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レスター第6週 マンCとクリケットの聖地を訪問したり

今週はフットボールビジネスに革命を起こし続けているマンチェスターシティや、クリケットの聖地ローズを訪問しました。筆記試験もあり、教室での授業は皆無という珍しい1週間でした。

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月曜日に訪問したマンチェスターシティのホスピタリティサービスは世界中の同サービスを参考にしており、中でもF1のアブダビGPを参考にしたホスピタリティルームのソファの座り心地は最高で、グラスも当然のように全てピカピカ、さらには世界中のお酒も用意されていました(日本のお酒も2種類)。

シティフットボールグループ(以下CFG)の世界戦略において現在はアフリカやインドに注目しており、教育分野にもサッカーを通じて注力するそうです。また、先週は米国メジャーリーグのメジャー球団とマイナー球団の関係についての講義を受けたので、CFGがそのスカウト網を有効活用して選手を獲得してCFG傘下クラブで育成するシステムはアメリカのメジャー球団とマイナー球団の関係に似ているなと思いました。そして今後はCFGやレッドブルグループに次ぐ、新たな組織は生まれるのか注目しています。

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エティハドスタジアムの全54,500席の内、5,400席(約10%)のホスピタリティシートでチケット収入の約3分の1を売り上げているとのこと。マンUやレスターと同じくホスピタリティに注力しており、試合日にはホスピタリティ担当のスタッフが約550人、OBも12人が活躍しているそうです。他のクラブがホスピタリティにどれほどの人員を割いているのかは未確認なので比較はできないのですが、ホスピタリティが貴重な収入源であることを改めて確認できました。

また、年間シートの販売枚数を減らすべきか検討していることに驚きました。娯楽やライフスタイルの多様化に伴い(と仮定し)、年間シートを購入しても全試合を観戦できない方が増え、外部のチケット流通サイトを通じて法外な価格での取引が増えていることが原因だそうです。ひとまずの対策としてクラブ公式アプリで年間シート購入者が観戦できない試合のチケットを転売できるようにしたものの、今後は年間シートの継続条件としてスタジアムでの観戦回数もしくは観戦できない試合を公式アプリ上での転売実績を導入すべきか検討しているとのことでした。

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そして最も感銘を受けたのは事業評価にて数値化を徹底していることです。スタジアム内外の導線における移動時間、飲食物を購入するための待ち時間、さらには歓声までも数値化して多方面から「興行」を評価しているのです。他にはライバルのマンUや他競技、さらにはエンタメイベントの催しだけでなく、安全面の管理方法も徹底して取り入れている姿勢にはさすがだなと思いました。

その後ロッカールームで全員が記念撮影に勤しんでいると、スタッフの方から各選手のロッカーに掛かっているユニフォームを外してほしいと言われて上記写真の通り同級生が外してみると・・・

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粋な演出にクラス一同がポカーンとしました。以下動画も作成したので、もし良ければご参照ください(音声あり)。

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アカデミー関連施設内は撮影NGだったのですが、

世界最高のクラブとなるため、アカデミー生は世界中からスカウトし、住居、教育、食事、トレーニングなど全てをCFG負担で提供する。
スカウティングを効率化するため、積極的にアカデミー年代の大会を開催する(招待チームの旅費などをCFGが負担するかは未確認)。

とのことです。ただし、育成施設にこれほどの費用を注入する背景には、同費用がファイナンシャルフェアプレーには含まれないことが理由なのではという外部からの批判もあります。とはいえ女子チームへの注力も含めてCFGがサッカー界のパイオニアとして新たな可能性を切り開いていることは事実であり、講義をしてくださったスタッフの方々は皆、「サッカー界のパイオニア」であることに誇りを抱いていおり素直にカッコいいと思いました。

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マンチェスターでは一泊し、次の日にプロ選手協会や国立サッカー博物館を訪れたものの、最後に駆け足で寄ったレトロなサッカーユニを販売しているお店で宝探しが始まりました。自国のチームのユニフォームを探す者もいれば、珍しい国のシャツを探す者も。

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私はJリーグ元年、1993年ガンバ大阪のアウェーユニを発見し、1万円ほどしたので日本にいる就寝直前の妻に購入意思を確認したところ数秒でGOサインをもらえたので購入。多くの同級生がこのレトロ感に感銘を受けてくれた時に改めて素晴らしい同志に恵まれたと再認識しました。

ちなみに1993年ガンバ大阪のホームユニもあったのですが、4万円ほどしたので妻に確認するまでもなく諦めました。

そして木曜日は筆記試験。3時間で全12問から3問を選択しての英作文だったのですが、私は以下を選択し、回答しました。なお、先生からは事前に歴史の移り変わりや現状の課題などを含めた広い視野で書いてほしいと言われました。

