映画us(アス)のネタバレ・考察
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映画us(アス)のネタバレ・考察

ジョーダン・ピール監督は2017年に映画「Get Out(ゲットアウト)」で監督デビューを果たし、2019年には2作目の映画「us(アス)」が話題になりました。

話題となったのはホラー映画特有の怖さだけではありません。ジョーダン・ピール監督のストーリーの奥深さが絶賛されています。

このusがとにかく面白くて!!いまだに色んな人に勧めまくっています。この記事で感想と考察を書いているので少しでも映画の良さが伝われば幸いです。ただしネタバレを多く含むので映画をこれからご覧になる方は注意してください。

 

あらすじ

 主人公のアデレードは幼い頃サンタクルーズに訪れる。アデレードは少しの間家族から離れ、ビーチにあるミラーハウスへ1人迷い込んでしまう。
 そこには自分そっくりの”ドッペルゲンガー”が存在していた。思いがけずドッペルゲンガーと遭遇し、気が動転したアデレードはその日から言葉が話せなくなる。カウンセリングなどの治療を受けた結果、幸いにも症状は徐々に回復していった。
 それから数十年後アデレードは結婚し、2人の子供を授かる。大人になったアデレードは家族と共に再びサンタクルーズへ訪れた。しかしビーチに行く途中で大怪我で救急車に運ばれる人を見たり、息子のジェイソンも血まみれの人をビーチで目撃したりとアデレードは猛烈な不安感に襲われる。ビーチに行ったその夜、家にとある家族が訪ねてきた。それはミラーハウスで見たような自分達そっくりなドッペルゲンガーのような家族だった。

 

☆ネタバレ(ここからネタバレを含みます。) 

※オリジナル(左)とドッペルゲンガー(右)の名前は以下の通り
主人公:アデレード…レッド
夫:ゲイブ…エイブラハム
娘:ゾーラ…アンブラ
息子:ジェイソン…プルート


アデレードのドッペルゲンガー、レッドは「自分達は地下に住み、影として生きてきた」と話します。それはアデレードの幸せな暮らしとは対照的に悲惨な生活でした。ドッペルゲンガーが代わりに自分達の命を狙っていると分かり、何とか一家は難を逃れようとします。

助けを呼ぼうとタイラー家を訪れますが、すでに殺害された後でした。どうやら自分達だけでなく全ての人に”ドッペルゲンガー”が存在し、みな命を狙われているようです。 

”ドッペルゲンガー”から逃れるには殺害しか方法はありません。夫のゲイブは追ってきたドッペルゲンガー・エイブラハムをボートで殺害しました。タイラー家の車を使って家族で逃亡を試みると、娘ゾーラのドッペルゲンガー・アンブラが後を追ってきます。ゾーラは車にしがみついているアンブラを急ブレーキで車から振り落とし、アンブラは衝撃で命を落としました。

しばらく運転して夜が明けた頃、ジェイソンのドッペルゲンガー・プルートと遭遇します。車の近くにはガソリンが撒かれており、プルートが今にも火をつけるところでした。プルートの罠にジェイソンは間一髪で気づいたため、逆にプルートが火にのまれました。

その瞬間にレッドがジェイソンを地下の世界に連れ去ります。息子のジェイソンを助けるためレッドを追いかけると、地下世界の入り口は幼い頃迷い込んだミラーハウスでした。さらに地下へと降りていくとそこにレッドが待っていました。

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 イメージ:PexelsのJuhasz Imreによる写真
  

レッドは「空の下で育つのはどんな気分?」とアデレードに問いかけます。そして地下世界について説明しました。

人間たちは肉体を複製する方法を発明したものの魂は二つにつくれず、一つの魂を二つの身体で分け合うことになりました。そのため地上にいるオリジナルの動きに、自分の意思とは関係なく連動してしまうのです。複製された人々はテザートと呼ばれ、人間たちから見捨てられた後も何世代も地下で生きていました。その後レッドとアデレードが生まれ、2人は幼少期に偶然ミラーハウスで出会いました。

