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【ポジショナルの落とし穴】カタールW杯 グループA第1節 カタール×エクアドル|マッチレビュー

さぁ四年に一度のサッカー祭典W杯の始まり。開幕カードに登場したのW杯開催国であり、W杯初出場となったカタール。迎えるは、日本代表が親善試合で対戦したエクアドルとの一戦。

開催国!という事でカタールには多くのアドバンテージもあると思うが、この試合に限ってはそれが大きなプレッシャーとなり、選手の力、監督の采配に悪い影響を与えた印象だった(表情からその緊張感が伝わるほど緊張してましたね…)

それでは簡単ではありますが試合を振り返っていきましょう!

頑張っていっぱいW杯見るぞ!おー!

らしさすら出せなかったカタール

カタールと言えば、我らが日本代表がアジアカップ決勝で内容結果共に完敗した相手だ。

日本はカタールのポジショナルプレーを思考としたスタイルに攻守で圧倒される結果となった。

ポジショナルプレーとは簡単には立ち位置で優位性を作ることだ。ボールを持った際に相手の守備陣形にポジションが噛み合わない、プレスが届かない立ち位置を取ることで優位性を作り出すことだ。

カタールはこの試合でもそんな自分達のスタイルを示そうとしたが結果として機能することはなかった(ゴール前にバスを置いてカウンターを狙う!そんな姿勢は見せなかった)。

カタールのポジショナルプレーを思考としたスタイルはなぜ機能しなかったのか?それには2つの理由があったと考えられる。

・配置を取る時間が作れなかった
・技術的なミス

◎配置を取る時間が作れなかった

ポジショナルプレーは相手の配置が噛み合わない、プレスが届かない立ち位置に立つことでその効果が発揮される。

しかしこの日のカタールはエクアドルの4-4-2の陣形に対して、そんな立ち位置に立つことがまず出来なかった。

両チームの陣形を噛み合わせるとこんな感じ。

カタールがエクアドルからボール奪った時、『はい!ちょっと待ってね!今から配置を取るから少し待っててね!』と言うわけにはいかないのがサッカー。

まずは配置をとってから、優位性を作ってエクアドルのプレスを和らげたいカタールだったが、それすらさせてもらえなかった。

なぜ配置を取れなかったカタール?

まずはエクアドルに長くボールを握られてしまい陣形をバラバラにさせられたカタール。たとえボールを奪ってもバラバラな陣形でパスの出しどころがない!またロスト!のサイクル。

もう一つはボール奪った後の振る舞い。エクアドルのネガトラは確かに早く鋭かったが、カタールはポジトラの設計が今一つ足りなかったのは明白だった。奪ったボールの逃げ方。奪った後を予測した守備陣形。

細かな所で言うと、カタールは自分達の投げるスローインの殆どがエクアドルに奪われてショートカウンターを食らっていた。

エクアドルの2得点目の始まりはカタールのスローインから。

こう言ったディテールを整理したらボールを保持する時間が増えた→ポジションを取る時間もできる→それぞれの立ち位置に立ってエクアドルのプレス和らげられた→さぁ!自分達のスタイル出すぞ! になったかもしれないね!

◎技術と認知のミス

なかなかボールを保持する時間を作れなかったカタール。しかしその中でも立ち位置が整い、ボールを後方から前進させるシーンもあった。

エクアドルは2トップがカタールの3バックへファーストプレスを仕掛けた。しかしカタールが3-1-4-2の立ち位置をしっかりとれた時はなかなかプレスがハマることはなかった。

カタールの3バックに対してエクアドルの2トップ。ここで+1の数的優位。それに加えてアンカーも顔を出すのでエクアドルの2トップは実質2vs4でプレスに出なければいけない。これがカタールの狙いの一つだった。

