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肋骨

母と似ているところを見つけた。

入院先のベッドの上で、腹が痛いと母が言う。
「痛いのは腹の上の方?それとも真ん中?下の方?」と聞きながら、鳩尾から臍の下辺りを摩った。

鳩尾から臍までを直線的に摩ったり、そこから左右に少しずつ間隔を取って摩っていると、私自身の腹を触っている感覚に捉われた。

肋骨の「出方」がそっくりなのだ。
左右の肋骨がそれぞれ描いているカーブが、肋骨と腹との落差、肋骨の出っ張り具合がそっくりなのだ。

こんなところが似るものなのか。
それとも皆、こんな感じなのか?
いや、皆同じということはないだろう。

昔サーフィンをやっていた頃、パドリングをするためサーフボードに腹這いになっても、肋骨が引っかかり、痛くてうまく出来なかったのは私だけだった。
そして、肋骨の出っ張りでパドリングの姿勢が不安定だったのも私だけだった。

私の顔も名前も思い出せなくなった母
最後に抱きしめてくれたのはいつだっただろう。

ふと自分の肋骨に触れてみる。
腹を摩られ気持ちよさそうに寝ている母の顔が浮かぶ。

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