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”何度も辞めようと思った。”それでも6次化を続けられた3つの理由

今では耳にすることの多くなった、”6次化”(6次産業化)。

そんな6次化を2000年代初頭から始めていた、カントリーホーム風景の清水社長と奥様に、当時のことを振り返ってもらいました。

小さく、小さく、はじめていった

2000年くらいにアイスを出し始めたのが、6次化のスタートだったと振り返る清水ご夫妻。

息子さんに安心して食べさせられるものを作りたいという気持ちから始めたようです。

「息子が市販のソーセージを食べられなかったんですよね。けれど、学校の行事で作ったソーセージは喜んで食べていたんです。それがきっかけになって加工を本格的にやり始めました。あと、自分たちで生産している牛乳があるのに、なんで自分たちのところで加工品を作れないんだろうと思っていたのもあって始めたんです。」

作ってみると、町でも評判になったそう。
商品化をしたらいいというお声があったのだとか。

それから、数年後。
町からヨーグルトを作ってみないかと提案が来ました。

当時のことを聞いてみると、衝撃の一言がかえってきました。

「わたし、実はあんまりヨーグルト好きじゃなくて…」

「(ヨーグルトが)食卓に上がらなかったよね。笑」と語るご夫妻

せっかくのリクエストということもあったので、自分たちが食べて美味しいと感じるものを作ってみたくなったんだとか。
なるべく地元十勝の食材を使いながら、試行錯誤をしていたようです。

さらに、「お食事ってできないんですかね?」と、お客様からリクエストがあったようで。

そして、2000年代中盤頃からレストランも始めることに。

なんと、レストランを始めた場所は住居も兼ねていたそう。

レストラン自体も小さく小さく始めていく感じでしたね。やりたいなら、やればいいんじゃないと言いましたよ。」

「事業として成り立つとは思いませんでした。笑」と、清水社長は笑っていました。

何度もよぎった、”撤退”の2文字

一見、順風満帆に見える、ご夫妻の”6次化”。
しかし、何度も”辞めよう”と思ったことがあるそう。

「最初の3年半くらいは、うまくいかないこともあって、よく2人で喧嘩していました…」

「常に不安だったんです。自分ができる範囲を超えていたし…」

牛舎でのお仕事も同時にやっていたこともあり、限界を感じたことがあったんだそう。
また、需要が増えてきた段階で販路が広がり、未経験のことが次々と起こり大変だったと語ります。

さらに、加工施設を建てたタイミングで、こんなことをお願いされたことがあったんだとか。

「うちの子供が『お家にいてほしい。』って。3番目、4番目のうちの子供には、寂しい思いをさせたと思います。」と当時を振り返っていました。

乗り越えられたのは、この3つがあったから

ただ、つらいなかでも、”辞める”の一言はなかったようです。
インタビューをしていく中で、苦しいときに乗り越えられたのは3つの要因がありそうだと気づきました。

1つ目は、”想い”。
どんなことを目指して事業を始めるかが、苦しいときにもめげない気持ちを作れるのではないかと思います。

ご夫妻は、「『売上をあげよう』がゴールではなく、『好きなものを広めたい!』が目標だったので、苦しいときも続けられたんだと思う。」と語ってくれました。


また、「子供たちのためにシンプルで添加剤を使わない、安心できるものを作りたかったんです。やっていくうちに、だんだん美味しかったとかまた食べたいっていう言葉が原動力になってきましたね。」とも話してくれました。

2つ目は、”前向きな気持ち”。

「新しいことを始めると、現実の壁にぶつかります。悩んでいても何も生まれないなって。人からいろいろと言われることもあるんですけど、ひとつのバネにするしかないなって。」

3つ目は、”応援してくれる仲間”なのではないかと感じました。

「困ったときに相談したら、『好きにやったらいいんだよ。』とか失敗したときは、『次につながるからいいじゃん。』と励ましてくれましたね。」と当時を思い出す奥様。

「(失敗したとき)心の中では泣いていたかもしれない笑」と語る清水社長

想い、前向きな気持ち、そして応援してくれる仲間が重要なんですね。

次の世代につながるバトン

以前、奥様は半年くらい滞在していた牧場の従業員さんにこんなことを聞かれたそうです。

「夢は何?」

夢(ご夫婦の6次化やレストラン)を語っていたら、その当時話していたことが、今現実になっているんだとか。
また、その方の夢は百貨店のチーフになることだったようで、その方も夢を叶えたようで。

その従業員さんと一緒に植えた白樺を見たら、毎度思い出すと話していました。

「辛いことがあっても、前を向かないと!って思います。」

そんなカントリーホーム風景の現在は、ご子息のシンヤさんが6次化の舵取りをされているようです。
シンヤさん、以前は営業職として別の会社で働いていたとのこと。
実家の商品の独自性に惚れ込み、自分の営業の経験を牧場の加工品部門に活かしたいと考えて継いだんだとか。

「継いでくれたからよかったと思う。重荷になってないといいなと思うよ。」と笑うご夫妻。

奥様の想いが、確実に”夢のバトン”となって、次の世代につながっている印象を受けました。

取材日:2019年7月18日
取材:畠山 裕恵
編集:秋山ウテ

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