ずっと地下で生きていたレッドにとって今が待ち望んでいた瞬間です。地下の世界で再び対峙した2人は、レッドがアデレードを殺害しようとします。しかし逆にアデレードによって命を奪われました。息子のジェイソンを無事取り戻し、地下の世界から脱出したアデレードは夫と娘と合流し、逃げるように街を出て行きました。

 

衝撃のラスト

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イメージ:PexelsのJenna Hamraによる写真


街から逃げていく車の中で、アデレードは幼い頃の記憶を回想します。 ミラーハウスでテザートのレッドと遭遇した際、アデレードは首を絞められて気絶していたのです。目を覚ますとそこは見たことのない地下世界でした。レッドはアデレードの服に着替え、地上の世界へと上がって行きました。代わりにアデレードを地下に置いて…

ラスト3分ほどのシーンで、幼い頃にオリジナル(アデレード)とテザート(レッド)が入れ替わっていたことが判明します。アデレードはショックで言葉を話せなくなったのではなく、地下の世界で暮らしていたため、言葉を知らなかったのです。

逆にテザートの中で唯一言葉が話せたのは、レッド(元アデレード)が地上の世界で暮らしていた経験があったからです。レッドの計画は奪われた元の生活を取り戻すためでもありました。

結果的にレッド自身は殺害されてしまいますが、ハンズアクロスアメリカがどこまでも広がっていくラストを見ると計画が達成されたように思えます。主人公一家はテザートを殺害することで自分達を守りましたが、他の人々はどうだったのでしょうか…


ジョーダン・ピール監督が映画に込めたメッセージとは?

「ドッペルゲンガーに命を狙われる」 というストーリーは今までにない新しい設定でした。これには一体どのような意味があるのでしょうか。まずは映画のタイトルから確認してみました。


タイトルのusについて

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イメージ:PexelsのDavid Dibertによる写真


映画のタイトルになっている”us”には二つの意味があると監督のインタビューで明らかにしています(参考1)。まずは私達という意味のus(アス)、そしてアメリカを意味するu.s.(ユーエス)です。

テザート達がアデレードの家に訪れた際、ゲイブが「お前達は何者だ?」と問いかける場面があります。レッドは「私達はアメリカ人だ」と答えるのですが、この答えに妙な違和感がありました。この会話を理解するには映画で繰り返し出ていたHands Across Americaが重要になります。

 

Hands Across America(ハンズ アクロス アメリカ)とは

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イメージ:PexelsのAnna Shvetsによる写真 


映画内ではテザート達が手を繋いでいる様子がなんとも不気味でしたが、この運動は過去に実在していました。それはHands Across America(ハンズ アクロス アメリカ)というチャリティーイベントです。

USA for Africaという団体が、ホームレスや餓えで苦しむ人々のために寄付を募りました。イベントでは大西洋から太平洋までを人の手で繋いだためHands Across Americaと呼ばれました。これには約650万人のアメリカ人が参加し、1986年5月25日(日)に15分間手を繋ぎました。

寄付金は当初5000万〜1億ドルを見込んでいましたが、実際に集まったのは3400万ドル。そこからチャリティーイベントの運営費用を差し引くと、最終的に1500万ドルが寄付として配られました(参考)。

ホームレスや飢餓で苦しむ人の救済が当初の目的でしたが、参加者には著名人も多くいたことで運営に多額の費用がかかってしまいました。またアメリカの気候や地形的な面もあり、手繋ぎの列が途切れていたところもあったようです。

 

映画の中でのハンズ アクロス アメリカ

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イメージ:PexelsのPorapak Apichodilokによる写真



us(アス)ではこのイベントをいわば皮肉的に取り入れています。映画の冒頭にも出ていたのを覚えていますか?Hands Across AmericaのTV CMを幼い頃のアデレードが眺めているシーンです。直接アデレードが映ることはありませんでしたが、テレビ越しに反射した顔が一瞬映っています。

