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Account Based Marketingことはじめ(最近聞くABMってなんなんや)

2018年頃からよく聞くようになったABM(Account Based Marketing)ですが、従来型のマーケティング業務で良しとされている会社では何がABMなのか、会社にとって何がメリットなのか、なんとなくやるべきだということは分かっていても、営業もマーケティングも両者ともよくわからずふわっと考えているフシがあります(少なくとも僕の周りでは)。

ABMはその名の通りAccount(ターゲットとする企業・顧客)をベースにしたマーケティングですが、中にはマーケティングはロジ周りを調整する人になってしまうというケースもあるようです。もちろんマーケティング担当者にはどこの業者を使うと良いかなどの知見はそれなりにありますから、それでもいいかもしれませんが、それでは結局本来の意味でのABMは実現できないと思います。

上記のようなモヤモヤ感を持っていたのが2018年くらい。2019年暮れくらいになってようやくABMとはなんぞやという像が鮮明になってきた感じがするのと、言語化できていなかったことの言語化をするためにスライドを作成したので、その解説文章を書きたいと思います。

ABMとは何か

ABMにもいくつかの種類があり(One to One, One to Few, One to Many※)、その種類によって狙いや施策の打ち方が変わってきます。そのため、ABMは2010年前後から米国を中心にその考え方が芽生えたようですが、ABMを提唱するマーケティングコンサルティング会社によってその定義は異なるようです。

※これらの種類については追って説明しようと思います。(→こちらの記事に書きました)

日本先駆的にABMを提唱しているシンフォニーマーケティングの庭山一郎氏による書籍『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』では、以下のように定義しています。

全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売り上げ最大化を目指す戦略的マーケティング

普通のマーケティングであっても、売り上げ最大化を目指し、そのために認知度をあげ、需要を作るというのがマーケティングの使命だと思う人も多いはずです。では、普通のマーケティングとABMは何が違うのでしょうか?

※ここでいう普通のマーケティングは、ファネルマーケティングで、ブランディングなどの認知向上だけに絞った考えではないことを付記しておきます。このファネルマーケティングについては、以下を見ていただければなんとなくわかるかと思いますし、こちらの記事でもその元になる図がありますので、参考になさってください。

ABMのターゲット

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ABMでは、複数社にターゲットすることもありますが、最も極端なのが1社にフォーカスするというものになります。普通のマーケティングでは、複数の企業に属する複数の個人、という「個人」に着目します。担当営業がいようといまいとどの企業に属しててもいい、というように言ってもいいかもしれません。普通のマーケティングでは以下のような情報に注目します。

・その人は予算執行できる役職についているのか?
・その人は製品にマッチする部署に所属しているのか?

そのため、予算執行できる役職であっても、そもそも予算金額が少ないような企業に属している、といった情報を漏らしていることがあり、いざ営業がフォローしてみても、提供する製品の予算では足りずに失注するということも起きがちです。

一方で、ABMではマーケティング活動をする以前からターゲットとするアカウント(企業・顧客)を決め、活動をします。既にターゲットとする企業(もしくは業界といったほうがいいかもしれません)を理解しているため、適切なメッセージを投げ込み、予算執行権限のある人にアプローチし、見込み顧客化するということが比較的かんたんにできるようになります。

ABMのアプローチの仕方

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ABMは普通のマーケティングと比較して、”Flip the Funnel(ファンネルをひっくり返す)”モデルだと言われることがあるそうです。もしくは、普通のマーケティングは定置網漁で、ABMは銛でつくように案件を作る活動だという比喩も使われています。

上記の図に書いてあるとおり、普通のマーケティングでは、認知を作り、認知された人に学習させ(他の製品との比較や、技術的な習得、自社への導入を検討させるなど)、その中から見積もり依頼がくるという形で、Funnel(漏斗)という言葉に現れる通り、認知が最大母数で徐々に絞られて、案件ができるという流れになります。認知を作るための活動、学習させる(Nurtureする)活動など多岐に渡りそれぞれのFunnelのステージにおけるコンテンツが不足していると、穴ができてしまい(離脱して検討をやめてしまう)、なかなか案件ができないということが起きやすかったりします。また、認知を継続的に作る、継続的な学習を支援するためにも多くのコンテンツが必要となるので、それなりにターゲットが明確でないと闇雲な活動になりかねません。

一方で、ABMはFunnelをひっくり返したような考え方になります。図に書いてある通り、まずターゲットとするアカウント(企業)を選定し、そのアカウントにマッチしたコンテンツなどを打つことでNurture活動を行います。その後予算執行権限のある人が興味を持ち、営業が詳細説明を行い、見積もりを提示するという形で、普通のマーケティングにあった「この人は機が熟しているので営業フォローすべきでは?」というIdentify(特定)のステップが比較的不要になります

ABMの特徴

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アプローチの仕方にも書いてなんとなくわかるかと思いますが、普通のマーケティングとABMには向き不向きがあります。

普通のマーケティングはどちらかというとInbound Marketingという言葉で表現されるような領域、顧客自身が情報を探し、学習し、セルフサービスで購入する、といったような製品価格が低く個人でも購入できるようなものにマッチした活動です。

また、特定の業種や企業規模に特化せずにあらゆる企業(個人も含め)に利用できるような製品であるために、多くの人に認知されることがまずマーケティング活動として重要になってきます。

なお、この比較は極端なため、普通のマーケティングであっても、企業や製品のステージに応じてターゲットを設定し、そのターゲットに向けたメッセージが重要です。

ABMは、営業(プリセールスエンジニア)の介入が多くのケースで必要になるような複雑な製品にマッチした活動と言われています。複雑な製品のため、製品そのものの理解に時間を要し、金額もそれなりに高めに設定されているため、予算執行にあたり稟議を起こしたり、承認に時間がかかったりするケースも多数です。それを営業が後押ししてあげる必要があるような製品を扱う場合にはABMが適していると考えています。

このスライドでは、受注までのスピードが短いと書いていますが、営業にパスしてから受注までのスピードが短いというのが理想的な像であると理解ください。なので、ABMにおけるマーケティングサイドの活動としてはおそらく1年くらいかかるケースもあるでしょう。大手企業だと、予算は半年に1回もしくは、1年毎に設定されてなかなか変更は許されないということがほとんどのケースです。

まとめ

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スライド&解説文章で簡単にまとめてみましたが、全体を表でまとめると上の図のようになるかと思います。まだまだ複数の観点のある領域なので、こんなにシンプルに纏められるようなものではないと思いますが、まずABMってなんなのだろう?と思っている人にご参考になればと思います。

普通のマーケティングをやっている人で、Funnelやターゲットを明確にしている人にはABMってなんか言葉やちょっと表現の仕方が変わっているだけ、という気もしなくもないです。僕もその一人で、基本的には、施策や活動のやり方が変わるだけで、「マーケは営業の仕事を極力効率化するもの」と思っています(ここにそれに近いことを書いています)。

この記事では、ある程度なぜABMをやるべきか、ということにも触れていたとは思いますが、もう少し具体的になぜABMをやるべきか、そして、ABMの種類(One to One, One to Few, One to Many)についても書いていきたいと思います。→こちらの記事に書きました

参考にした情報源

本記事は、以下の書籍やブログ記事を参考にして上記の資料を作成しました。

ABMに関するNote投稿


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