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NFT普及に必要なこととは?9セグマップを使って考えてみる

こんにちは。Fintertech ストラテジーグループの大島です。

先日Neutrinoで開催された「ブロックチェーンデータで紐解く2019年上半期のNFTマーケット」に参加してきました。
※当日の様子はTwitterで#malphaのハッシュタグで検索すると追えると思います。

そこでは一つの話題として「NFTを用いたサービスの普及」について語られていましたが、『これはマーケティング手法の一つである9セグマップを用いて考えることが出来るのでは?』と思いましたので、少し考えてみることにします。

1.NFT(Non-Fungible Token)ってなに?

そもそもNFTって?ということの詳細は下記のブログで分かりやすく解説されているので詳しくは語りません。簡単に言えば『主にブロックチェーン上で取引される、代替性のないトークン』のことを指します。その性質から著作権管理や唯一性の証明といったところへの活用が期待されていて、最近ではMy Crypto Heroesなどゲームでの活用も目立ちますね。

2.NFTを用いたサービスが普及するための課題は?

そんなNFTですが、先日のイベントにおいては普及への課題としてその「ハードルの高さ」が指摘されていました。現状NFTはETHでしか買うことが出来ません。つまりNFTを買うためには、

①取引所で口座を開設
②本人確認を完了
③日本円を入金
④ETHを購入
⑤NFTを購入

といった面倒な手順を踏まなければなりません。NFTを使ったアプリケーションを利用するには、さらにウォレットの設定が必要なこともあるでしょう。
確かに面倒ですし、相当な動機が無ければそれぞれの段階で離脱率は高いモノになると思います。実際、この業界に身を置く前の自分なら確実に離脱している自信があります。
しかしそこでふと思ったのは、その「ハードルの高さ」は具体的に誰が感じている課題で、どれだけのボリュームなんだろう?ということです。ということでマーケティング手法の一つである9セグマップを用いてNFTを用いたサービスの普及について課題を見直してみようと思いました。

3.9セグマップに当てはめてみる

9セグマップとは『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』の著書で知られる西口氏の提唱する、マーケティング分析手法の一つです。下図の通り顧客を9つに分類し、どの層の顧客を、どのような施策で、どの層に取り込んでいくのかを考えることに利用するためのモノです。

参照:https://markezine.jp/article/detail/30846

さて"普及"≒"利用顧客を増やす"と仮定し、9セグマップ分析をしてみます。「NFTを活用したサービスの普及」は、「ロイヤル顧客、一般顧客、離反顧客(上図1~6)を増やすこと」と言い換えられます。
さらに前述の「ハードルが高い」と感じる顧客は上図のどこに当てはまるのかを考えます。具体的な場面を想像してみると、『マイクリをやってみようとした(既に認知していて未購買)けど、手続きややり方を調べるのが面倒になってやめた』顧客です。つまり「消極的な認知未購買顧客(上図8)」に分類されるでしょう。
※積極的な認知未購買顧客(上図7)はモチベーションが高いため、それなりのハードルも越えるでしょという前提です。
この顧客を「ロイヤル顧客、一般顧客、離反顧客(上図1~6)」に取り込むことが、「NFTを活用したサービスの普及」には必要不可欠だと考えられます。

しかしここで疑問に思ったのは、「消極的な認知未購買顧客(上図8)」は現状大きな影響を及ぼすだけのボリュームがあるのだろうか?ということです。そこで、クリプトゲームのDAU(Daily Active Users)と一般的なゲームアプリのDAUを比べてみたのですが、下記の比率であることが分かりました。

・モンスターストライク:191万ユーザ
(2018年平均 https://az-pastime.net/socialgame-sales2018/)
・My Crypto Heroes:2000ユーザ
(2019/9 https://dappradar.com/)

約1,000:1です。もちろんクリプトゲームの歴史はまだ浅いですから単純に比較するのは酷ですが、それでもまだまだ大きな差があり、認知度が低いということが分かります。
つまり「消極的な認知未購買顧客にNFTを用いたサービスを利用してもらうこと」と同時に、「未認知顧客(上図9)を、まずは積極的な認知未購買顧客(上図7)に持っていくこと」も直近の大きな課題なのではないかと考えます。

