ミラノ第1週 カルチョの国での新生活
1990年代にキングカズが扉を開き、ビバカルチョに夢を膨らませ、中田ヒデが伝説となったイタリアのセリエAは私が初めて夜中に眠い目をこすりながら見た海外サッカーでした。
ミラノにて11年ぶりの共同作業
大学時代の友人が遊びに来てくれて、ものすごくオシャレなスタバなどを見てから大量の荷物をホテルから韓国、インドとパレスチナ人のクラスメイトと暮らす新居へ移動させるのを手伝ってくれました。思い返せば2008年末にも一人暮らししていた大学近所のアパートから実家に戻った時にも手伝ってもらったので、今回は西東京市からミラノに舞台を移して11年ぶりの共同作業。
かつて世界最高峰の舞台だったスタジアムへ
引っ越しが落ち着いてからはミラノ屈指のB級グルメであるルイーニで小腹を満たし、ACミランの博物館があるカーザ・ミラノを経由してからACミラン対サンプドリアを観戦するためサンシーロへ。
カーザ・ミラノではイタリアというよりも世界屈指の歴史を誇る名門ACミランの栄光を紹介していたものの、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)と比較すると良い意味でもっと「見せびらかしても」良いのではと思いました。
マンUでは所狭しとお宝映像や写真を展示しており、ACミランも展示はしていたものの何もない空間が多く、どこか物足りない印象を受けました。
そして我らがキングカズがデビュー戦でバレージとの接触で鼻を骨折したサンシーロへ。購入した席が実はアウェー側であり、過去の暴動などからスタジアムへ入場する警備体制が空港並みに厳しかったので、ACミラングッズを身につけていた友人といた私は別のエリアで誘導されることに。
係員の方を待っていたら同じ事態のクラスメイトたちと再会。ミラノでの授業初日で再会するかと思いきや、スタジアムで再会するというのもサッカー好きが集うFIFAマスターらしいなとほっこりしました。
試合はスコアレスドローで終わってしまい場内は終始ブーイングだったのですが、今冬ACミランに復帰し、この日はベンチスタートだった元スウェーデン代表FWのズラタン・イブラヒモビッチが交代出場に向けてウォームアップを始めた時には場内大喝采。いざ出場した時には場内のボルテージはさらに上がったものの、残念ながら復帰初戦でゴールとはならず。とはいえサンシーロの姿は美しく、その美貌と歴史は決して色あせないので再建途中のACミランの今後に期待しましょう!
試練の2学期スタート
1学期の英国レスターではスポーツの歴史や社会学を学び、ミラノに舞台を移しての2学期ではスポーツにまつわる会計や組織論などを学びます。昼休みがレスター時代の90分とは異なりミラノでは60分なので、節約のため昼食を帰宅して食べられる教室まで徒歩5分という最高の立地に新居を選びました。
3LDKのアパートに4人で暮らしているのですが、毎月くじで部屋を決めることにした結果、韓国人の同級生がリビングのソファベッドで生活することに。最初はハズレくじかと思いましたが、ホテルのスイートルームかと見間違えるほど広々としたリビングでの生活は実は良いものではないかと彼らと話しています。そして私はレスターでの寮と全く同じレイアウトの四畳半な部屋で1月を過ごすことになりました。最も小さな部屋なのですが、住めば都です。
肝心の授業ではイタリア人の先生からいかにセリエAが他の欧州トップリーグと比較すると戦力的にも財政的にも厳しい状況にあるかという説明を受けました。年間予算に対して選手人件費は全体の5〜6割が望ましく、残りの予算を設備や営業活動への投資に使うのが理想的と言われる中、セリエAの多くのクラブは人件費の7割前後を選手人件費に費やしています。
チーム成績に依存している経営状態は「ギャンブルと変わりない」とのことで、イタリアの多くのクラブは経営規模を自助努力で拡大するための投資をできていない状況。これでは欧州の他リーグとの差が広がるばかりなので、先生はクラブの首脳陣に警笛を鳴らしているものの、なかなか響かなず非常にもどかしい現状だそうです。
