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ミラノ第3週 戦略論と会計を乗り越えアムステルダムにて先輩訪問とアヤックスのスタジアムツアー

今週の授業はスポーツ組織における戦略の組み方と、会計のツートップでした。予習復習とグループワークの準備などで連日深夜2時まで机に向かっていたものの、前職にて深夜の海外中継が続いた繁忙期を思い出しては気合と根性でどうにかなるもんでした。そして週末はアムステルダムで働くFIFAマスターの先輩を訪問し、アヤックスの本拠地も訪れました。

スポーツ組織の戦略論

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「本講義における”戦略”とは投資した経営資源を回収して再投資できる循環(理論)を組み立てることです」という言葉で始まったスポーツ組織論。

中長期の目標を明確にする。
競合を含めた業界の現状を明確にする。
自社の「できること」と「できないこと」を明確にする。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は限られているので、成功事例を参考にしながら行動の優先順位を明確にする。

自社の状況を徹底的に「明確にする」ことが企業や組織の「存在意義」につながります。そうすると「スポンサー・パートナー企業」や「メディア」、「ライセンス事業」から「競技インフラ」などが必要な理由が見えてきます。それは契約金だけではなく、上記それぞれの先にある「パートナー企業との相乗効果」や「競技の持続的な発展を支えるメディアの力」、「ファンとの接点を増やすこと」や「効率的な運営(コストカットでは無い)」などの本質的な部分を理解することが「経営資源の循環」には必要とのこと。

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そして市場を独占できれば「究極の循環」が誕生するのですが、プロスポーツ業界は「対戦相手」が不可欠なのでそうはいきません。と思ったら「チームはそうだけど、リーグは市場を独占できます」という言葉に「は?」となりました。それはバスケ界だとNBAが、サッカー界だとプレミアリーグが「その競技の世界市場」において圧倒的な人気を誇ることで他国のリーグ(=競合他社)とは比較にならない程の収益構造を成立させています(サッカー欧州CLは日常的なリーグ戦では無いので比較対象外)。

しかし状況を徹底的に明確化し、理論立てて組み立てた戦略ですら8割は実行途中で頓挫するとのこと。これは「戦略」を「実行」する「手段」が時代によって異なるため、常に仲間と状況を共有するという「ホウレンソウ」の徹底が必要という締め(オチ?)には目から鱗でした。

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グループワークでは様々な企業や組織、団体のステークホルダー をリストアップしては、それぞれの「存在意義」について意見を交換したことで理解が深まりました。このグループワークが良い息抜きというのか、クラスメイトたちと「正直よくわかんないけど、こういうことかな」と苦しみを共有しつつ、共に理解を深める過程が楽しいです。

だいぶ割愛しましたが、4日間で駆け抜けた組織論について私は上記の通り理解しました。前職での自身の失敗を多々思い出しては苦笑いしながら受講しつつも、お給料をもらいながら「失敗から学ぶ」ことを何度も経験させてもらえた前職の環境には感謝してもしきれません。

会計の理解が持続可能なクラブ経営につながる

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前週はスポーツ関連企業を読み解く(評価する)ための評価指標をたくさん学びましたが、今週は応用編としてナイキやアディダス、欧州のメガサッカークラブなどの年次報告書に記載されている数字を評価指標の数式に当てはめて評価してみました。

グループワークで私たちは日本代表の中島翔哉選手が所属するポルトガルの名門「FCポルト」とイタリアの強豪「SSラツィオ」の数字を比べることに。夜な夜なエクセルにて数式を組み、数字を打ち込んでみるとFCポルトはマイナス指標ばかりで堅実経営のラツィオとは比較するまでも無い状況でした。俗にいう「一般企業」であればいつ倒産してもおかしく無いのですが、そうはいかないのが欧州サッカー。

FCポルトが経営難に陥れば、誰かが救出してくれます。それは有望な若手選手を他クラブへ売却する際の契約解除金(移籍金)であったり、アメリカや中東、ロシアや中国などなど世界中の富豪が新たなビジネスチャンスであったり、「ポルトガルの名門FCポルトの救世主」という肩書きを手に入れる好機と捉えて登場すると考えられます。

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「もう会計を理解しなくてもいいんじゃね?」と思いましたが、戦略論で学んだ「経営資源を循環」させる理論を組むにはお金の流れの理解が求められます。さもないとファイナンシャルフェアプレーに抵触しないための綱渡りの経営が続き、効果的に投資しては成長を続ける競合との収入格差が広がるばかりになってしまいます。

実際に欧州ではプレミア勢と他のリーグとの収入格差が広がっております。資金力の差が戦力差に現れやすいものの必ずしもそうはいかないのがスポーツ界、と長年言われておりましたが昨年の欧州チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの決勝戦はどちらもプレミア勢同士の対戦でした。果たして今年の欧州カップ戦はどうなるのか。

アムステルダムにてFIFAマスターの先輩訪問

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今週末は昨年9月の英国レスター滞在時に講義のため来校されたFIFAマスター卒業生で、現在はオランダはアムステルダムのMyCujoo社に勤める辻翔子さんをクラスメイトたちと訪問しました。

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その前にアムステルダム中央駅から徒歩15分にある「アンネ・フランクの家」に行きました。私が中学時代に初めて数百ページもの本を読んだのが「アンネの日記」であり、当時の私と同世代であったアンネ・フランクが綴った言葉に受けた感情は今でも忘れられません。

この「アンネ・フランクの家」は第2次世界大戦にてナチスから隠れるために暮らしていた家がそのまま博物館になっています。日本語を含む様々な言語での音声ガイド付きですし、世界各地で緊張状態が続く今だからこそヨーロッパへ旅行される方にはぜひ訪れてほしいです。

