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【決算】イオン・キュー 24年1~6月期 増収赤字拡大

 量子コンピューター開発のイオン・キュー(NYSE:IONQ)の2024年1~6月期決算は増収・赤字拡大。売上高は前年同期比93.5%増の1896万㌦。営業損失は1億182万㌦と赤字幅が66.6%拡大。純損失も7715万㌦と赤字幅が8.6%広がった。事業の収益力を示す調整後EBITDAは5070万㌦の赤字で、約1500万㌦ほど損失が拡大した。

 通期売上高予想は前回発表から100万㌦引き上げ、3800~4200万㌦とした。売上が予想水準から上振れたほか、メリーランド大学の研究機関から大型受注を獲得した。

 メリーランド大学における情報セキュリティ分野の研究機関「ARLIS」から獲得した大型契約は計4000万㌦規模。今期分としては570万㌦の売上貢献となる見通しで、来期の収益にも貢献する。

 同社はイオントラップ方式の量子コンピューターの開発を手掛けている。超電導型に比べて計算速度が比較的遅いものの計算精度が高いとされている。既にクラウド上で利用できる商用機が公開されている。

 量子コンピューターの覇権を握る可能性がある方式のひとつとして期待が寄せられている。超電導方式や冷却原子方式といった他の技術も実用化に向けて着実に歩を進めており、イオントラップ方式は出遅れ感が否めないが、技術革新は日進月歩であり、まだまだ注目に値する。

 実用化は30年代後半になるとの見方が強く、まだまだ先行きに不透明感がある量子コンピューター領域だが、テンバガー銘柄として今から唾を付けている投資家も少なくない。

 ただ、当然ながらまだ黒字化の目途は立っておらず、今後数年間は業績面の改善による株価上昇効果は限定的だろう。増収するにつれ、それを上回るペースで売上原価や研究開発費が膨れ上がっており、持続可能な経営には程遠い。自己資本比率89.53%、自己資本4億6327万㌦と、財務基盤は強固。

 むしろ、量子コンピューターの実用化をにおわせる定性的な情報の方が株価へのインパクトは大きいだろう。同社はここ最近で「2025年末までに論理2量子ビットゲートの忠実度(計算精度)が99.999% に達する」と発表するなど、量子コンピューターの課題として挙げられる精度向上に取り組んでいる。あとはイオントラップ型が苦手とされる量子ビット数の拡張性をいかにクリアするかが市場評価の鍵を握る。

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