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マチネの終わりに

TOHO日本橋で鑑賞。原作ファンなので楽しみにしていた邦画です。ネタバレあり!

あらすじ:東京、パリ、ニューヨークを舞台に音楽家とジャーナリストの愛の物語を描いた芥川賞作家・平野啓一郎の同名ベストセラー小説を福山雅治、石田ゆり子主演で映画化。パリでの公演を終えた世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子と出会う。2人は出会った瞬間から惹かれ合い、心を通わせていくが、洋子には婚約者である新藤の存在があった。そのことを知りながらも、自身の思いを抑えきれない蒔野は洋子へ愛を告げる。しかし、40代の2人をとりまくさまざまな現実を前に、蒔野と洋子の思いはすれ違っていく……。蒔野役を福山、洋子役を石田がそれぞれ演じ、伊勢谷友介、桜井ユキ、木南晴夏、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行らが脇を固める。監督は「容疑者Xの献身」「昼顔」の西谷弘。映画.comより


原作本の感想:恋でもなく愛でもなく、出逢いでした

今年の夏、友人とお泊り会の合間に気まぐれで購入した本。平野啓一郎作品ははじめてで(ふだんフィクションをあまり読まない)久々の恋愛小説にこそばゆさを感じながら、460ページをあっという間に読み終えてしまった。

誰といてもひとりで生きる、という覚悟を秘めている蒔野と洋子。そんなふたりが惹かれあっても一緒になれない展開はかなりロマンチック。クラシックギタリスト蒔野は気取ったセリフ回しも多くて、現実にこんなタイプと相まみえあたらしぬほどめんどくさいだろうな…というキャラ。たいして国際ジャーナリスト洋子のように地に足のついた女性は憧れですが、それでも一瞬の情熱に巻かれてしまうほど、蒔野との出逢いが強烈だったのでしょう。「マチネの終わりに」は恋愛小説としてだけではなく、クラシックギターの音楽やその音色、感情を豊かに表現した、画期的な小説だということ。作者が積み上げた世界観に身を沈めて、音のすばらしさを堪能することができます。


映画のストーリー展開

原作本からだいぶ端折ってますが、コアな部分は残してるので未読のひとも見られると思います。「スマホを落としただけなのに」展開は原作と同じ。このあたり、ひと昔前のトレンディドラマみたいな流れなのでツッコミは多そう。

時系列

蒔野、コンサートに洋子が来てひとめぼれ
一時帰国だったので洋子はパリへ戻る
蒔野、メールを送り続ける
洋子、パリでテロに遭遇
やっとスカイプで話す。洋子PTSDあり
蒔野、ヨーロッパ講演にかこつけてパリの洋子に会いに行く
おまえとおれでしぬ発言
洋子、婚約破棄
洋子が日本に来る
蒔野のギター師匠が倒れる
蒔野、携帯をタクシーに忘れる
マネージャーが携帯ピックアップ、メールみちゃう
マネージャー、嫉妬により偽装お別れメール発動
メールをみた洋子、蒔野をあきらめて実家へ
すれ違いのままふたりの連絡が途切れる
洋子がニューヨークで結婚したと連絡がくる
蒔野もマネージャーと結婚する
蒔野、泣かず飛ばず
亡き師匠のトリビュート盤が持ち上がる
蒔野復活
洋子、離婚
蒔野妻、ニューヨークコンサート会場の下見にくる
洋子を呼び出して懺悔
蒔野、ニューヨークでコンサート
マチネの終わりにセントラルパークで待ってます発言
再会 ~エンディング~

こうしてみると、蒔野のストーカー体質はやばい。一目会ったその日から「え、君も僕のことすきでしょ?」と「僕たち一緒にいるべきですよ」というノリでガンガンせまってくる。端的にいってやばい。なんで洋子も惚れたんだろう。婚約者にない押しの強さかしら…永遠の謎。

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予告でこの場面みたとき、蒔野節全開で正直失敗かな~と思いましたが杞憂でした。福山雅治のキモさが一周してよかった

音楽とキャスティングが神

洋子の父(映画では2番目の妻の娘として血がつながっていない設定)イェルコ・ソリッチ監督の映画テーマ、「幸福の金貨」という曲がふたりをつなぐきっかけになるんですが、この曲がまた最高of最高。蒔野の哲学的なきめ台詞にバチッとあう。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないんですか?」


ベートーヴェンの「夕べにすべてを見届けること」の扱いや、原作では蒔野が蕾の話をするけど映画では妻の言葉に気付かされる。あの演出はなにかしら、赦しが与えられるようで面白かった。

洋子の喋り方の語尾に「~よ」「~だわ」が多用されてちょっと古くさいと感じるかたもいると思う。原作では蒔野より2~3歳年上、日仏の両親をもつトライリンガル、教養も高く海外生活が長いジャーナリストだから、標準語をより丁寧に話す設定が脳内にあるので意外じゃなかった。このあたりは原作に忠実すぎて監督に愛の往復ビンダをかましたい。ラストのセントラルパークまでトレス完璧過ぎた。


福山雅治、よかったです。原作通りナルでストーカー気質でミドルエイジクライシスど真ん中の気難しいギタリストを体現していた。復活のタイミングでひげそったアー写、つきものが落ちた感じで一気にカッコよくなるんだよ、ずるいわ!!!!!!

石田ゆり子、洋子を演じられるのはあなたしかいません。最初、吉田羊もいいよな~って思ってたけどやっぱりきみだ。「私、結婚するの」「さよなら(妻にチケットを返しながら」このあたりの台詞、最高でした。怒りと困惑がないまぜになった表情がキュートすぎる。惚れた。

伏兵だった伊勢谷友介、洋子の婚約者→のちの夫役なんですけどジュード・ロウかな?ってくらい美しい。投資会社勤務のイヤミな美男子、洋子にべたぼれ、部屋にふたりの巨大ポートレート飾るとこや、夫婦でクリスマスパーティのホストやってるあたり、上流階級あるあるで笑ってしまった。蒔野の一件以来洋子の心はここにあらず、夫婦生活は破綻し、それでも良き友人として共同親権だなんて…いいやつすぎる!ニューヨーク国内外が舞台なので外国語が堪能できます。英語スペイン語を喋る福山雅治、英語フランス語を喋る石田ゆり子、そして英語を喋る伊勢谷友介がしぬほどカッコいい。キャスティングしたひとに拍手。どんなアクセントも愛せるけど(そのひとのルーツがみえるから)伊勢谷友介!貴様の英語は反則だ!話し方も最高だ!!もっと外国語の役ぶんどってこい!!!!


細かすぎて伝わらないマチネの終わりに、私が最もグッときたのは、洋子と祖母の思い出の石、似たようなのをニューヨークでみつけてひとり泣くところと、最後にそこを走り抜けていく(蒔野のコンサートへ向かう)ところです。洋子ラブ。

以上、マチネの終わりにの感想でした。

気になる方はみてください。そして小説も読んでくれ。

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