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ファンファーレが聴こえる┆Vol.001┆ トラベルドクター 伊藤玲哉さん【前編】

「ファンファーレが聴こえる」では、毎回、事業を通じて社会課題の解決に取り組む方の思いをお伺いしています。本記事のほか、実際の対談を記録したポッドキャストもぜひお聞きください!
第1回目のゲストはトラベルドクターの伊藤玲哉(いとうれいや)さんです。本記事は前編と後編に分かれています。こちらは前編です。


プロフィール

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伊藤玲哉(医師、トラベルドクター
医師として、これまでに多くの患者さんの最期の瞬間に立ち会う中で、残された大切な時間で「旅行がしたい」と願う患者さんと出会う。病気で諦めていた旅行を叶えるため、『医師のつくる旅行サポート会社』設立を決意。グロービス経営学大学院 TOKYO STARTUP GATEWAY2019最優秀賞を受賞。
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近藤志人(ファンファーレ株式会社 代表)
crewwにて大手企業の新規事業開発、リクルートにて組織開発、大規模プロダクト開発などの経験を経て、2019年にファンファーレを創業。
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近藤志人(以下、近藤):「ファンファーレが聴こえる」、記念すべき第1回目のゲストは私の友人であり尊敬する起業家、トラベルドクターの伊藤玲哉(いとうれいや)さんです!

伊藤玲哉(以下、伊藤):こんにちは!よろしくお願いします。

近藤:まず、かんたんに自己紹介していただけますでしょうか。

伊藤:はい。伊藤玲哉といいます。もともと医師をしていて、現在は病気を理由に、旅行をあきらめている人の願いを叶えるサポート会社を立ち上げるために準備をしているところです。
医師として働いていた時に担当した患者さんが、「旅行がしたい」と仰っていました。実際は、そういう願いを叶えられないまま亡くなる方はすごく多くて、その時自分が話した方も旅行に行けないまま最期を迎えました。そうした経験を通じて、人生最期の時に、自分の行きたい場所、会いたい人、食べたいものといった願いを叶えられる環境を作れたらいいなと思い、今は医師という職業を離れて会社を立ち上げるために準備をしているところです。

近藤:なるほど、ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

伊藤:はい、よろしくお願いします。

■医師7年目、経営者1年目

近藤:トラベルドクターの活動を始めてどれぐらい経ちましたか?また事業、取り組みがどんなものか教えていただいてもいいですか?

伊藤:はい。この4月で医師になって7年が経ちます。自分が今の仕事をやりたいなと思ったのは医師1年目です。本格的に形にし始めたのは1年ぐらい前からです。去年の3月末に大学病院を退職し、今はフリーランスでアルバイトをしながら、事業立ち上げの準備をしています。

近藤:なるほど。6年の構想期間を経て、行動に移したということですね!現在の具体的な取り組みや、直近の取り組みについて教えて下さい。

伊藤:去年の目標は「仲間を増やす」ことでした。経営学の大学院に通って自分のプランをブラッシュアップしたり、東京都や経済産業省が主催しているコンテストに参加して参加者の人と知り合っていきました。
今年はそのブラッシュアップした自分のプランを形にしていくために会社を立ち上げて、一つずつ患者さんの旅行を実際に叶えていこうとしています。

近藤:亡くなっていく方を見届ける経験というのは、多くの医師の方が経験することだと思います。伊藤さんが最期に旅行に行きたいという願いを叶えたいと思うに至った経緯を教えていただけますか?

伊藤:自分が患者さんの旅行を叶えたいと思ったのは、医者として働き出して数ヶ月経った時期でした。まだ何もできなかった段階だったので、医師という立場ではあっても、目線は患者さんに近かったかなと思います。そういう中で、自分にできることは何かな?と考えたとき、患者さんの話を聞いて、どういうことを悩んでいるのかな?どういうふうに考えているのかな?っていうのを聞き出すことが自分の役割かなと思っていました。

忙しい医師の仕事の中で、少しでも患者さんのところに足を運んで、医学的なことは別に、どういう人生だったのか?家ではどういう風に過ごしていたのか?退院した後に何をしたいか?という質問もしました。

ある日、いつもみたいに患者さんのところに行って「退院したら何したいですか?」と話をした時に、その方が言ってくれたのが「旅行がしたい」ということでした。医師である自分にとってはすごく特別な経験でした。その方がかなり勇気を出して話してくれたことであったのは、見ていてすごく感じたので、何とかしてそれを叶えたいなと思ったのが最初のきっかけだったと思います。

近藤:そういうきっかけがあったんですね。もともと医師を志していたのも、そういった患者さんに寄り添って解決してあげたいという思いがあったんですか?

