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いまどきのホテル食パンの感覚。hotel koé(ホテル コエ)のbakery

hotel koé bakeryオープン

渋谷の公園通りを上った交差点のところにあるhotel koéに2020年10月1日、hotel koé bakeryがオープンする。といっても、一階のガラス張りのダイニングkoé lobbyは既にパンのおいしさに定評があり、今回はそれがhotel koé bakeryというブランド名で新しくスタートするのだそう。

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ブランドの要となるのは5種類の食パンで、商品開発に関わったというパンラボの池田浩明さんに、発売に先駆けてご案内いただいた。

フィナンシェ食パンとブリュレ シブースト

5種類のなかでも「フィナンシェ食パン」(850円)は、特別な感じだ。焼き菓子のフィナンシェに発想を得たという新感覚のお菓子的な食パンで、箱入りなので手土産によさそう。
パンは温めて食べるのが好みなので、私はフィナンシェ食パンもちょっと焼く。するとますますフィナンシェに近寄る。とくにサクみのあるミミのところの焦がしバターの風味がいい感じになる。そして想像していたより甘くない。これはいわゆるブリオッシュ食パンかと思ったけれど、いざ「ブリオッシュ食パン」と食べ比べると、まったく違うとわかる。ナッティなコク、艶があってヒキのない感じなどが。

フィナンシェというのは、焦がしバターとアーモンドの粉、卵白を用いる焼き菓子だが、この食パンには卵黄も入っている。香りが大事なバターはフランス産A.O.Pの発酵バター。小麦粉は、おいしい食パンといえばまっさきに思い浮かぶ北海道産の「ゆめちから」と「きたほなみ」をブレンド。自家製ルヴァン種で発酵させている。

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lobbyでティータイムに供される「ブリュレシブースト」なるアシェットデセールは、火であぶってキャラメリゼされたカスタードがパンの上でとろけて崩れる。ほろ苦いクリームの中には甘酸っぱいリンゴも。カリカリのクラムがアクセント。

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いまどきのホテル食パン

その他の4種類の食パンのなかで、最もベーシックなのはその名も「ホテル食パン」。

「ホテル食パン」という響きが頭の中で、対象となるパンを求めてふわふわと彷徨う。かつて、ホテルのベーカリーが日本のパン界のトップグレードに君臨していた頃、町のパン屋さんたちがそんなホテルのパンをイメージしてリッチな配合のスペシャルな食パンを作り、そう呼んだ。いまや、町のベーカリーの世界的なクオリティもパンの素材の上質さも配合のリッチさも価格の高級さも上昇するなか、「ホテル食パン」という言葉の響きはかつての意味をなさなくなり、ホテルの食パンという、もともとの意味に回帰しているのだった。ただ、ホテルは非日常空間であり、ホテル食パンはやはり特別なパンでなくてはならないと思う。

話が脱線してしまったけれど、hotel koé bakeryの「ホテル食パン」は、ホテルの看板食パンとしての矜持を保ちつつ、馥郁とした香りでスペシャルな感じを醸していた。それはアメリカ産のオーガニック小麦、ハイマウンテンの野生的な麦の香りなのかもしれなかった。ベイカーの長谷山さんは、これに麦茶を霧吹きしてトーストするとまたおいしいと言っていた。麦茶をですって!?やってみたくなりますね。

長谷山さんはメゾンカイザー出身の二十代。お母さんが買ってきたメゾンカイザーのトマトのパンを食べて感動し、この道に入ったというエピソードを楽しそうに語る。パンが大好きで、パンづくりのセンスがある職人だ。

池田さんはパンの味や食感を官能的な言葉で表現する。パンの表現が見た目と同じくらい池田さんらしい。

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モーニングビュッフェでも楽しめる

ショコラ食パンはとても好みだった。これも甘過ぎず、この上なくしっとりとしたココア生地にベルギー産チョコチップとくるみが入っている。その場にいたパンの愛好家の人たちが「あんバターがイケる!」と言っていたが、私はそのまま何もしないで食べてしまった。

ブリオッシュ食パンにはレバーペーストとピンクペッパーがとてもよく合う。全粒粉食パンはオリーブオイル。こうした取り合わせは、宿泊しなくてもlobbyのモーニングビュッフェであれこれ味わうことができる。ミルキーな自家製ホイップバターもおいしい。

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2年前に「Time Out 東京」の仕事で朝食の取材をさせていただいた時は、lobbyのビュッフェカウンター向こうでパン生地を成形したり分割するベイカーの人たちの様子が楽しく新鮮な眺めだった。10月以降もそれは変わらないそう。そして、食パン以外のパンも期待できそうだ。

hotel koé bakery 渋谷区宇田川町3-7





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