またHands Across Americaが行われた1986年はアデレードがミラーハウスに迷い込んだ年でした。この日にアデレードが着ていたTシャツを見ると、Hands Across Americaのイラストが描かれています。幼い記憶といえど、この出来事が後に影響を与えているのは明らかです。

レッド(元アデレード)は自分たちテザートが今まで虐げられていたことを世に知らしめるために計画しました。その方法は地上のオリジナルを抹消した者から手を繋いでいく、まさに”Hands Across America”でした。当初のイベントが弱者であるホームレスや飢餓を救うためと考えると、テザート達もまた社会的弱者という立場になります。

社会から見捨てられ、悲惨な運命を辿るしかなかったテザート。普段、見て見ぬ振りをされている社会的弱者が目の前に”ドッペルゲンガー”として現れたら? 自分と姿形が同じ人が悲惨な生活をしていたと知ったら他人事にはできません。大人になったアデレードとレッドが再会し今までの人生を話したシーンでは涙を流していました。

おそらく監督はこの映画を通して社会的弱者を描きたかったのではないかと思います。”自分そっくりな人間が正反対の立場にあり、急に命を狙ってくる”というありえない状況が当事者意識を持てるのかもしれません。レッドからすれば同じアメリカ人なのに明らかにアデレードとは立場が異なります。usはまさに私達であり、United Statesである二重のタイトルを意味しています。

 

ちなみにミラーハウスがあるサンタクルーズは、サンフランシスコより南に90分ほどの場所にあります(参考3)。地図で見るとアメリカ西部に位置しています。映画のエンディングではHands Across Americaは遠くまで続いていましたが一体どこまであるのでしょうか…

 

☆Google Mapで地図を確認する 


us(アス)は伏線やヒントが残されているため、数多くの考察がなされています。すでに明らかなものもあれば、正解が無いために様々な意見が出ています。


アデレードとレッドが入れ替っていた伏線

この入れ替わりについては、映画ラストで明らかになっていますが、伏線となる部分は序盤から多く登場していました。

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イメージ:PexelsよりAnna Shvetsの写真

 

1.サンタクルーズのビーチを嫌がる
夫のゲイブがサンタクルーズに行きたがる中、アデレードはビーチに行くのを嫌がります。幼い頃のトラウマで行きたがらないと思っていましたが、これは地下世界の入り口に近づくのを恐れていたためでした。

アデレードは地下にいる本物がいつか報復しに来ると分かっていて怯えていたように見えます。もしくはアデレード自身は生まれつき地上で誕生したと思い込んでおり、ラストの回想シーンで初めて思い出した…とも考えられます。


2.   口数が少ない
タイラー家の奥さんと話しているシーンで、「私(アデレード)はお喋りがあまり得意ではない」という台詞がありました。お喋りで社交的なタイラー家とは対照的にアデレードはもの静かな印象があります。いくら幼少期とはいえ、地上に来てから言葉を覚えたとなると語彙力は一般的な人に比べて少なくなるはずです。

また入れ替わりの後、両親はアデレードがショックで言葉を話せなくなったと思い、手助けになるようバレエを習わせました。このバレエのおかけで他のテザート達からレッドが特別(オリジナル)だと気付かれるのも面白い点でした。


3.   躊躇いがない
もともと入れ替わっていたという状況を考慮しても、あんなに躊躇いなくテザートを殺せるのでしょうか。アデレードは白いTシャツを着ているのですが、返り血を浴びることにより徐々にTシャツが赤く染まっていきます。

またアンブラが死んでいるか確認する時やプルートに遭遇した際も、夫のゲイブに頼ることなく自ら立ち向かって行きました。その様子は勇ましくもありましたが、やや恐ろしくもありました。

 

映画のキーとなる入れ替わりに関してですが、いくつか明らかにされていない謎があります。

2つの謎

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イメージ:pexelsより

 

謎①:ジェイソンは入れ替わりに気づいていた?

