ブリザードで揺れる基地

会えない家族

#10年前の南極越冬記  2009/7/7

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

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昭和基地はいまベビー・ラッシュだ。先月のドクターに引き続き、昨日は定常観測隊員の元に日本に残してきた家族から、無事に男の子が産まれたという嬉しい連絡が入った。南極で父となり、少し照れ臭そうに酒を飲むその横顔は、喜びと安堵でいっぱいのように見え、周りにいる僕らまで幸せな気持ちにさせてくれる。独り身の僕にはその気持ちは分からないけれど、妊娠した奥さんを日本に残して自分が南極に来ることに、きっと色々な心配事もあったのだと思う。日本にいる奥さんだって、すごく不安だったに違いない。

今日は七夕。晴れた日に昭和基地から見る天の川は本当に綺麗だ。でも可哀相だけれど、ここ南極では七夕の日に織姫と彦星は出会う事はできない。織姫は地平線の下に隠れてしまって、彦星だけが南極の空に独り残されてしまう。昭和基地は今日もまだブリが続いている。七夕の日もブリか・・なんて思ったけれど、まぁ案外この方が良かったのかもしれないな。

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