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かぞくのかたち 代理出産の話


2016年、冬。増原さんと東さんは盛大に炎上した。

ツイッターで彼らを批判する声は広がり、ふだんLGBTQアカウントをフォローしていない私のとこへも、回ってくるほどだった。私たちはこのイベントに参加していたが、あまりにも納得のいかない内容で終了後渋谷の焼き鳥屋で酒をあおりながら大討論した記憶がある。


綺羅星のようにあらわれたパワーレズビアン

宝塚歌劇団出身の東小雪さん、アクティビストの増原裕子さん。おふたりはディズニーランドで同性婚をあげて有名になったレズビアンカップル。渋谷区の同性パートナーシップ第1号だし、「ふたりのママから、きみたちへ」という共著も出した(東さんに至っては性被害のサバイバーで「なかったことにしたくない」という自伝も書いている)2chopoの連載コラムはたびたび目にしていたし、日本中を飛び回り、ドコモCMに出たり、はては海外までLGBTQ研究に行く精力的な姿勢はうらやましかった。

このころ、まきむぅこと牧村朝子&モリガ東&増原カップルが輝いていた気がする。


そのおふたりが開催したセミナーがこちら。
「ゲイのための代理出産と卵子提供セミナー 〜子どものいる家族をつくろう〜」

おふたりは、早いうちから「子どもがほしい」と明言し、友人の精子提供で体外受精に取り組む姿勢をみせていた。
そんな中、海外で体外受精、代理母を経由して子どもをつくる。自然体では子どもの生まれないカップルには夢のような話で「一緒に聞きに行こうよ」と私を誘った友人のゲイは興奮を隠せないでいた。

当日。渋谷松濤のTRUNKで、イベントは行われた。

メインスピーカーはJ-Baby。米国LAの日本人向け不妊治療コーディネーターをおこなっている。他にも生殖医療センター、マッチングカンパニー、代理出産を請け負う3社が登壇。2時間ほどのセミナーだったが、疲れ果てて帰宅したのをおぼえてる。


結論としては、雲をつかむような話だった

代理出産を行うにあたり、日本でクリアしなきゃいけないハードルの可視化もなければ、現状維持での実現性がまったくないからだ。
当時感想を書くだけの気力は、なかった。


婚姻関係のない男女間に生まれた場合は、非嫡出子でも両親が養子縁組が必要だ。では現実問題、同性婚ができない、同性カップルではどうなるのか?
イベントには司法書士?っぽいかたが同席しており、いくつか質問が飛んだが、法律関係はこの場で回答できないというグダグダっぷりで、肩透かしだったのをおぼえている。コーディネーターである増原さんと東さんは司会に徹していたが、、どうみてもビジネスありきにみえて首をひねってしまった
(絶対紹介料とるだろ?って心の中でツッコミつつ)


卵子提供と代理出産、1度に1000万~2000万の費用をねん出する同性カップルが日本に多数いるとは思えない。しかも海外渡航・滞在費用は別。だったら電通ダイバーシティが掲げている、ひと握りのシャイニーゲイ(死語)向けに宣伝すればいいんじゃないの?


当時の告知サイトにはこう書かれていた。
「海外で卵子提供や代理出産により子どもを授かり日本で育てることは、違法ではありません」

うん、グレーゾーンだ。

それによって親子にどのようなメリット、デメリットがあるのか、詳しく説明されなかった。後日あまりの炎上騒ぎに辟易したのか、東小雪さんのブログではビジネス目的ではなく、LGBTQでも家族がもてる手段があると紹介したかったと書かれていた。

ビアンカップルは精子を入手し、どちらかが母体になればよいが、ゲイカップルは健康な代理母と卵子の手配、さらに母体へ保険もかけるので費用は安くて2000万。アメリカの出生届(Certification)は手に入るが、日本での有効性はあるのか。卵子、精子、血のつながりのない赤ちゃんを「胎児認知」「特別養子」として日本のカップルの戸籍に入れられるのか。海外で生まれた場合、日本国籍取得(帰化)までどのくらいかかるのか。日本では「代理母出産で生まれた場合は実子として認めない」最高裁判決がでている限り、養子以外の道はないのか。海外の代理母にかける保険適用の内容とは。生まれた子どもにパスポートは発行されるのか。

素人の私ですら浮かぶ問いに回答はなく、これじゃ日本での展開は無理だね、と、連れて行ってくれた友人もみるからに肩を落としていた。


これからのこと

アクティビストとして難しい領域にふみこんだお二人の勇気は素晴らしい。
面白い話もたくさん聞けた。代理出産で5人産んだという女性や、仕事一筋でためた預金(3000万円。家が買える)をぶっこんで赤ちゃんを授かったゲイカップル。

私はフェミニストだけれども、女性の人権の搾取ダーと騒ぐつもりはない。代理出産システムは賛成だし、欧米の一部ではすでにビジネス確立している。日本やイギリスでは不妊治療・体外受精に国から助成金がでるようになった。けれども、法制度の整っていない日本のLGBTQ向けに本件をアピールするには、第1歩をふみはずした感がいなめない。代理出産においては倫理観・宗教論・法律においての論争は避けて通れない。それでも、個々の幸福度をあげるチャンスは増やすべき、成功事例とエビデンス、国内外の課題と想定しうる壁は何なのか。これらをクリアするのが、次のステップだと思う。

こちらの方のブログで、おふたりも「不確かさ」を察知しながらもエイヤっで表看板としてビジネスモデルの牽引者となったのか、と書かれていたが、まさにその通りだなと。

必ずしもDNAを受け継ぐ必要はないよねいう話もした。最近、大阪で同性同士でも里親になるという事例があったばかり。

面白半分で行くんじゃなかった、と後悔したものの、自分なりに仕事の回し方や視点をみつめなおすよい機会になったので、2年ぶりに感想を書いてみた次第です。

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