[論文]日本を対象としたSTSの計量分析2本
書誌情報
①吉永大祐. (2018). 日本における STS 研究の展開 科学技術社会論学会予稿集の量的分析から. 科学技術社会論研究, 15, 92-106.
②Ishihara-Shineha, S. (2017). Persistence of the deficit model in Japan's science communication: Analysis of white papers on science and technology. East Asian Science, Technology and Society: an International Journal, 11(3), 305-329.
*今回は手法重視でいきます。
①日本における STS 研究の展開 科学技術社会論学会予稿集の量的分析から
要約
日本のSTS学会の予稿集を使い、地域別割合・参加者数の増減・共著(ワークショップ)ネットワーク・トピックの変遷を分析した。中でも、トピックの変遷を対応分析で追うことが主題であったようで、以下のことが分かった
・全体としてコミュニケーションに関心が移っていく
・コミュニケーションに限定すると、当初はコンセンサス会議などに関心があったが、徐々に教育啓蒙型のコミュニケーションに移ったことが窺る
・新規の著者はジェンダーや倫理などの視座を提供した
著者情報
ポイント
・2002-2016の予稿集が対象
・地方別著者分析は普通に大都市からの人が多いことに加え、震災後の時期は宮城や山形の著者が増えた
・6回以降著者が減っていっている
・対応分析は年と単語(TF-IDFの上位150単語)のクロス集計表で実施
気になった点
・STSが御用学者として批判された文脈で以下の論文が引かれていた
田中幹人. (2016). STS と感情的公共圏としての SNS 私たちは 「社会正義の戦士」 なのか?. 科学技術社会論研究, 12, 190-200.
佐倉統. (2016). 優先順位を間違えた STS 福島原発事故への対応をめぐって. 科学技術社会論研究, 12, 168-178.
・「コミュニケーションという言葉に引き寄せられるように起きており」という表現は適切か?距離の遠さは意味の遠さを反映しているのだから、「引き寄せ」はよくわからない。
・ワークショップ単位でのネットワーク形成は適当か
Persistence of the deficit model in Japan's science communication: Analysis of white papers on science and technology
要約
PESTを政策目標に掲げながらも実情はPUSTが未だ跋扈しているという先行研究を踏まえて、それらを定量的・定性的に分析することを目指した論文。用いられた手法は対応分析・カテゴリの変遷・密度の変遷であり、
①啓蒙主義的なPUS
②STEM教育の起こり+PESTの言及
③PESTの先進的な考えが盛り込まれるも結局PUST
④3.11の影響でPESTへの言及が増えるも結局PUST
ポイント
・②(1970-95)
-テクノロジーアセスメントとかPublic Trust言い始めたけど方法論が伴っていない
-公害問題で市民が科学への関心を持ったことが評価されるがm欠如モデルとして理解された。
-若者の科学離れ←科学の面白さを教える一方向的な教育が加速
-科学者の社会リテラシーに言及されるが形骸化
・③(1996-2011)
-サイエンスカフェとかサイエンスショップとかが実際であんま双方向コミュニケーションはできてない
-科学コミュニケーターとかいう言葉が出始める(一方向的?)
・④(2011-15)
-3.11が起きても国は「理解増進」のスタンスだった。
-ELSIとかRRIっぽい概念がでてきている?
気になったこと
・今、どうなっているのかも頑張れば自力で検証できそう