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アンデルセンの目でみてみよう。-第5夕講


日本の教育は生まれ年に沿って、
1年ずつクラスが上がって行きますよね。

今日はデンマークの教育の考え方について
眺めてみることにいたしましょう。

「教育の義務」なら学び方の可能性がひろがる?

日本の「義務教育」という言葉がありますが、
デンマークでは「教育の義務」と呼ばれてます。

「義務教育」はなんらか学校へ行くことが
義務とされてますが、

教育の義務はいわゆる学校へ行かなくても
教育を受ければ義務が守られます。

イメージとしては、エジソンが母親に教育を受けて育った、
あの教育スタイルでしょうか。


デンマークの教育の義務教育期間は

0年生から9年生までの10年間。
(小学校準備0年生
 +小学校1ー6年生
 +中学校1−3年生)

日本より1年長いことになります。


前にお伝えした通り、
義務教育ではありませんから、

親と共に世界一周のヨットの旅に出ても
親が勉強を教えれば
「教育の義務」扱いになります。

ある親御さんたちは数人で
ホームスクールを組織し、
家庭に子供たちを集めて教育したりしています。

もちろん、ほとんどの子どもたちは
公共の学校へ行き、
私立の学校へ行く子供は約18%くらいです。

公立学校は無料です。
私立学校は月4~5万円を保護者が負担することになります。

公共の学校では
低学年部(0年生~3年生)、
中学年部(4年生~6年生)、
高学年部(7年生~9年生)、

そして義務ではなく
選択自由な10年生学級があります。

・第5夕講 「発達に合わせた個々の最大到達点を目指す教育」

月日が流れるのは早いものです。

今年6年生になったはるとくん。

デンマークでいう中学年部に通っている、
はるとに様子を聞いてみましょう。

Chiba:はると、君は6年生になるまで
試験は何回ありましたか?
テストは?
英語は何年生から習い始めましたか?


はると:0年生から今まで試験は一度も
なかったです。
科目ごとのテストが2~3回あったくらいですかね。

試験がない学校は何かに追い立てられることもなく、
やはり、楽しく通うことにフォーカスできます。

もちろん、テストがあっても
何人中何番なんて張り出されることもなく、

人前で100点!0点!と
指摘されるなんてありえなくて、
要は、人と比較されて評価されないのが
日本と違うんでしょうね。


Chiba:日本のお友達は大変なんだろうね。
じぃは 昔むかし、高校生の時、
試験の度に職員室の前の壁に
1番から300番まで名前が張り出されるたので、
ものすごく惨めな思いをしたものだよ。

はると:ということは、
じぃは成績悪かったんですね?
成績の差は人間の差ではないから安心してください!
ヒューマニズムやマイフィロソフィーが大切です!
なあ~んて、生意気でしたかね?

Chiba:ほう!はると、
6年生でそんなことを言える
ようになったのは大したもんだな。

日本では成績の差が人間の差みたいに
為され、人間の平等が否定されてしまう
ことが様々な場面で何歳になっても起きるんだ。

ところで、ずいぶん英語が上手くなった感じを受けたけれど、
いつごろから学校でやっているのですか?


はると:英語は2年生からですね。
文法なんてお構いなしで、最初は
「名前は?」
「歳は?」
「何が好き?」
「何して遊んだ?」
What What Whatづくしの会話ばっかり!

いまは結構話せますよ。
簡単な日常会話くらいへいきです。


Chiba:Oh, I see!
なるほどね。

そういえば、このあいだ、
はるとのおとうさんから
電話があったよ。

「日本では中学校受験が始まる時期なので、
デンマークは進学塾などないのでしょうか?」
って、聞かれたけれど。

はると:えー!!塾!お父さんは
まだ日本のイメージで育てたがるんですよ・・・

Chiba:ははは大丈夫だよ、
デンマークには塾はないから。

でも、なんで塾にいかなければいけないと思う?

はると:学校の勉強がわからない人が
追いつくために、ですかね。

Chiba:私が考えるに、
みんな同じようにレベルに
達せようとするのが、日本。
だから、できないところもとにかく全て100点を目指す。

デンマークは「考える教育」がベースなので、
点数がつけられないものに、
いかに個々の個性や感性を磨くか、
を大切にしている。
だから、その子、その子の発達に合わせた個々の最大到達点を目指す。


はると:確かに。だからクラスに教科書が
五種類もあるのも僕には当たり前になりました。


Chiba:じゃあ、学校ぎらいになる子や、
登校拒否する子もあまりいないわけだね?

