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【2020.05.14】本にはたくさん助けられてきた。その恩を、少しずつ返していく旅が始まった。

読みたい本のことを考えているときが、一番人生の短さを感じるかもしれない。

残念ながら、読むスピードは速くない。「世にある本すべては読めない」は当たり前としても、「そのなかでも読みたい本」すら、全部は読めないで終わってしまうんだろうと思う。次から次へとそういう本と出会ってしまうし、ことあるごとに再読したい本もたくさんあるし、自分がまったく足りない感覚。

寂しいことだけど、それだけ読みたい本を常に心に持てていることは、幸せなことでもあるね。


今日から、ゆっくりと対話した相手に複数冊の本を選書する企画が始まった。16人のご応募があり、今日はそのひとり目。実際の選書が完了するまではまだ時間がかかるけれど、対話は実行することができた。

その人の人生のお話を伺うのだけど、時間は限られている。できるだけ「選書のヒントになることを聞き出さねば!」という気持ちは取っ払い、ただただその人への関心を持って耳を傾けようとはしているけれど、焦って尋問みたいになっていなかったかは不安。

良い聞き手になれているかはわからない。けれど、人の人生にゆっくりと耳を傾けられる時間っていいなと素直に思った。

文章の編集の過程で執筆者の人生と向き合うことはある。それでも、どうしても「あるテーマに絞った文章においての」という枠が付いてしまうことが多い。

だからこうして、事前アンケートで多少の前提は入れているにせよ、自由な流れに任せて聞けるのはとても良い。


1.5時間の話が終わり、「さて、どんな本が良いだろう」と考える。

話に出てきたテーマ。
感じた雰囲気。
その人が願っていること。

いろいろな切り口から振り返って、もう一度その人のことをゆっくりと想像する。そうして浮かんでくる感覚や言葉を携えて、本棚をゆっくりと眺める。一冊いっさつの本に目を止めて、何かがピンと来るかどうか耳を澄ませる。音がならなくても、「ん?でも何かありそう」と思ったら、とりあえず棚から出してみる。

WEB本棚に登録している2,600冊の本にも、同じように目を通していく。本当は、できれば本屋さんにも行ってゆっくりと棚を眺めたい。まだ出会っていなかった本のなかにも、選ぶべき本があるかもしれないから。

とはいえ自分が知り得る本は有限。そこはどこかで諦めをつけて、その有限のなかで精いっぱいやることのほうを大事にする。

何かしら感じることがあった本を並べてみると、簡単に30冊を超えてしまう。よくよく向き合ってみると、やはりそれぞれに、その人に読んでみてもらいたい理由が思い浮かんでくる。その多くは、本のなかにある具体的な言葉やシーンを伴って。

30冊すべてをリストにしてお渡しできたらどれだけ楽か。

おそらく、ここまでの作業はまだ「選書」の序盤の序盤。きっとここからが本当に大事なところ。

どれを諦めたらいいのか、ひたすら葛藤する。
葛藤の過程のなかで、何度もその人のことを想像する。

ぴたりと合いそうな本だけでなく、少し枠をはみ出してみた本も入れてみたい。
5冊選ぶのであれば、テーマのバランスを取りたい。
できれば、その5冊のつながりにストーリーがあると良い。
そう考えるとこれが良さそうだな。あ、でももうすでに持っているかな。
この本もぜひと思うけど、いまではなく、もっと先で出会ったほうが良いだろうか。

...

ひたすら考え尽して、ときには直感も使って、「何を選ばないか」と決断していく。そんなもどかしい思いを潜り抜けなければ、本当の選書ではないのかもしれない。


大袈裟だろうか。でも、本気でやってみたらわかる。そうなるから。

でも、これこそが今回やりたかったこと。本気の本気で、人にも本にも向き合う。未熟な僕にはたしかに大変なことではあるけれど、いま挑戦したかったこと。

始まってみて、いま、とても楽しい。

このうちの一冊でも、その人が一歩前進して喜べたり、詰まっていたものが取れて楽になったり、長く置いておきたいと思うお守りになったり......そんな光景を想像すると、まるで本当にそうなったときのように嬉しくなる。


本にはたくさん助けられてきた。その恩を、少しずつ返していく旅が始まった。

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