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それで、今をどう生きる?

公開から半年弱ほど経ってしまったが「株式会社グレーゾーン・エージェンシー」を観た。彼らのチャンネルで予告されたときから楽しみにしていたものの、当時なにかと忙しく見るのを忘れたまま今になってしまった。これはその感想。

最初はただの視聴者として観ていた。カメラの向こう側の真実はもちろん知らないのだが、「視聴者から見た普段」の彼らの「役割」がしっかり役に反映されていて(そもそも彼らは物語の中でも実際の活動と同じグループ名を冠した“役”で出ていたのだから、当たり前か、とも思うが)とにかくいつもの動画…そう、彼らがたまに出すコント動画の延長戦のような気持ちで観ていた。(実際、ドラマパート(台本)とバラエティパート(アドリブ)にわかれていて、その配分もとても絶妙でした)
メタ的な視線がまた日常を切り売りしてる彼らに向けられた盲信的な視線へのアンチテーゼというか、YouTube自体の演技か素かわからない曖昧さや脆さへの皮肉みたいなものも感じて、それがとても良かった!ただただ楽しんでいたのだ、そう、最終回までは。

最終回、あんなに泣いてしまうと思わなかった。コメディなのだ、最終回も確実に。だけど、YouTuberという新時代のクリエイターとTHEサラリーマンと、人間と幸福の話で本当にボロボロ泣いた…面白かったあ…!演出で「感動させにきている」とき、あなたはどういう反応をとるだろうか。私は結構普通に感動してしまう。そういう視点で書かれていることを記しておきたい。時代についていけない男とそれすらも背負っていく若者たちの話で私は本当に好きでしたね…、偽善と言われるかもしれないが、人も時代も移り変わり、足掻きながら今を美しく生きている人間たちがめちゃくちゃ好きだった…。

自分の中にも変わった(変わってしまった・変えた・変わらせられた)ものは沢山あり、しかし変わらないものも沢山ある。時代と共に移りゆくものを私はいつも観察している。そして私は多分、社長(劇中の“サラリーマン”)にとって「遊んでばかりのやつ」なんだろうな。でも、私は、こんなこと言ったら怒られてしまうかもしれないけど。社長の気持ちも、わかるんだよ。

新しいものも、古いものも、等しく人間の"正しい"その人だけの選択で、何も間違ってなくて、自分の道を大切にして良くて、それを「人に優しく、自分に(もっと)優しく」が座右の銘の“リーダー”が全てを連れて次の場所へいくのが"現代のYouTube"で良かった。昔といま、表面的な性質は全く変わってしまったけど(変わらず在るものもある)、それはそれで、過去は過去として、それで、今をどう生きていこうか?という話だったように思う。

抱えている不安をコメディと少しのシリアスで優しく包まれたような気分になり、どうしようもなく救われてしまった。

面白かったです。演者も脚本も演出も巧みに組み合わさった映像作品でした。

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余談ですが、監督について調べたら「戦国鍋TV」で演出をやっている方だと知って、個人的にとても納得しました。ファンが演者の中身を知ったうえで観ている前提で、それを生かした外側をかぶせる演出をするのがとてもうまい方なんだなあと、素人ながら思いました。ありがとうございました… 



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