アデレードが無事にジェイソンを救出した際、少し違和感がありました。普通ならお母さんと再会できた段階でホッとして泣くか、笑顔になるはずです。ましてやジェイソンは幼いにも関わらず、再会してからエンディングまで一切話さず笑ってもいません。

これは憶測ですが、アデレードが助けに来るまでの間にジェイソンは何かに気づいたか直接レッドと話して真実を知ったか、どちらかだと思います。母がオリジナルではなく、テザートだったと気づいたため再会してもあの反応になったのかもしれません。

ただどちらにせよ、ジェイソンにとっての母はアデレード(元レッド)です。実際に産んだのはアデレードで母に違いありません。だからアデレードが昔を思い出していた時(回想シーン)、ジェイソンはマスクを被ったのだと思います。ある意味現実を受け入れたのか、現実から目を背けたのか…

 

謎②:ジェイソンも入れ替わっていた?
これは噂があるようで真偽は不明です。私はジェイソンは入れ替わっていないと思いますが、”ジェイソンが入れ替わっていた”という噂の根拠は以下のようです。

 

理由:プルートが火にのまれる時にアデレードが「No」と言っていた

ジェイソンとプルートは不思議な点が多くありました。まずマスクを被る時、動きが連動しているという点です。この特徴を利用して、ジェイソンはプルートが火の中に飛び込むよう仕向けることができました。

その際にアデレードはテザートであるプルートに対し、急に「No, no」と言っているのです。他のテザートにはそのような様子が見られなかったのに、プルートだけ死んで欲しくないように見えます。


理由:おばあさんが亡くなってから元気がなかった

ゲイブがサンタクルーズに行きたいと説得する際に、「おばあさんが亡くなってからジェイソンの元気がなかったから楽しませてあげたい」と話しています。おばあさんが亡くなった時に入れ替わっていて、しばらく言葉が話せなかったから元気がないように見えたのでは?という理由のようです。

 ただ数ヶ月で言葉が話せるようになるのは難しいと思うので、個人的にジェイソンが入れ替わっていた説はあまり信じていません。色々怪しい点はありますが…

 

<その他の理由>

♢ビーチでトンネルを作っていた
映画の冒頭で「アメリカの地下には数千キロのトンネルがあり、その用途は知られていない」とのテロップが映し出されています。これはテザート達が住んでいる場所を示しているようです。

ジェイソンがテザートだった場合、トンネルが何かは知っているはずです。ビーチの砂浜で1人トンネルを作っていたのは、このトンネルを覚えていたからではないかと言われています。

♢去年の手品ができない
火を点けるマジックのようですが、今年になってできなくなっています。 

♢リズムに乗れていない
車で「I got 5 on it」の音楽を聴いていた時、アデレードとジェイソンの2人ともリズムに乗れていないようにも見えます。

 

ジェイソンに関しては、上記のような不審な点が見られた為にテザートだと疑われているようです。ジョーダン・ピール監督は特に言及していないので、真相は未だ分かりません。



 <参考資料>
(1) Jordan Peele on the double meaning of 'US' and the inspiration of the film, Yahoo Entertainment, YouTube, https://youtu.be/TysjgylyYkU
(2) Coats, Tyler, (2019年3月21日), Why Hands Across America Is So Vital to Jordan Peele's Us?, Esquire.com, https://www.esquire.com/entertainment/movies/a26883876/hands-across-america-us-movie-explained/#
(3) Go.USA.JP, 観光客に人気のビーチタウン、サンタクルーズ, https://www.gousa.jp/destination/santa-cruz

 


※以前別のブログで公開していた記事を加筆・修正し、noteで掲載しています。
※追記:あらすじを修正しました(2021.6.9)。


 

 

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