1. スポーツクラブや大会の博物館、スタジアムツアーはクラブや大会にとってどのような価値をもたらすのか。

博物館やスタジアムツアーを通じてクラブの歴史や魅力を伝え、チームへの愛着を高める(=安定した収入を確保)。ただし、物理的な理由で誰しもが博物館やスタジアムツアーに気軽に参加できるわけではないので、通信環境を含む技術革新によってVRで楽しめるサービスが今後は求められる。

2. アメリカンスポーツの特徴と、その特徴を生かしてアメリカンスポーツはどのように発展したか。

アメリカのメジャースポーツと欧州サッカーはリーグの構造などは大きく異なるものの、シーズンオフには世界中でツアーを行いマーケット拡大(チームのグローバル化)に努めている点で共通している。しかし、これはツアー先の国内サッカー人気の低下にもつながる恐れがあり、グローバル化ではなく植民地化の危険性が潜んでいる。

これは話が飛躍し過ぎた暴論なのではと不安でしたが、思い切りました。

3. 国家が外交の手段としてスポーツをどのように活用したか。

1934年イタリアW杯と1936年ベルリン五輪はファシズムの発展を促し第二次世界大戦という悲劇につながった悪例であり、2008年の北京五輪は国家の発展を世界中に発信した、などについて述べました。とはいえ先の2問で想定以上に時間を使ってしまったため、3問目は不完全燃焼。

試験後は完全オフだったので、同級生たちと昼から近くのパブで打ち上げをして寮に戻って爆睡しました。

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金曜日にはクリケットの聖地ローズ・クリケット・グラウンドを訪問。200年以上の歴史を誇る同地では多くの名勝負が繰り広げられましたが、サッカー界と同じく若年層のファン獲得が課題とのこと。そのため2020年夏に新たな競技ルールかつ38日間という短期間で開催されるThe Hundredという大会のプレゼンには痺れました。

20歳前後の方々をインタビューなどを通じて徹底的に分析し、どうしたら若者がクリケットにさらに興味を持ってもらえるか考え抜いて競技ルールなどを策定したThe Hundred。各チームの所属選手はイギリスでは馴染みのないドラフト会議で選抜し、ドラフト会議のテレビ中継も実施したようです。

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伝統と格式に溢れるクリケット界の新しい取り組みに対して、すでに多くの賛否両論が発生しています。しかし、それは興味関心を抱いてもらえている証拠でもあるので今後は試合会場への誘導、そしてThe Hundred閉幕後の通常のリーグ戦への集客へ向けての策も練っているとのことでした。

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週末のサッカー観戦は、1970年台後半に2部から1部に昇格して即優勝、翌年には欧州王者に輝き、さらにその翌年には欧州連覇を達成した古豪ノッティンガム・フォレスト戦(現在は実質2部のチャンピオンシップ所属)へ。レスターから電車で30分で行けるのですが、なんとスタジアムに向かう途中でスタジアムから最寄り駅へ戻る方に試合は雨天順延と知らされました。

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スタッフの方に話を聞いたところ、前夜からの大雨でピッチコンディションが想定以上に酷く、さらには先の写真の通りスタジアムは川沿いにあり、水位が上がってきているため2万人以上を見込んでいた来場者の安全確保のために順延を決断したとのこと。数年に一度の出来事と言われたので、むしろ貴重な経験ができたと気持ちを切り替えて寮に戻って同級生たちと週末のビールタイムを楽しみました。

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寮の近くのパブでプレミアリーグを観戦しながら1杯目。試合後にレストランへ移動してフィッシュ&チップスと2杯目、3杯目。パレスチナ、オーストラリア、フィリピン、韓国、日本とアジアンな集いでスポーツから政治、さらには伝統文化や結婚についての話題で盛り上がりました。

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日曜日はレスターの古豪ラグビーチーム、レスター・タイガースのボランティアに2度目の参加。午前中は配布物の準備をし、午後には私とパレスチナ人の同級生が共に前職がメディア関係だったので広報担当者の担当業務を見学させて頂きました。

同クラブの試合は先月同級生たちと観戦し、さらには課外授業の一環でも訪れましたが、試合日に多くの方々が行き交う現場はやはり違います。また、前職では取材する側として現場を訪ねていましたが、広報担当者がどのような体制、視点でお客様や取材陣を受け入れているのかを学びました。

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レスター・タイガースは多くのボランティアや学生スタッフに支えられています。近隣の大学でメディアを専攻している学生が、インターン生としてチームのSNSで発信する動画の撮影や編集を担当していることには驚きましたが、彼自身にとっても就職活動でのアピールになるので一石二鳥とのこと。

本日同行させて頂いた広報担当者も超マルチタスクで大変とのことでしたが、だからこそ私の経験から何か役に立てることを見つけたいと思いました。とはいえ平日は授業と予習復習で精一杯なことも事実。多くの発見があったと同時に、歯痒さも感じた週末でした。


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