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買い物によるコペルニスク的展開

かつてオイルヒーターを買った時は、なんてじんわりと温まる、素晴らしいアイテムなのだろう、と感動したし、シャワーヘッドを取り替えた時は、シャワーヘッドひとつでこんなに変わるものなのか、と驚いたのだが、今日私が取り上げるのはそんな大仰なものではない。ものすごく地味なものだ。

最近買ってよかったと思っているものが二つある。一つはアイラップ、もう一つは大葉の苗だ。

まずアイラップ(半透明のポリ袋の商品名のことですね)のほうだが、以前からその存在が気になってはいた。でも私は使ったことがなかったのだ。ポリ袋なんて、スーパーの荷詰め台に常備されている、水分の出るものを包むための袋でしかない、と思っていた。
アイラップが調理に使えるという話は、知識としては知っていた。しかし調理に使えると言われても、調理自体をあまりしないのだから、役に立ちようがないよ、と思っていた。しかしある日、妙に気になって、ドンキホーテの店頭に売っていたアイラップを、カゴに放り込んだのだった。

私は今のところ、それをほぼ一つの用途にしか使っていない。野菜の浅漬けだ。
野菜を切って、マリネ液に漬ける、もしくは塩麹と漬ける。その用途にしか、アイラップを使っていないのだ。
そもそも私は、漬け物を食べつけてはいない。だから、無印良品に売っているぬか漬けの素も、気にはなっているものの、購入には至っていない。
しかし野菜に、ほのかにマリネっぽい味の付いた感じのものとか、漬物というには味が薄すぎる、ほのかに塩麹っぽい味のする野菜を、食べるのは好きだ。しかしそれらは私にとって、漬物ではなくあくまで野菜なのである。

それらを作る時に、これまではジップロックを使うなり、タッパーに直接液を注ぐなりして作っていた。しかしジップロックはアイラップと比較するといささかお高いし、素材が固い。かと言って、ジップロックをケチって、タッパーにマリネ液などを直接注ぐのは乱暴すぎる。味にムラが出るのは避けられない。
しかしそれをアイラップに入れて、適量の塩麹やらマリネ液やらを袋の上から揉み込むだけで、実に味がよく染み込むのである。
これによって、もともと好きだった新玉ねぎを、よりおいしく食べる機会が増えた。これしきのことで、素材に圧倒的に味が染み込むなんて、寝耳に水だった。しかもアイラップは、ジップロックに比べると圧倒的に安い。

そして二つめのお気に入り、大葉も、アイラップに関係してくる。新玉ねぎなり、きゅうりなりと一緒に、大葉をアイラップを使って漬け込むと、実においしいのだ。

私は毎年、ベランダでバジルを育てるのを楽しみにしている。それを主に、生のトマトやら、トマトソースのパスタやらと合わせて食べるのだ。

ところが今年は、気の迷いでバジルの代わりに、大葉を植えてみようと思ったのだ。バジルというのは洋風の大葉みたいなものだ、と昭和生まれの私は、子どもの頃、親に教えられたことがある。だったら今年はバジルの代わりに、大葉を植えてみようではないか。トマトソースに、バジルの代わりに大葉を入れても違和感はないだろうし、トマトサラダも、バジルとオリーブオイルの代わりに、大葉とごま油を使っても大差はないだろう。

そんなふうにして育て始めた大葉は、予想以上に活躍した。前述の通り、きゅうりを漬け込む際のお供にもぴったりだし、冷奴の薬味にもよい。
いざ使ってみると、これまでは育ててなかったので、大葉を使う機会がなかっただけなのだ、ということに気付いた。これまでは、どうしても必要な時以外は、スーパーでわざわざ、高い大葉を買ったりはしなかった。
でもベランダにあればじゃんじゃん使う。所詮は日本の食卓にマッチするのは、バジルより大葉なのだ。これまでは、夏はナスと一緒にバジルを炒めていたものだが、今後はそこでもバジルの座を、大葉が取って代わることになるだろう。手間がかかるので、たぶんやらないとは思うが、大葉の天ぷらも実に美味しい。
大葉が堅くなりがちなのが悩みだ。生で食べても問題ないくらい、柔らかく育てることが目下の課題ではあるが、これまでのところは、大葉の実力に舌を巻いている。

結局あとでバジルも買ってきて、今年は両方育てることになったのだが、ともかく私は大葉の実力を、これまで見くびっていたと言わざるを得ない。

このように、よいものに出会うと、ライフスタイル自体が変化してしまうことがある。物とのそういう出会いは、貴重だ。
アイラップはせっかくだから、漬物以外にもいろいろ使ってみたいと思う。ネットで調べたところによると、アイラップで鶏ハムが作れたり、お米が炊けたり、オムレツが作れたりすると書いてあった。そして今は、アイラッププリン作りが流行っているようだ。
そう言いながらも、物の使い方は一度固定されると、ついそこに固執しがちになるのだけれど。

#買ってよかったもの

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