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レスター第10週 英国女子サッカーのバブルと水泳界の改革とeスポーツの中の人

今週は上記1枚しか写真を撮っていなかったものの、イングランドの女子サッカー界の現況をズバッと解説してもらえたり、水泳界を「4年に一度」だけではなく日常的に盛り上がるために新設された大会や、eスポーツ界で活躍されている卒業生の講義などがあり、あっという間の1週間でした。

イングランドの女子サッカー界はバブル真っ最中

昨年のW杯ロシア大会での男子に続き、今夏の同フランス大会で4位に輝いた女子イングランド代表。11月9日(土)に英国サッカー界の聖地ウェンブリースタジアムで開催されたドイツ代表との親善試合には77,768人が訪れ、イングランド女子サッカー界の最高記録を更新しました(ちなみに女子サッカーの歴代最高は2012年ロンドン五輪決勝アメリカ対なでしこジャパン@ウェンブリーの80,203人)。

FA(イングランドサッカー連盟)の公式youtubeアカウントにて当日の模様が以下動画の通り紹介されていますが、日本サッカー協会もyoutubeで独自映像を多く配信しているように自前メディアの充実は人気向上に不可欠な時代になりました。

2011年にそれまでの国内リーグを「Women's Super League(以下スーパーリーグ)」と改めたイングランド女子サッカー界は近年メディア露出も増え、着々と人気が高まっています。しかし、長年イングランド女子サッカー界にコンサルとしてその発展に寄与し続けているNicole Allison氏は講義にて「女子サッカー単体では赤字であるため、お金以外の価値も生み出す必要がある」と警笛を鳴らしました。

ゲスト講師のNicole Allison氏のツイッターアカウントは以下より。

現在、スーパーリーグの所属チームはマンチェスターの両雄やアーセナルやリバプール、チェルシーなど「ビッグクラブ」の「女子部門」であるものの、現在の世論を含めた勢い(バブル)を活用して女子サッカーの価値を高めるだけでなく、男子サッカー界には無い新たな価値を生み出す必要があるとのこと。

そしてスーパーリーグは全試合がネット配信されており、FA登録会員なら視聴できます。さらに男子の国際Aマッチデーでプレミアリーグが開催されない週末には有料放送のBT Sportsだけでなく国営放送のBBCでも注目コンテンツとして取り上げられている程の充実ぶり。

しかし、実はアマチュア時代の方が給料が高かったプロ選手もいるようです。想定以上の速さで盛り上がっている世論に関係者の待遇や競技環境が追いつけていない事が目下の課題とのこと。ふと、これは2011年のW杯優勝後の「なでしこフィーバー」よりも前、1990年代に「大企業」の「サッカー部」からの脱却に努めたJリーグ創成期と共通点が多々あるのではと思いました。

そして女子サッカー大国のアメリカでは女子サッカーリーグが赤字運営の末、解散した過去が何度かありましたがスーパーリーグは「大企業」に成長した「ビッグクラブ」の傘下なので経営的に安定しています。依存しているとも言えますが「親会社の撤退」という90年代後半に相次いでしまったJリーグの悲劇はスーパーリーグでは考え難く、イングランド女子サッカー界の更なる発展は続きそうです。

オリンピック種目の盛り上がりを「4年に一度だけ」にしない

テレビだけでなくパソコン、スマホやタブレット端末でもスポーツ観戦ができるようになった今、チーム間だけでなく、競技間の人気と経済力、そして露出頻度の差が広がっています。欧州サッカー界のメガクラブは自前のアプリやyoutubeチャンネルなどを通じて世界中のファンを囲い込んでいる反面、資金力や人員に劣るチームや競技団体は自前メディアの開発どころではなく上記の差は拡大するばかり。

そして水泳界では国際水泳連盟が主催するW杯が毎年開催されているものの、その存在はあまり知られていません。4年に一度のオリンピック以外では、他の多くの競技と同じく既存ファン以外には注目されていない状況。その状況を打破すべく、2019年に高額賞金の団体戦「International Swimming League(ISL)」が国際水泳連盟との紆余曲折を乗り越え新設されました。

