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オンライン指導アプリが伸びない理由

2015年くらいに一時期話題になり、数社がオンライン指導ができるアプリをリリースしました。メディアとしても話題になることでもあり、スポーツ指導の世界にも新しい波が来るような盛り上がりをしました。

しかし、2020年となった今、あまりオンライン指導というものがそこまで広まっていません。これだけスマートフォンという便利なデバイスが誰もが手にすることができて、簡単に情報のやり取りができるようになったというのに広まらないのはなぜなのでしょうか?

私自身、かなり早い段階からオンライン指導アプリを知人の社長からの紹介でサービスを提供することができました。しかし、いざ使ってみると課題が山積。今回はこのオンライン指導アプリの課題点と、オンライン指導の利用方法のコツをお伝えしたいと思います。

また、今年からオンライン指導をアプリを使わずにスタートしました。このあたりの実感も含めて伝えたいと思います。

1,オンライン指導は精度が低くなる

なぜ、オンライン指導が流行らないのか?それはオンライン指導は指導の精度が低いからです。最初に答えを言ってしまいます。もう、これに尽きます。

しかし、実際に面と向かってマンツーマンで指導するのとオンラインでマンツーマン指導するのとでは、オンライン指導のほうが精度下がるの当然じゃないですか?って皆さん思うと思います。そうです、当たり前にそうなんです。しかし、問題はオンライン指導アプリを宣伝する側に問題があります。それは・・・

自宅で手軽に、オンラインで対面指導のようなパーソナルトレーニングを受けることができます!

こういう謳い文句で、ほとんどのアプリが宣伝してるんです。そう、対面指導と同じレベルの指導が受けられますよ!と・・・。不可能です。どうあがいても不可能です。

ですが、サービスを受ける側は宣伝でそう謳ってるんだから大丈夫でしょ!と思います。大衆心理はそういうものです。しかし、サービスを提供する側としては非常に困った問題です。同じレベルを提供しないとクレームになる可能性がありますから、なんとかしてオンライン指導の精度を上げようとします。ここに無理難題が出てきます。

2,対面とオンラインの違い

対面指導とオンライン指導は何が違うのか?そして、その違いを知らないとオンライン指導を広げることはできません。それはどういうことか?そのためには指導におけるコミュニケーション心理学とでも呼ばれるものを解説していく必要があります。難しく語らず、わかりやすくこの辺りを解説していこうと思います。

人がなにか情報を自分の中に入れて、処理するには3つの経路があります。

1,視覚(目からの情報)
2,聴覚(耳からの情報)
3,体感覚(全身で感じる触覚や刺激など)

これら3つの情報を元に自分の中で処理して自分の知識へと変えていきます。指導の現場ではこの3つをフル稼働して指導する相手へ的確に情報がはいるように見本を見せたり、説明をします。いい動きができたときは「そう!その動き!」など適切な声掛けをすることで理解の手助けをしていきます。時には、身体を直接動かして、こういうタイミングで動くと手取り足取り教えることもあります。こうして複雑な情報のやり取りを適切な伝えるための工夫が指導の現場では行われています。そして、上手な指導者であればあるほどこれらの使い分けに卓越しています。

カンの良い方は、もうこの時点でわかると思います。オンライン指導では基本的には「視覚情報」での指導がメインとなり、聴覚や体感覚での指導ができません。「聴覚情報」からの指導も可能ですが、タイムリーにその動きがいい!みたいな指導はできません。ドローンを使って映像と音声のやり取りがタイムリーにできるとかなら別ですが、そんな準備はほとんどできません。

つまり、3つを情報を使って指導すべきところを、1つの情報で3つの情報を使って指導するときと同じ成果を出さねばならないという無理難題がオンライン指導アプリの過剰宣伝により指導者に課せられるのです。

これは、指導する側は普段の指導の少なくとも3倍の労力がかかります。
※実際は3倍どころか5倍くらいはかかります。

これが、オンライン指導が広まらない一つの要因です。

3,WEBだと格安になるという心理

もう一つ、オンライン指導が広まらない理由が価格の問題です。ウェブを通してサービスを受けると安くなるという心理がサービスを受ける側には、ほぼ確実に働きます。つまり、指導料金が普段より安くなるということです。2割位は安くなるでしょう、多いと半額くらいになりそうです。

しかし、前述したように指導する側は普段の労力の3〜5倍かかります。それなのに最悪半額近くで指導しないとならないとなると、どう見ても割に合いません。こうなってくると指導者はあきらかに手を引いていきます。実際に私がオンライン指導をしばらくしてこなかった理由はこれです。

アプリ事業者は空いた時間にできるので副業的に使えばいいと言われるのですが、実際のユーザーはしっかりとしたコミュニケーションを求めますので、そうなってくるとアンマッチです。

この事業者の認識、指導者の認識、ユーザーの認識がそれぞれ合致していないことがサービスが広がらない大きな理由だと私は考えています。

4,オンライン指導の秘訣

オンライン指導はそもそも視覚・聴覚・体感覚のうち視覚しか基本的には使えないことを前提にテキストコミュニケーションでLINEのような短いコミュニケーションで軽めの情報を多くやり取りすることがポイントと言えます。

高い効果を出すことをコミットするわけではなく、小さな課題や悩みを解決しますというお悩み相談所のような形でオンライン指導を行うことでユーザーと指導者の間での認識の違いは限りなく少なくなります。

さらに、コミュニケーションの回数が増えていくとお互いの人としての理解が増していきますので信頼関係の構築も自然と行われます。今までのオンライン指導アプリだとこの信頼関係の構築の前に指導が始まる感覚があり、この課題もお悩み相談所としてのオンライン指導は上手くカバーしてくれるように思えます。

この少しフランクなコミュニケーションの中での指導くらいだと指導者側のの負担も大きくなく、ユーザーも安い価格での提供でも納得できる範囲を実現できるはずです。

実際に今月からこの形で1ヶ月3,000円で相談し放題のオンライン指導をスタートしてみましたが、この形は結構いいなと思っています。小さな変化の繰り返しがスポーツでの成長のコツでもあるので、こうした指導の接点が多いことはかなりいい指導になるなと感じています。

5,最後に

こうした、サービスの流れを専門的にはUI(ユーザー・インターフェース)やUX(ユーザー・エクスペリエンス)と言うのですが、これらをしっかり想定してサービスを作らないとやはりどこかで歪みがでてきます。

ユーザーの属性と背景にある知識量や、それにたいするアクション、そしてサービスの内容の性格とユーザーの属性を一致させるために様々な想像力とそれに対する工夫が必要となってきます。

前回の記事である「フラット接地の功罪」もある種ではこのUIとUXの設計で考えるとトップ選手と一般ユーザーの動作の感覚における情報や知識の違いが抜け落ちた結果として間違った解釈が生まれてしまうということかなと思います。

この観点に関しては指導スキルにもつながる考え方なので、この角度でもまた記事を今度書いてみようと思います。

また、オンライン指導について興味ある方はこちらから申し込みを!

では、また次回の記事をお楽しみに!

より内容のある記事の発信のためにサポートいただけると嬉しいです。今後取材やインタビューなどもしていきたいなとも思っているので、応援をどうぞ、よろしくお願いいたします。