メインディッシュまでが長いホラー映画は眠くなる 映画『呪贄 悪魔の奴隷』を見た

土が腐ったような嫌な臭いが感じられる不気味な絵面はたまらなかったが、メインディッシュまでのシーンが長いこと長いこと。ホラー映画なのに、途中で眠くなってしまった。

インドネシア産ホラー映画『呪贄 悪魔の奴隷』の舞台は、ジャカルタ近郊にある、築古コンクリート造の大型団地だ。一度は大学で学ぶことをあきらめ、家族の世話をしていたが、ついに大学で学び直すことを決心をした姉を祝う家族。

ろくに働かない父の暴力に耐え、病弱な母の世話に追われながらも、日々友と懸命に遊ぶ少年。

など、団地には、「無条件に幸せ」というわけではないが、その日を賢明に、些細な幸せをかみしめるようにして生きる人たちが、集っている。

そんな、団地に迫る「ド級の大雨」、災害へ備える中起こる不幸なエレベーター墜落事故、不穏な影が団地の住民たちに忍び寄る中、ついに夜がやってくる。

動き出す「弔われたばかりの死体たち」、異変の根源を探る中で、明らかになる邪教の女神の存在。残された団地の人々の明暗やいかに……デデドン!!!

みたいな映画だ。

土葬する前に部屋に安置された遺体、コンクリートむき出しで、においや肌触りが感じられる団地の質感。舞台がインドネシアであることを活かした、嫌すぎる絵の数々がたまらない。

ただ、本作は文化的な背景が深堀され、冷や汗が背中を伝うような恐怖体験ができる作品ではなく、あくまで「呪われた力でよみがえった死体が襲い掛かる! ヒャッハー!」といったパニックホラーもの。

だと思うのだが、メインディッシュである、「死体や化け物大暴れ」要素までがとにかく長い。

2時間弱の本編のうち、「インドネシアの風土が感じられる、ただ、ただ嫌な絵」「邪悪な女神に関する説明パート」のような部分が、だらだら1時間半くらい続くのである。

そこからいよいよ、「ホラー映画の大トロ」にあたる部分が始まるのでだ、絵面は不気味なものの、登場人物たちはあまり死なず、死ぬ時の絵面も地味。

そうこうして、しばらく、化け物どもの無双が続いた後に、いよいよ「怪異の親玉」とでもいえる存在が登場するのだが、このシーンもこれまた微妙だった。

「死体大集合の儀式」「造詣がよさそうなクリーチャー」が存在していることはうっすらわかるのだが、画面がてんかん発作を起こしそうなほど明滅し、何が何だか判別できない。

ではとんちきでツッコミどころのある映画かというと、中途半端にまじめで、意外とよくできてもいて、ツッコミもできなければ、「馬鹿だなぁ(笑)」笑えることもない。

2時間弱、ずっと肩透かしを食らっているような映画だった。

ちなみに、本作はイスラム圏ホラーの中で最恐の異名を持つ『夜霧のジョギジョギモンスター』(とんちきすぎる邦題……!リメイク版では『悪魔の奴隷』というタイトルになっています)のリメイク版の続編、というめちゃくちゃ微妙な立ち位置にある作品である。だから、いまいちだったのかもしれない。

今度は、悪魔の奴隷の方を見てみたいと思う。シリーズ全体の設定がわかれば、本作ももっと面白くなる、かも…?

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