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南極経由、宇宙行き。|10年前の南極越冬記

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2009-10、南極の昭和基地で越冬生活を送っていた当時、書き綴っていた紀行文。それらを10年が経ったのを機にまとめたものです。noteの予約投稿機能を使って、当時の日付から10… もっと読む
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2020年3月の記事一覧

遠征ひと段落

#10年前の南極越冬記 2009/10/10ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 昨日9日ぶりに昭和基地に帰って来た。リュッツ・ホルム湾の奥にあるスカーレンという沿岸露岩帯での観測旅行の帰りに悪天でラングホブデで足止めを食い、昨日も地吹雪の中で行きの雪上車のトレースを辿りながらの帰還となった。 今回のスカーレン旅行をもって、この一ヶ月半続いた連続野外生活もようやく一段落。野外での気の抜けない生活、数日間基地に戻って

ふぬけ

#10年前の南極越冬記 2009/10/25 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 1ヶ月半の野外連チャン生活が落ち着いてから約2週間が経った。長い間基地を留守にしていた分、51次の受け入れ準備や持ち帰り物品の整理、観測データの整理、執筆の依頼など色々と仕事が溜まってしまった。加えて長く続いた緊張生活から解放された反動からなのか、少々フヌケのような状態になってしまったせいもあり、この2週間はちょっとばかり気持ちのコン

雲の時間

#10年前の南極越冬記 2009/10/30 ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。 ◇◇◇ 南極は春から夏へと季節が変わりつつある。日照時間は日に日に長くなり、あと一ヶ月もしないうちに白夜になる。気温がまだ低く日射量も多い今の時期は、オゾンホールが大きくなり地上に降り注ぐ紫外線量も増える。一日外にいるとすぐに顔が日に焼けて黒くなるし、うっかりサングラスを忘れたりすると目が痛いし涙は出るし大変な目に遭う。曇っていて太陽が出てい