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変な人〜Part.2〜

 以前、私が住んでいたご近所さんに、とても綺麗な3歳上の奥さんがいた。引っ越した当初からとても親切にしてもらい、私達はすぐに仲良くなった。
彼女はアムウェイで働いていたからかどうかはわからないが、超合理的でポジティブシンキングな人だった。山ありた谷ありの私の人生を語っても「そんな事もあるよね〜。」とサラッと応える。辛かった思いを伝えても「もういいやん。」と、全く浪花節が通用しない。
 そんな彼女だから全く苦労のない人だと思っていたが、仲良くなるにつれて色々あったことがわかってきた。でもそれを隠していたわけではなくて、マイナスな過去は削除していただけなのだ。彼女にとってはマイナスではなく、用無しなのだ。私はそんな彼女をリスペクトし、多くの事を学び影響を受けてきた。
 ある日、彼女から自宅を全面改築すると聞いた。よくお邪魔していたので私も楽しみで、間取りから壁紙まで説明を聞きながら、彼女とウキウキ気分を共有していた(誰の家や)。完成したお家はなんと…大阪のハプスブルク家か?みたいなお洒落な外観に、家具も皆買い替え、貴族のお家と化した。そこまでは想定内で、私も正装してお邪魔せねば…くらいだったのだが、なんと!一番変わったのは彼女の中身だった。
 ショーケースに飾ってあるリヤドロのお人形を指して「この子は右から見るのと左から見るのとで、お顔が違うのよ。」と…(えっ?関西弁はどこいった?)
また、2人でランチに行くと「お紅茶くださる?」と、注文が上品過ぎる!!てな感じで、大阪のおばちゃんである私にはだんだん近寄りがたい存在になっていった。そのうち、自称ジプシーの私は夫の両親との同居が決まり引っ越しすることになった。毎年、年賀状の写真で貴族生活ぶりは知っていたが、会う事もなくなっていき疎遠になっていった。

 去年、数年ぶりに再会し、ランチした。もちろんお店は彼女のご指定。けれど久しぶりの彼女は、あれ?昔の気さくな人に戻っている。最近は健康フェチになり、ご夫婦でラジオ体操に勤しんでいるとか、靴下は五本指ソックスがいいとか、うんうん!その話題なら着いていけるよ〜。流暢な関西弁にもホッとした。それ以来、距離は離れているが交友は続いている。
 ちょっとの間、ハプスブルク家を経験したかったのね。でも、戻り方も潔く彼女らしい。人からどう見えるか?どう思われるか?なんて全く気にならない。自分の思うようにやりたいようにやる。けれどそこにはいつも、人の幸せも願う愛がある。『私も幸せ。あなたも幸せ』。この自分軸と他人軸のバランスが、とても不思議な変な人だ。そして魅力的な人だ。

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