4.NFTを用いたサービスの認知度を高めるためには

未認知顧客を積極的な認知未購買顧客へ持っていく手法は諸々あると思うのですが、ここは前述のイベントの中で小澤氏と青木氏が語っていた「目指すのはゲームとしての純粋なヒット」「ブロックチェーンを意識しないように遊べるようにしないといけない」ということに私も同意します。
今後取り込みたいアーリーアダプター、アーリーマジョリティという層は、恐らくその大半がNFTという仕組みには興味ないと思われます。つまり単純にコンテンツとして面白いかどうかで興味を持つし、認知もしていくし、口コミなども広まっていくだろうということです。また、ブロックチェーンや仮想通貨などを前面に出したものとなると、その難しさから「消極的な認知未購買顧客」になってしまうことも予想されます。となれば必要なのは、単純なコンテンツとしての魅力向上(例えば有力なIPやクリエイターとのコラボなど)と、ブロックチェーンを意識させないサービス設計の両立が求められるのではないでしょうか。

そういった点においては、Aniqueというサービスはマスに普及するポテンシャルが高いのではと考えます。

まず進撃の巨人という超有名IPとのコラボを果たしたということは広くマスに訴求できる確かな魅力です。さらに、支払い方法はクレカ払いでありETHを持たなくとも支払えますので、ハードルの高さも存在しません。
(そもそもETH保持者のみに向けたサービスとすると、ターゲットとできる顧客の絶対数が現状少なくなってしまうというデメリットもあります)
Aniqueは超有名IPとのコラボを果たし、支払いのハードルは低く、かつデジタルコンテンツの唯一性の証明にNFTを活用しているというかなり考えられたサービスであると言えるでしょう。NFTの普及を考える上では、非常に参考になる事例です。

5.まとめ

今回の記事ではNFTの普及というテーマをマーケティング手法の一つである9セグマップを用いて考えてみました。結果として「未認知顧客を積極的な認知未購買顧客に持っていくこと」が直近の最も大きな課題であると考え、また、課題解決に必要なキーは「単純なコンテンツとしての強み」「(ブロックチェーンなど)難しさを感じさせないサービス設計」ではないかと考えたわけです。
しかしながら、消極的な認知未購買顧客を一般顧客にする際の「ハードルの高さ」も課題としては見過ごせないものです。この辺りはETH以外でもNFTを購入できるような仕組みやブロックチェーンスマホの普及といったことにも期待したいところです。

先日金融庁が公表したパブコメにおいて「決済機能を持たないNFTは仮想通貨に該当しない(超ざっくり)」ということが明言されました。これは重いガバナンス体制を敷かずともNFTを扱うことが出来ることを意味するものであり、こういった形で公表されたことで、プレイヤーも増え広く普及することが期待できます。
ブロックチェーンがもたらす「価値の移転」をいち早く広める手段として、NFTには今後も注目していきたいと思います。

6.おまけ

実は参加したイベント、80名近い参加者がいたであろう会場に見たところ女性がゼロでした。テーマがゲームに寄っていたのも要因かもしれませんが、女性の目線が業界において極端に少ないということに改めて気付き、人口の半分を市場に取り込めていないことは損失そのものでしかないとも感じました。9セグマップを使っておいて市場を男女の二元論で考えることはナンセンスかもしれませんが、それでもゼロはさすがにと…
逆に言えばビジネスチャンスとも言えるかもしれません。女性が感じている課題や面白いと思えるモノをNFTで解決、もしくは面白さを増幅できるようなサービスを考えられれば、それはまだ世に非常に少ないモノですので、そんなのがあっても面白いのかなとも思ったり。
まぁ自分は男子高出身→理系院卒で男子寮に住んでいたような人間なので、女性向けサービスなんて全然考えられないんですけどね…(笑)