ったりする。柴田はそんな子供たちを見て満足であった。柴田の子や孫もここで遊んだ。近所の友達も気兼ねなく参加した。
庭ではなく、誰でも入れる空き地であることが重要だった。

しかし、最近になって事情が変わってきた。
まず、子供たちが遊びに来なくなった。

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