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辻さんが勤めるMyCujooはアムステルダム中央駅からフェリーに10分ほど乗った先にあるリノベーションされた建物内にあります。そして社内のビールサーバーで注いだビールを美味しく頂きながら、辻さんの同僚の方々から様々なお話を聞かせてもらう贅沢な時間に夢中になって写真を撮り忘れました。

世界中で愛されるサッカーですが、世に届けられる試合はごく僅かのトップレベルの試合だけです。そうでは無い試合を世に送り出すプラットフォームであるMyCujooがこれまで配信してきた試合映像が今後「お宝映像」に化ける可能性や選手発掘につなげられるなどなど様々な熱い話を聞かせてもらいました。

そんなワクワクする環境で日々闘っている辻さんが雲の上の存在であり、それでも辻さんみたいにカッコいい大人になりたいと思いました。中長期の目標を達成するためにもまずはFIFAマスターを無事卒業せねばです。

アムステルダムを探索しつつ満腹に

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翌日は辻さんにアムステルダムを案内してもらいました。市場で魚やチーズを食べては、お土産用に探していた「ストロープワッフル(キャラメルを薄いワッフルで挟んだお菓子)」も出来立てホカホカのものを頂きました。

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アムステルダムで一番おいしいアップルパイを食べながら辻さんがFIFAマスターで経験されたことを聞かせてもらったり、対外試合で敗戦続きの私たちを叱咤激励してもらいました。

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他にも共に訪れたインド人のクラスメイトが知人に教えてもらったパンケーキ屋さんは天井にティーポットがたくさん飾っておりオシャレでした。もちろんパンケーキも美味しくて、アムステルダムは甘党にはたまらない街です。

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アムステルダム中央駅から南に徒歩3分ほどにある「COPA Football Flagship Store」にはチベット代表や旧ソ連代表のユニフォームが売られているなど、サッカーファンにとっての天国でした。

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他にも故ヨハン・クライフ氏のショップもあり、長袖14番のオレンジ色のロンTを購入。平日は徹底して節約していて助かりました。

ヨハン・クライフ・アレナのスタジアムツアー

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旅の締めは辻さんが提案してくれたヨハン・クライフ・アレナのスタジアムツアーに参加したのですが、最高でした。

私は故ヨハン・クライフ氏のプレーは映像でしか見たことが無いですし、同氏が率いたバルセロナもリアルタイムでは見れていないのですが、高校時代に体育科の松本先生に「ヨハン・クライフ 美しく勝利せよ」という本を紹介してもらって読んで以来クライフのファンです。

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2016年にヨハン・クライフが亡くなり、同氏が選手としても監督としても数多くの伝説を残したアヤックスの本拠地は「ヨハン・クライフ・アレナ(アリーナ)」と名づけられました。

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スタジアムツアーはアウェー側のロッカールームから始まりました。先に英語で、続いてオランダ語で案内するほど海外からのツアー参加者が多いのと、オランダでは多くの方が当然のように英語を操れることに驚きました。

そしてガイドの方から当スタジアムは政府(アムステルダム市?)が所有するため、アヤックスは試合開催の度に使用料を支払っており、ガイドさんも市の職員とのことだったのですが「アヤックスのために働いているような気分で誇らしいよ!」という言葉が熱かったです。

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ホーム側、つまりはアヤックスが使用するロッカールームは簡素なアウェー側とは異なり上記の通り洗練されていました。ガンバ大阪の本拠地パナソニックスタジアムを思い出しましたが、実は欧州チャンピオンズリーグ決勝や国際試合を開催するためにはアウェー側にも一定の設備水準が求められるため、アウェー側を極端に質素な内装にはできないとのこと。

また、ヨハン・クライフ・アレナは欧州で唯一開閉式の屋根が設置されたスタジアムであるため(オランダ唯一だったかも?)、サッカーの試合以外にも音楽ライブなどのイベントも多々開催されています。

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チームベンチはもちろんリクライニング可能で座り心地も最高でした。

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VR体験コーナーでは、ピッチサイドから小野伸二選手がかつて所属したライバル「フェイエノールト」との「デ・クラシケル」におけるスタジアムの熱気を体感。

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最後のトロフィー展示コーナーでは新旧様々な映像を交えてアヤックスの輝かしい歴史を女子チームと共に紹介していました。ここでもACミランはアヤックスよりも多く欧州王者に輝いているので、その魅せ方には多くの改善の余地があるのではと思ってしまう程アヤックスの魅せ方は洗練されていました。

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スタジアムツアーの締めはお約束のグッズショップ。アヤックスもプレミア勢と同じく子供用のグッズが豊富で、アヤックスファンとしての英才教育の土壌が整っている印象を受けました。

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インド人とボツワナ人の同級生と訪れたアムステルダム旅行は1泊2日なため駆け足となりましたが、辻さんのおかげで最高の2日間になりました。

FIFAマスター受験のきっかけだけでなく、受験時には何度も力を貸してくださった辻さん。いつになったら私が辻さんの力になれるのかと思ってしまうほど辻さんの大きさを感じたアムステルダム旅行でした。

グループ課題とテストが続々と迫っているので、まずは勉強をガンバります。

石丸サッカー放浪記

東京大学ア式サッカー部所属で現在は大学を休学して世界中を旅している石丸さん。現在はブラジルにいるそうで、昨年9月のレスター訪問を含む旅の記録を引き続き更新されています。こちらもぜひご拝読ください。

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