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アス "us"

日本橋TOHOにて6ポイントフリー鑑賞。「ゲット・アウト」監督作ということで、予告もそこそこにきてみた。ネタバレ注意!

あらすじ:夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れたアデレードは、不気味な偶然に見舞われたことで過去のトラウマがフラッシュバックするようになってしまう。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。映画.com


キャストがブラックパンサーのおふたりでびっくり。ナキアとエムバクが夫婦ですよ。別荘で海に行こうとごねる夫、ゴリラみたいなガタイでねぇねぇって誘う姿もほんわかしてたのに、突然のホラー展開。小さいころのトラウマが…って語りだす主人公、ルピタ・ニョンゴの演技がえぐくて引き込まれる。子役の使い方もうまい。大昔、ボストン郊外の移動遊園地であの手のミラーハウスにはいったことがあったな…りんご飴も買ったわ(芯が硬すぎて食べられたもんじゃなかった)

海辺の遊園地、若者たちの喧騒から抜け出してモンスターと出会うシチュエーションはあるあるだけど、ひとり道をはずれていく幼いアデレードの描き方がとてもうまい。何も知らずにはしゃいでるモブとの比較ってゾクゾクするんですよね。「ヘレディタリー継承」でいえば、兄に連れていかれたパーティで画面にみきれている妹とプラカップで酒飲んでる未成年たち、包丁でリズミカルにナッツを刻んでいるビッチ候補(失礼)日常のひとコマのはずなのに、あ、怖い、と思わせるカット。ジョーダン・ピールもアリ・アスターも、恐怖の瞬間を切り取り、注ぎ込む手口が素晴らしい。

中盤で富裕層な友人一家がクローン(テザード)に急襲されたあたりからツボにはいっちゃって、ずっと肩震わせてみてたのですが、ところどころ怖いなと感じる部分もあったり。

・クローン家族登場シーン。手をつないで待機
・わんこ走りの息子
・アデレードの影、レッドの話し方。声帯つぶれてんのか?
・地下で子どものころの主人公アデレード親子のやりとりをコピペするテザードたち
・木にぶっ刺さった娘。とどめをさしにいくのかとおもいきや…
・うさぎ

ドッペルゲンガーの呼称として出てくるテザード、Tethered=繋がれたって意味で操り人形をさしている(馬や犬をつないでおく縄、首輪って意味もある)ジョーダン・ピール監督はクセのある Key & Peele のスケッチも製作しているので、一筋縄ではいかないネタが多い。


燃え盛る火に飛び込む息子はKKKの祭壇のようだし、エレベーターで上がることしかできないテザードの世界は抜け出せない下層階級のあらわれで、USはもちろんUnited States!なにがUnited だよバカヤローと北野武ばりのツッコミをしたい。80年代の「ハンズ・アクロス・アメリカ」運動はアメリカ中が隣人と手をつなぎ世界の貧困を救うとかいう謎イベントだったが、最後のテザードが延々赤い列をつくっている姿は、世界を分断している格差社会のイメージでもある。監督自身も「アス」の世界観と社会構造の欠陥について言及していた。

誰もが私にはその価値があるから、といいつつ、足元で踏んづけている相手のことは気にもかけない。私達も報われるべきだ、そんなことをテザードのレッドは言っていた。「ゲット・アウト」に引き続きトランプ政権の色が如実に出ている。オバマ時代にここまでの作品は描かれなかっただろうな。「アス」は前作よりも複雑になっており、受け手が感じるテーマも一貫していない。そのくせホラーとしては超絶クールな映画だと思う。私は「恐怖の根源のわからなさ」に惹かれてしまうので、すごく好きな部類である。

エレミヤ11章11節の意味は旧約聖書をたどっても全然わからず、ただ11:11といった数字が繰り返しでてくる点はゾワっとした。何年か前に時計をみるたびゾロ目が続く時期があったので、これはデジャブだな、と。

帰宅して即マイケル・ジャクソンの「スリラー」を繰り返しみてしまった。赤いツナギと鋏さえ買えばハロウィンのコスプレにぴったりな作品。ルピタ・ニョンゴ&レッドの一人二役に拍手。ジョーダン監督、次回作も楽しみです。



Key & Peele一番好きな教会おばあちゃんコント
ジョーダン監督は女装も素敵


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