東証のPBR1倍割れ改善要請を徹底解説!
皆さん、こんにちは!
本noteでは、
2023年3月末に東京証券取引所(以下東証)がPBRが低迷する上場企業に対して、
改善策を開示・実行するように要請したことについて詳しく解説していきます。
「PBRってそもそも何」という方、「株式投資をする上で指標を理解したい」という方はぜひご覧頂けたらと思います。
そもそもPBRとは?
PBRとは株価指標の一つで、株価純資産倍率(Price Book value Ratio)のことをいいます。
計算式としては、株価×発行株式数で求められる時価総額を純資産で割ることで求められます。
純資産とは総資産(企業が保有する全ての資産)から負債(返済義務のある資産)を引いた「企業に返済義務のない資産」のことです。
PBRが低いということは、純資産に対して株価が低いということを示し、逆にPBRが高いということは、純資産に対して株価が高いということを示します。
PBRはこのように株価が割安か割高かという指標として使われています。
PBR1倍割れの問題点とは?
PBRが1倍を下回る状況とは、時価総額が純資産を下回ることですが、
なにが問題なのでしょうか?
PBRが1倍以下である状況は、
理論的にはその企業が存続し続けることよりも、解散し全て売却する方が価値がある
ということを意味します。
もちろんこれは理論的なものに過ぎず、実際に解散するとなると手数料などの諸費用がかかりますので、本当に解散価値の方が高いのかはわかりません。
ですが、重要なのはPBRが低いということは、それほど企業の資本効率、収益性が低くそれによって株価が低くなっているということです。
そして日本の市場にはPBR1倍割れをしている企業が3月末で約3300社のうち約1800社と54%を占めており、米国市場の3%とは大きく乖離しています。
これは今に始まったことではなく、
日本企業の体質として長年問題視されてきたものでした。
東証の今回の要請でようやくこの問題にメスが入れられたということとなります。
PBR1倍割れ企業
では実際にPBRが1倍を下回っている企業はどんな企業なのでしょうか?
具体的に見てみましょう。(2023年6月19日現在)
マルハニチロ(1333) PBR0.70倍
マルハニチロは冷凍食品、レトルト食品、缶詰などを製造している大手食料品メーカーです。皆さんも耳にしたことがあることと思います。
ですが食料品銘柄は、日本の人口減少による市場縮小などの要因で、株価が低く推移しています。
他方、日本の食料品メーカーの中には人口増加傾向にある海外での売り上げ比率が高く、市場拡大の見通しなどの要因で、株価を伸ばしている企業もあります。
例えば醤油を販売しているキッコーマンが挙げられます。マルハニチロの海外売上比率は19%なのに対し、キッコーマンは海外売上比率が80%を占めており、PBRは3.94倍(2023年6月19日現在)となっています
三菱UFJフィナンシャルグループ(8306) PBR0.69倍
日銀の金融緩和政策による継続的な低金利、日本経済の低迷といったマクロ環境の中で三菱UFJだけでなく銀行業界全般で株価が低迷しています。
さらに直近ではアメリカでの銀行破綻による不安で株価が急落したことも要因と考えられます。同業種である三井住友FG、みずほFG、ゆうちょ銀行等も同様にPBRが1倍を下回っています。
日本製鉄(5401) PBR0.65倍
鉄鋼業の日本製鉄もPBRが0.65倍と1倍を大きく下回っています。製鉄プロセスにおいて二酸化炭素を排出してしまう鉄鋼業は、世界的なSDGsトレンドの中で向かい風を受けている状況です。
実際、日本全体の二酸化炭素排出量の14%は鉄鋼業で排出されているそうです。
このような状況で鉄鋼業界は従来の高炉での製鉄から二酸化炭素排出量が少ない電炉での製鉄への切り替え、また水素を使った製鉄といった新技術の開発に取り組んでいます。ですが現時点では、効率性などの問題から十分な代替ができておらず、市場からの評価は十分に得られていないと言えます。
さらに製品である鉄の需要が日本の製造業の低迷の影響で縮小していることも株価低迷の原因だと考えられます。
以上のようにPBR1倍割れの企業を3社紹介しました。3社とも誰もが知る大企業にも拘らず、株価は低迷しているとわかります。これらの企業の共通点としてはこれまでの日本の成長を支えてきた伝統的な企業であったり、現在の日本の暮らしを支えている企業であることが挙げられます。このような企業に対して東証から改善の要請がなされているということです。
では具体的にどのようにPBRを改善していけば良いのでしょうか?
PBR改善策
では実際に企業がPBRを改善していくにあたってどのような改善策が考えられるのかということについてお話ししていきます。
改善策の方向性は大きく2つ考えられます。
それは収益性を改善といった事業に対してのアプローチと株式市場に対する直接的アプローチとの2つです。この2つについて詳しく説明していきます。
1.事業へのアプローチ
事業へのアプローチとは、現状の事業の収益性、資本効率を改善するアプローチであり、それを市場に評価してもらうことで時価総額の向上を図ります。
具体的には、
などが挙げられます。
特に不採算事業からの撤退と新事業、新分野への進出の2つは近年重視されている事業の「選択と集中」に当たるもので、具体的にはM&Aによる他企業への事業売却、自社の事業と相乗効果(シナジー)を望める事業や会社を買収するなどが想定されます。
また、業務改善などによる経営の合理化はシステム導入によるコストカット、業務フローの見直しなどが考えられます。
2.株式市場へのアプローチ
株式市場へのアプローチとは、事業内容や事業構成に触れずに株式市場における自社銘柄の魅力を高めるアプローチです。
株式市場へのアプローチとしては
・自社株買い
自社株買いとは、市場に発行されている自社株式を企業が買い戻すことです。
それによって「発行済み株式数」が少なくなるため、相対的に市場に出ている1株あたりの価値が上昇します。
またその価値の上昇が株価を引き上げます。
・増配
増配とは、自社株式所有者に一定時期に配られる配当を増やすことです。
株式投資においては売買時の差額をによる利益を求める投資家だけ
ではなく、配当といった安定的、継続的な利益を重視する投資家も多く存在します。
そのような投資家にとって増配は大きな魅力となり株価の上昇が見込めます。
・IR
最後にIRですが、これは企業による投資家に向けての宣伝活動です。
具体的には決算説明会などの各種説明会の開催、HP上での情報開示などがあります。
これによって企業が投資家の方を向いた経営を行っているという信頼感を投資家に与えることができます。
実際にIRに積極的な企業はそうでない企業に比べ株価が高い傾向にあると言われています。
今後の流れ
東証からの要請でPBRが1倍割れしている企業は改善戦略を開示するように求められているため、企業は先ほど紹介したようなアプローチを戦略とし、実行すると考えられます。
その開示した戦略を投資家が評価すること、また戦略を実行し事業の収益性などが改善されることなどで中長期的に株価が上昇していく可能性も考えられます。
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