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デジタル社債発行プロジェクトに参画しました

こんにちは。Fintertechマネジメントグループの新藤です。

当社が所属する大和証券グループは、下記プレスリリースの通り、ブロックチェーン技術を活用したデジタル社債を発行しました。当社も大和証券グループのフィンテック企業として、本社債発行プロジェクトに参加しましたので、当社が関わった部分を中心に本プロジェクトの目的・背景等について簡単に説明させて頂きます。

【プレスリリース】ブロックチェーン技術を活用した「デジタル社債」発行の実証実験について

今回発行された「デジタル社債」の概要

今回の発行プロジェクトにおいて、大和証券グループは2種の社債を発行しました。

1つ目の「大和証券デジタル社債」では、デジタルコインによる払込み・利払い等を行うことにより、同一ブロックチェーン上でDvP決済と同様の効果が得られるような仕組みを実現しています。

2つ目の「大和F&Aデジタル社債」は、大和証券グループの農業ビジネス会社である大和フード&アグリが大和証券グループ役職員向けに発行したものです。発行体が直接投資家情報を管理できる仕組みとすることで、多彩なサービス(今回は投資家に対し同社の関連会社が生産する農産品を特典として付与予定)が提供可能となっています。

いずれの社債も将来の本格的なSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)実施の際に期待されている効果、

「大和証券デジタル社債」≒既存の手続きを効率化・関連コストの削減
「大和F&Aデジタル社債」≒今までにない多様な商品又は資産形成層にもアクセスしやすい小口化商品の提供

を意識した作りとなっています。またいずれの社債も取引の移転・記録等にはカナダのBlockstream社が提供する「Liquid Network」が利用されています。

上記で述べた通り、両社債とも今後のSTOビジネス展開において意義あるものですが、当社が本プロジェクトで関わったのは「大和証券デジタル社債」に関するデジタルコイン発行の部分ですので、本稿でもその部分に関連した記述が多くなる点はご了承ください。

プロジェクトスキーム図

(出所:2/26付プレスリリース資料より抜粋)

「デジタルコイン」とは

STO実施の際に期待されている決済の効率化、DVP決済を実現するためには、既存の送金システムでは実現困難であり、ブロックチェーン上で移転可能なトークン・コイン等が必要という認識は、多くの関係者の皆様がお持ちだと思います。今回のプロジェクトにおいてもこのような問題意識のもとに、上記図表にある「デジタルコイン」を発行しています。

DVP決済等のために利用できるトークン・コインは、「ステーブルコイン」(性質に着目)とも「プログラマブルマネー」(機能に着目)とも呼ばれますが、今回当社が発行した「デジタルコイン」は、ステーブルコインの文脈では法定通貨(円)担保型ステーブルコイン、機能という文脈では、今回発行される社債の払込み・利払い・買入れ消却のみに利用可能な第三者型前払い式支払手段ということになります。

ここ最近になり、円ステーブルコインについて、海外ではGMOインターネットグループの米国関連会社が発行したGYEN、国内では日本暗号資産市場様が発行したICHIBAやJPYCといったコインが出てきましたが、現時点ではその利用範囲は限られたものです。

また海外で利用が進んでいるドルステーブルコイン(USDC、USDT等)についても、暗号資産取引やDeFiの決済中心であり、STOの決済において利用されているという事例はあまり聞いたことがありません(不動産STOにおいてDAIが利用されたという事例が去年ありましたが)。

今後の国内外におけるSTOビジネスにおいて、普及しているステーブルコインを利用するのか、STO専用コインの組成を目指すのか、CBDCの進捗度合いを考慮しつつその利用を考えていくのか等、どのようなトークン・コインを利用するかは、関係各社色々と模索している段階だと思われます。

Liquid Networkについて

今回のプロジェクトで利用したLiquid Networkは、ご存じの方も多いと思いますが、ビットコインブロックチェーンのサイドチェーンをベースとした発行基盤で、高速かつ秘匿性の高い取引が可能とされています。
6ブロックの承認をもってファイナリティと見なすビットコインメインチェーンと異なり、2つの承認かつ1つごとの承認が1分のため、その取引がブロックに入るタイミングによっては、1分少々で確定に至ります。実際に使ってみて、その速さに驚きました。

まとめ

今回のプロジェクトで発行された「デジタル社債」は、プレスリリースでも明記されている通り、金商法上の電子記録移転有価証券表示権利等≒狭義のセキュリティートークンには該当せず、既存の社債発行の延長上でデジタル技術を活用したものであり、またプロジェクト自体も実証実験に主眼を置いたものです。

昨年5月にSTOに関する改正金商法が施行されて以降、未だ国内において一般投資家を相手とした本格的なSTOは実施されておりませんが、本年は関係各社の準備も整いつつあり、真の意味でSTO元年になる可能性が高いと思われます。

我々としてもその流れに貢献することで、社会に対して新たな価値を提供して参ります。