他にも会計の授業は専門用語がさらに増えて理解が困難でした。とはいえACミランが期末に帳簿を黒字にするために実施したインテルミラノとの取引などサッカービジネスならではの事例を交えて授業が進められるので、これを理解できれば新たな視点でサッカー界を見ることができるのではという期待を胸に頑張ります。
上記の取引はというと、ACミランがインテルミラノに自クラブの所属選手を10数億円の契約解除金で売却し、代わりにインテルミラノに所属する選手を上記金額よりも少しだけ高い値段で購入。これだけだとACミランにとっては赤字取引に見えますが、ACミランはインテルミラノへの選手売却金を全て当期の売上として計上したものの、インテルミラノからの選手購入費は複数年で償却するため、当期の帳簿上では10億円近い黒字を生んだ取引にしました。
目先の経営危機を乗り越えるために上記のようなカラクリが多く発生しているサッカー界。「FIFAマスターを卒業後はサッカー界のビジネスシーンで活躍したいのであれば、そのサッカー界特有の会計上の"仕組み"も理解しましょう」という先生の言葉がズシンと響いた第1週でした。
水の都ベネチアへ
水曜日にクラスメイトたちと「金曜は授業オフだから日帰り旅行をしようぜ」と相談した結果、バスで片道3時間、しかも往復1500円ほどで行けるベネチアへ行ってきました。
昼前には天気も回復し、ゴンドラに乗ったり食べ歩きをしながら街を散策。金曜日ということもあって観光客も少なく快適でした。
さらに連絡船で45分ほどで行けるブラーノ島にも行き、色彩豊かな街並みを満喫。
最高の夕日も眺めることができ、最高のリフレッシュとなりました。ふとミラノ第1週にも関わらずリフレッシュが必要なのかと思うほど授業内容がハードだったので、今後もうまいこと時間を作ってイタリア散策をしたいなと思いました(こんなこと悠長に言っていられるのかと不安でもありますが)。
インテル戦にて日本人留学生の会
そしてベネチアから戻ってきてからは卒業研究に向けた課題をやりつつ、インテル対アタランタ戦をリバプール大学院のフットボール産業MBAに通うMikiさんと、バルセロナにてJohan Cruyff Instituteに通う渡邉宗季さんと観戦しました。
上記写真の通り、ユニフォーム型のプロジェクションマッピングでスタメンを紹介するなど試合前の演出が斬新でした。そしてスタメンを終えてからキックオフまでの間に大急ぎでプロジェクションマッピング用の巨大な白い生地を移動する際には、クラブアンセムを場内で大合唱する演出で観客の目線をピッチから逸らしていました。
インテル戦ではジュゼッペ・メアッツァと呼ばれるサンシーロは上記写真の通りピッチ上の一部が見えない席もあるなど改善点は多々あれど、イングランドで訪れた幾つかのスタジアムでは未体験だった危険な香りもして刺激的でした。
とはいえその危険性がスタジアム内外での暴動に発展し、挙げ句の果てに観客減につながっています。また、当スタジアムはミラノ市が所有しているためインテルとACミランは共に試合開催時の収入を最大化することが困難なため共同出資して新スタジアムの建設に動いています。
このスタジアムで両者が試合を行うのは残り数年とも言われておりますが、果たして両クラブが新スタジアムへ引っ越してしまうと数万人単位での来場者が見込めるイベントを失うミラノ市はサンシーロをどうするのか気になります。
そして私のクラスメイトを交えてオシャレ地区Navigliで夕食をしながら、欧州各地のスポーツ系大学院で学ぶ日本人メンバーと欧州各地で交流できる幸せをしみじみと感じていました。卒業後すぐにとはいかなくても、いつかどこかで共に働ける日を楽しみに引き続きガンバります!
また、Mikiさんと渡邉宗季さんもnoteを執筆中です。スポーツ系の大学院は多くあり、それぞれ特徴が異なります。ぜひご拝読頂きそれぞれの特徴を知って頂けると幸いです。
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