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「書評の仕事」

「書評の仕事」(印南敦史 ワニブックス)

人気の書評家による、タイトル通り書評の仕事についての本。毎日の仕事、収入、書評の技術などについて書かれている。

紙媒体での伝統的な書評と比べて、インターネットが書評を変え、情報提供としての書評に可能性を感じている(22ページ)とのくだりは面白いと思った。どこまで「自分」を出すべきか(31ページ)は情報メディアとオピニオンメディアでは異なるとし、「こう書いたら読者はどう感じるか?」ということは考える必要がある(32ページ)とのこと。編集者から送られてくる見本(献本)に付箋が貼ってあっても、それをはがしてそれは気にせずに書評を書く(56ページ)というのも面白かった。「読者のニーズと担当者がプッシュしたい部分が同じだとは限らないので、それは僕が判断しなくてはならないと感じているわけです」「いずれにせよ読者の立場に立って考えることがいちばん重要だと信じているのです」(57ページ)

「書評を書くために読む場合、本は必ずしもすべてを読まなければならないものではないと考えています」「僕の場合、書評を通じてその内容を伝えようというときには、その本のどこかをクローズアップし、その部分について書くようにしているのです」(59ページ)は、プロもそうしていると知って少し安心した。

「いい書評、ダメな書評」の境界線として「書き手が誠実に、本音で書いていることが伝わってくるとしたら、それは「いいもの」であると判断していいと思うのです」(69ページ)はなかなか深い話だと思った。

「売れる本」「話題になっている本」を読む意味として、「好みと違うからこそ、読んでみることによって気づくこともあるはずだと思っているのです」(110ページ)「簡単なことで、普段の自分が選びそうもない本をあえて選んでみること」(115ページ)なども、自分の読書の幅を広げる意味で大切だと思った。

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