しかしエクアドルもしたたかなチーム。2トップは無理にボールに出ることはせずにしっかり中央を締めながら一方のサイドへ追い込んでいく。

そしてエクアドルのSHが機を見て前に出てカタールの3バックへプレスに出る。しっかりカタールのWBのパスコースを背中で消しながらボールへ出る。

エクアドルのSHが前に出て何度もカタールの3バックのパスを引っ掛けてショートカウンターを発動させていった。カタールのSHの前に出るプレスのタイミングと角度は見事だった。

それでも配置の噛み合わせ上、やっぱりカタールの選手がフリーになっているシーンは結構あった。

カタールのIHサイドがサイドに流れてフリーになっているけどパスが出ない!前線の選手が列を降りてフリーで縦パスを受けてもトラップミス!エクアドルの4バックに対してWBが幅をとりフリーになっているところにサイドチェンジ!でも正確なキックが届かずカウンター食らう!

そんなシーンが多かったカタール。配置の優位をとっても技術的なミスでロスト!と非常に切ないシーンが多かった開催国。

目に見えないホームの重圧。はじめてのW杯の舞台の独特な緊張感。そんな目に見えないも圧力がカタール選手にのしかかり、いつも通りのプレーが出来なかったのかもしれないね!

エクアドルのビルドアップ

エクアドルは試合開始からボールを持つと、後方で優位性を作りながらボールを動かし、自分達のボール保持率を高めていった。

カタールの2トップのファーストプレスに対して、中盤の2枚(メンデスとカイセド)のどちらかが最終ラインに落ちて、2CBと共にダウンスリーを形成。3vs2の優位性を作ってビルドアップを安定させた。

この時(ビルドアップの時)両SBはやや高い位置に上がる。ややというのがポイント。

先程後方3バックと言ったが、厳密には扇型の5バックで横幅目一杯使いながらボールを動かす感じだった。

エクアドルのSBはダウンスリーのビルドアップの逃げ道として大外のレーンでパスを受ける。またカタールのWBを引きつける役割も担っていた。

横幅をとるエクアドルのSBにカタールのWBが食いつくと、ダウンスリーから一気に前線にまつ4人へ長いボールを送り込む。

前半序盤カタールのIHが今度はエクアドルのSBの食いつくと、背後ではなく、ライン間に縦パスを差し込んで前進するシーンも。

相手陣形にボールが送り込まれると両SBは積極的に高い位置に上がり、攻撃に厚みを加えていった。

前半両SB共に一回ずつサイドから決定機を演出した。右SBのブレシアードは2点目のアシストの見事なクロスを見せた。

おわり

エクアドルが前半早々に2点を奪い去り、後半はしたたかに試合をクローズし、開催国から貴重な勝点3を奪い去った。

カタールも後半から徐々にボール保持を高めていったが、終わってみれば枠内シュートは0とおわり攻守で見せ場を作れなかった。

2点目を奪われ奮起するように、アジア最優秀選手賞をとったこともあるアフィーフが最前線から最終ラインまで落ちてボールに関与。それによりカタールのボール保持率は高まり、カタールの攻撃が徐々に動き出した。

このアフィーフの動きはカタールの選手を助けたと言えるのではないだろうか。しかし反対にアフィーフの即興性がカタールのピンチとなったシーンも。

前半早々エクアドルの取り消されたゴールのキッカケとなったFK。この始まりはサイドに流れてボールを受けたアフィーフのドリブルから。中に切り込んだ所メンデスの深いタックルをくらいショートカウンターが発動されファールを与えた。

残りの試合カタールの明暗を左右するのはこの男かもしれない。ポジショナルプレーを思考するチームの中では彼のような即興的なプレーは異物なのかもしれない。

この試合のように時にチームを助け、時に大きな代償となる存在。カタールの第二戦ではより彼に注目して試合を見てみたいと思う。

エクアドルはやっぱりいいチームだった。オランダ、セネガルとのグループリーグはよりハイレベルになるに違いない。バレンシアの怪我の状態は気になる所。次節も是非出てきてほしいね。


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