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寝ても覚めても (英題:ASAKO I & II)


大阪に暮らす21歳の朝子は、麦(ばく)と出会い、運命的な恋に落ちるが、ある日、麦は朝子の前から忽然と姿を消す。2年後、大阪から東京に引っ越した朝子は麦とそっくりな顔の亮平と出会う。麦のことを忘れることができない朝子は亮平を避けようとするが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。そして、朝子も戸惑いながらも亮平に惹かれていく。公式サイトより

渋谷シネクイントで鑑賞。原作未読、エンディングのtofubeats「River」で撃沈。英題「ASAKO I & II」ってのが意味深すぎる… ネタバレあり感想です。

ふたりの愛は 流れる川のようです とぎれることないけど つかめない


忍び寄る不穏&不穏

上質な和製ホラーでした。東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、伊藤沙莉、渡辺大知と今時の若者がそろってるのに、そこはかとなく90年代の匂いがする。ガラケーでも違和感ない。この世界にたぶんEXILE TRIBEはいないし、ゲスの極み乙女。も米津玄師もいない。映画仲間の感想がTLで真っ二つだったため気になっていた作品。予告チラ見程度で挑んだのですが、まー意外にも面白かった。ネコ映画!(違う)主演ふたりがクレイジーな分、脇役のバランス良さに唸った。くっしーもマヤも春代も岡崎も素晴らしい。岡崎役、渡辺大知の初見は「くちびるに歌を」の障がい者のお兄さん、次に「勝手に震えてろ」のニ、そして今回もすばらしかった…君本業ミュージシャンなんだよね⁈トマトに水やってるときの首の太さが男やー!って感じで、でも喉仏出過ぎてなくてたまらなく好きです(性癖)かれがALS(筋萎縮性側索硬化症)になった経緯は説明されないけれど、あの頃と同じ笑顔とツッコミをみせる岡崎、春代もそう。青春の変わらぬ置き土産、みたいな友情をみせるのが上手いなぁ。朝子&亮平って友達少ないカップルだと思うから、かれらの存在に救われる。


朝子について

朝子、嫌いじゃないんですよ、あれに引っかかる亮平が悪い。昔の(忘れられない)(ちゃんと別れてない)恋人にそっくりさんが現れたら惹かれるに決まってるじゃないですか。朝子の原動力は「誰かを好きであること」なので、言葉には嘘が何ひとつない。クソポジティブ野郎でいながら、マイナスな行動叩き出すから終わらないバグ取りしてる気分になる。精神不安定すぎて、突然麦がお宅訪問する場面は正直彼女の妄想では?と疑ってしまったり。あと3.11地震の後帰宅難民になるじゃないですか、帰り道に亮平に出会う偶然はやり過ぎ。観劇の日程ずらしておきながら、おまえ待ち伏せされてたかもしんないよ?「嘘を愛する女」も震災の出会いって話でしたけど、アフター3.11って若い世代の流行りなのかな?

愛猫の名前がまったく聞き取れず、後半草むらで呼ぶときの「じんたーん、じんたーん」がもうね、他人を振り回すタイプの声じゃん…感心した。「仁丹」をどうこねくりまわしたらあの発音で呼べるんだろう…すごい。

麦はもう人外ですね。言動を見る限り、バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!と思いました。ゴーンガールかよ。あいつらお似合いだわ


神は細部に宿るのだ

亮平のマットレス敷きっぱなしベットや、帰宅後即長い足をあげて寝転がるとこ、朝子&マヤ宅、ルームシェアのごちゃまぜ感(ややマヤ色が強い)やリビングにコートラックが出ている部屋の狭さ、亮平と朝子が同棲したお部屋の白さ(亮平のピュアさに染まっている)インテリアにキャラクターが反映されてて良い。朝子ファッションとかどれも嫌味すぎてスタイリスト抱きしめたいと思った。最初ちょい個性的なおしゃれなのに亮平と付き合いだしたら私服がどんどん地味可愛いになるんですよ。薄いデニムに白シャツで、雨の中「亮平が好き!」扉ドーンする場面とか最高でした。あと春代のメール、軽さがリアル。なごんだよね。


なにはともあれ瀬戸康史

くっしーこと瀬戸康史、私はナラタージュ以来ガン推しなんだよこの子は声も雰囲気もなにより演技してない感じがすごすぎる。これからも頑張って


まとめ

ラスト、「お前のことこれからもずっと信じられない」「それでもいい」「きったねぇ川だな」「でも、きれい」みたいな会話で終わりましたが、あの後亮平がシャワー浴びてる朝子を殺してバラバラにしてジンタンの餌にしても違和感ないなって思えるポールバーホーベン作品でした。亮平はレストランで捨てられて頬肉震わせている場面、朝子は海辺の横顔が美しかった。壊すひとと壊されるひと、世界はギリギリのバランスでつくられている。


以上です。

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