大手テレビ局やインターネット配信局へはもちろん売り込んでいるものの、youtubeを通じた情報発信も積極的に実施しております。しかし自前メディアを通じて発信するだけでは既に競合が多過ぎるので、いかに選手たちをスター化させて、その選手個人のメディアをも有効活用して認知拡大できるかが重要とのことで。根本的には「いかにファンとの接点を増やすか」という事なのですが、その方法は増え続けているので、常にアンテナを張っておく大切さを感じました。

ISLは某国の大富豪に資金面で完全支援されており、アメリカとヨーロッパを拠点とした各4チーム、計8チームが両大陸で10月〜12月にかけてシーズン初年度が開催されています。私は水泳界の大会カレンダー及び選手の契約状況に疎いので評価が難しいところですが、新たな取り組みには大賛成です。

というのもFIFAマスターに出願した際に、今日のスポーツ界における経済力の差がますます広がっている状況について思いの丈を綴ったのでISLの取り組みには共感する点が多いからです。ゲスト講師の方もお金の出所とその永続性については苦笑いをしておりましたが、選手の待遇改善や競技の発展のための機会があるならば行動しない手はありません。今後どのように発展するのか、それともISLは短命で終わってしまうのか今後も注目していきます。

ゲスト講師のArnaud Simon氏のツイッターアカウントは以下より。ちなみに12月20〜21日に米ラスベガスで開催される最終戦に瀬戸大也選手が登録されているチームが進出したので、瀬戸選手が出場するのかも楽しみです。

eスポーツの中の人にとって「スポーツか否か」の議論は無意味

先の茨城国体では文化プログラムとして実施されたeスポーツ。私自身、幼い頃からドラクエやパワプロ、桃鉄、サカつくシリーズに没頭していたものの、「eスポーツ」の「スポーツ」という括りに抵抗がありました。しかしゲスト講師を務めてくださった卒業生の方が「eスポーツがスポーツか否かについて述べているのは外の人だけです」と述べた時に目が覚めました。

そうです、そのような議論をしている間に「中の人」はeスポーツの発展のため日夜奔走されています。多くのスポーツ関連団体やチームが「ファンの高齢化」という共通した課題を解決するため、若年層から圧倒的に支持されているeスポーツとの連携を望んでいます。ならば「スポーツか否か」を議論するよりも、eスポーツ界にとって追い風である今こそ双方にメリットある施策を練るべきとのこと。

とはいえ成長産業であるeスポーツ界の最前線は広告収入に大きく依存しているため、今後は放送権やイベント開催による収入をいかに増やすかという段階にあるそうです。他にも違法配信対策などの法整備や従事者の待遇改善、そして万国共通の「ゲームは健康に悪い」という風評など解決すべき課題は山積みです。それでも”超”成長産業である事実に偽りはなく、ゲスト講師の方も引き続き全力疾走とのことでした(ツイッターアカウントは以下より)。

映画『フォードvsフェラーリ』

イギリスでは11/15に封切りされた映画「フォードvsフェラーリ」を近所の映画館で鑑賞しました。マット・デイモンが出演している以外は敢えて予習をせずに臨んだのですが「衝撃のラスト」を含めて七転び八起きな展開を満喫しました。

今週は写真をほぼ撮っていなかったのでツイッターやyoutubeの引用ばかりになってしまいましたが、いかがでしたか?唯一撮影した写真はカレーを作る際に混ぜているものです。

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近所の韓日中の食材を扱っているスーパーで「とろけるカレー」が販売されており(値段は日本の3倍ほどしますが)、「香辛料は多くの種類を入れるほど美味しくなる」という信念の下、コチュジャンやカレーの素(粉末)、固形スープも混ぜています。

さて、レスターでの生活も残り1ヶ月を切りました。冬休みは渡欧してくれる妻とサッカー観戦をしまくる予定です。1月からはミラノでの生活になるのですが、果たしてカレーの具材と調味料や香辛料はどうなることやら。

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