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世界は僕のものだ!

 昨日、金曜ロードショーで2週に渡って放送されていた大傑作「タイタニック」をまとめて観た。実はタイタニックを観るのは、今回が初めてだ。観る機会はいくらでもあったのだが、あえて避けてきたのかもしれない。それは多分、悲しくてどうしようもなくなることが分かっていたから。だがやっぱり、映画史に残る名作を知らないというのはな〜んか勿体無いような気がして、よしじゃあこの土日はタイタニックを観てみよう!と閃いたのだった。note を書いているのは、その感想を残しておきたいと思ったからである。

 ここからはネタバレになってしまうので、観ていない人は読まないでね。

 まず、観た後の率直な感想。「観なければ良かった。」心底そう思った。苦しい、本当に苦しくて、映画が終わってもずっと泣いていた。心にぽっかり穴が空いたような、脳天を銃で撃ち抜かれたような、言葉になかなか言い表せない感情を抱いた。そしてそれをどこにぶつけたらいいのかわからない、モヤモヤとした感覚。今日も朝起きてから今まで、全然頭から離れなかった。そしてふと思いにふけると、また涙が流れてくる。普段からなかなかバッドエンド作品を観ることもなかったので、耐性がないのもこんな気持ちになってしまう理由の一つだと思う。あともう一つの理由は、この惨劇が実話だということだ。

 一番震えたのは、海に投げ出され、凍えながら生きることを諦めそうなローズに対してジャックが「船のきっぷは、僕にとって最高のおくりものだった。君と会えたからね。」と告げるシーン。もう耐えられなかった。お願いだから二人で助かって欲しい、ローズとジャックのハッピーエンドをテレビの前でただただ願った。数時間後、ボートが迎えに来たところで目を覚ますローズ、微かな希望が彼女の意識を取り戻すのだが、ジャックはローズの側で息絶えていた。ここで驚くべきは、彼女の強さ。自分の命を捨ててまで自分を生かしたジャックとの約束を果たそうと、自らジャックの手を離すのだ。海の底へと消えていく愛する人。数時間前までは、幸せの渦中にいて未来を約束していたのに。あまりにも真逆なその描写が、辛くてたまらなかった。その後ローズは、ホイッスルで自分の生存を知らせ、奇跡的に救出されたのだった。

 映画のラストの解釈は人によって違うようだが、ローズは約束を果たし、あたたかいベッドの中で永遠の眠りについたのではないかと思った。最後の回想シーンでは、船の船員たちに祝福され幸せそうなローズとジャックの姿が描かれていた。ツイッターで知ったのだが、その時の時計の時刻は2時20分。タイタニック号が沈没した時間を指していたという。80年以上もの長い年月、ジャックは決して動くことのない時計の前でずっと、ローズのことを待っていたのではないだろうか、という考察にまた吐くほど泣いてしまった。

 結果的には観て良かった。この作品と出会えて良かった。ただ、こんな気持ちになってしまったのは想定外だ。1本の映画の余韻を、生活に支障が出るほど引きずることになるなんて。自分の豊かすぎる感受性を初めて憎んだ。二人の主人公の他にも、船と死を共にすることを決意したスミス船長、アンドリューズさん、ベッドで童話を聞かせいつも通り子どもたちを寝かせる母親、最期を一緒に過ごそうと水が入ってくる部屋のベッドで抱き合う老夫婦。全ての描写があまりに生々しくて、苦しかった。一晩にして約1500人もの乗員乗客を亡くした、夢の客船タイタニック号。あの時こうしておけば死なずに済んだのでは?と自分なりに何度も考えたが、パーティーに呼ばれた際にジャックが語っていたことが全てだと思う。

「人生は贈り物だと思っています。ムダにしたくない。次にどんなカードが配られるかは分からないけど、大切にしたいと思う。毎日を大切に過ごしたい。」

 全ての人がその時々に自ら決断し、人生を生きていた。海に飛び込んで助かった人、死んだ人。ボートを戻そうとした人、戻さなかった人。先に海へと逃げた人、最後まで乗客の救出を懸命に行なった人。死ぬことを諦めた人、家族を捨て差し伸べられた手を取った人、愛する人と未来を誓った人、愛する人を失ってなお、愛する人のために生きた人。

 壮絶な3時間半の超大作タイタニックは、わたしの心に深く傷をつけた作品だった。ジャックのように自分の人生を生きたいと、強く思った。

「今日に乾杯!」




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