はると:そうだなぁ、
でも6年生にもなるといろいろな科目が
難しくなってきて、
勉強するのが嫌になり、
学校が嫌いだという子が出始めたよ。

Chiba:ふむ、それは普通にある話だね。

はると:面白いな、とおもったのは、
学校ではその子たちのために特別なクラスを作ったんだよね。

国語、算数、理科、英語など
難しい勉強はしなくていい、
学校に来て君たちの好きなことをしていいクラス。

例えばバイクいじり、木工作、裁縫、料理などさまざま。

でも先生が朝の会で、僕たちにも同じように話してくれたのは、

「(特別クラスの)彼らが大人になった時、
回覧版や新聞が読めなかったら困るでしょ?
買い物に行ってお釣りの計算が出来なかったら困るでしょ?
だから、勉強が嫌いな子は、嫌いな子なりに、
生活に必要なだけの国語、算数さえやれば良いんだ。」
と、こんなクラスがあれば、
いろんな目的でみんな学校に来るよね。


Chiba: 日本じゃ無理だろうな・・・
だってお父さんやお母さんたちがそもそも、そういう扱いを
承知しないでしょ?
はるとのお父さんだって「塾」の話をしているくらいだから。

はると:でも、僕、みんながみんな
勉強できる子になる訳がないのに、って思います。

勉強が出来なくても、
人は何か得意なものを持っているから、
それを伸ばすようにしてくれれば
僕たちは伸び伸びと学校にいけるんだけどなあ~。

Chiba:確かに、その通りだね。
ところで、はると、来年からは日本の中学校に相当する高学年部に
上がる訳けだけど、何か心配してることでもあるかな?


はると:うーん、特に心配事ってないけど
将来何になりたいか何となくボヤっと考え始めているんですよ。

学校の勉強はあまり宿題もないし、試験もないし。

みんな放課後は町のスポーツクラブに行ってますね、
人気はサーカーとハンドボール。
僕はバドミントンが結構好きですね。

特にハンドボールの男子は、
今年の世界選手権で優勝したから、
プロの選手になりたいと思ってる子がいっぱいいますよ。


Chiba:プロ選手かあ~!夢は幾つでももっていいね。

日本では小学校の低学年生でも塾に行ってる子がいると聞くよ。
デンマークにはその必要性がないということだね。

はると:うん、そうなんですよね。
なんというか、デンマークの先生の多くは
とにかく教えることがバラエティに富んでいて、
「Googleで調べられるものは教育じゃない」
って言ってる先生もいたくらいです。


Chiba:暗記するのはコンピューターに任せて、
自分の頭で考えること、正解がないものを対話するのが、
デンマークの教育、ということだね。

学校の放課後に、ハードなクラブ部活動がないのも特徴だろうな。
クラブ活動は、市のスポーツクラブに任せているということ。
ここは日本の文化と違うでしょうね。

ともかく、勉強もスポーツも、
無理やりするものではないということが徹底しているね。

はると:確かに、学ぶ姿勢やそのやり方は
とても重視されてますが、
結果は個別かなぁ。
さて、いよいよ僕も高学年部に向けて、考えはじめなきゃ!です。


【編集後記:つれづれなるままに】
Sue:デンマークの教育は何に重点をおいているかというと、それぞれの子どもが到達する最大限を目指すということ。
だからこそ、教育を担当する先生のレベルが全国で統一されているし、やはり非常に尊敬される職業でもあります。
ここでは書きませんでしたが、実は0年生クラスから担任の先生や専門教科の先生が、クラスの題材でことあるごとに「性」「ジェンダー」「多様性」については触れていっています。生物学的に、心理学的に、様々です。
一方、日本では様々な「倫理」が存在するので、誰が、どの資格で、どの内容で、とマニュアルのように性教育を取り扱う傾向があるのでしょうが、デンマークでは教える時間が来るのを待つよりも「今が時なり」で教えています。


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