伊藤:そうですね。自分自身が小さい頃、喘息を患っていて体が弱かったのが医師を目指したきっかけになっていると思います。
父が地元でクリニックを開業していて、自分が喘息発作を起こした時は父のクリニックへ行っていました。吸入器をかざしてくれて、自分の発作が収まるまでそばにいてくれたっていう経験があって、自分の中で医療は「寄り添うもの」だという思いがあります。そばにいてくれるだけでこんなに人って安心できるんだなというのを感じていました。

近藤:お父さんがお医者さんだったということで、家族的なコミュニケーションと医療のサポートっていうのが一緒になって幼少期を過ごした経験が、伊藤さんの中での医療とは何かという価値観を形成するに役立ったということでしょうか?

伊藤:そうですね。

近藤:なるほど。1年目に実際に患者さんの心に寄り添うような働き方をされて、旅行を叶えたいと行動に移し始めるまでは、期間が空いてると思います。行動に移すまで6年かかった理由や、その間どんなことをされたかを教えてもらえますか?

伊藤:はい。もともとは、ボランティアでやろうかなって考えてたんですね。例えば、平日は医師として働いて、土日や休日を使って自分の担当している患者さんに対して、旅行がしたい方がいたらそれを叶える。小さくでもいいからやっていこうと考えていたのが医師2年のことです。それに向けて、まずは目の前の医療をしっかりと学んで経験をつけようと思っていました。
3年間で内科、外科、救命救急、在宅診療などのさまざまな医療の形を勉強しました。

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■「それって自己満足なのでは?」

近藤:はじめはボランティアで空いた時間でなるべくやって行きたいっていう思いから、医師を退職されて、この事業に100%コミットできる状態で取り組むに至ったのはどんな理由があったんでしょうか?

伊藤:はい、そうやって最初はボランティアでやろうと思ってたんですけど、いろんな人に自分の思いを伝えていく中で、あるドクターがこう言ってくれたんですね。「それって自己満足なんじゃないの?」と。
「自分が週に1人行っても年間50人ぐらいで、日本の年間死亡者数は140万人。140万人のうち50人の願いを叶えても、それは日本全体からすれば何も変わってないんじゃないの?それで本当に満足できるのか?」という言葉を聞いてすごく納得したんです。

自分がこれから50年それをやったとしても、生涯で2500人しかできない。でもたった1年でその何万倍という人が亡くなっている。これは目の前の人だけが旅行できればいいのではなくて、ちゃんとそういう旅行ができる社会の仕組み自体を作らないと、本当に目指している、患者さんの旅行に行きたいという願いを叶えることはできないなと思いました。それで、自分がボランティアでやろうという考えから、仕組みを作るという、よりマクロな視点を持てるように自分が勉強していこうと考えが変わりました。

近藤:じゃあ、ボランティアではなく事業開発として取り組みをしたいっていうところで医師を退職するっていう意思決定をしたっていうことなんですね。これまでの経験でいうと、医師としてずっと勉強して働いてきたわけで、いきなり事業開発やビジネスをやるってなると結構尻込みしてしまう部分もあるような気もするんですが、その点はいかがでしたか?

伊藤:そうですね、医者ってすごい万能なイメージを持ってる人もいると思うんですけど。

近藤:何でもできる優秀な方が多いイメージがありますね。

伊藤:実際まったくそんなことなくて(笑)社会から見たら、医学という狭い領域に囲まれてずっと生きているので、医療以外のことは一般の方よりもむしろ少ない、世間知らずの塊かなという部分もあると思います。
自分がそういう仕組みを作ろうと思った時には、自分自身も痛感しました。なので、医学だけの知識ではかなり足りないなと思って、仕組みを作るための勉強をするべきだと感じて、医師5年目のころから大学院に通って経営学を学びました。

近藤:実際に大学院で経営学を学ばれて、知識を身に付けて事業開発をやっていこうというところが先生らしい感じがします(笑)。
次は、これまでの取り組みの手応えを教えていただいてもいいですか?

伊藤:経営や医学について、だいぶ知識はついてきたかなと思っています。次は、実際に患者さんの旅行に行きたいという願いを叶えていきたいと考えています。最初にしたのが、旅行をサポートする団体の活動にボランティアとして同行させてもらうことでした。

ボランティアを通じて、実際に患者さんが旅行をしている姿とか、旅行を叶えた患者さんの表情とか、その家族の気持ちの変化といったものを自分の肌で感じることができました。旅行は間違いなくみんなにとって良い方向に働くと感じた体験でした。これからは、自分が主体となって旅行を叶えていく段階に進みたいと思っています。

ただ、今はコロナの影響で、一般の方ですら感染リスクがあります。なので、病気の方の旅行を叶えるというのは今は控えています。コロナが落ち着いてきて、ある程度社会の経済活動がまた落ち着いて正常に戻ってきた段階で、この旅行というものを世間に向けて発信していけたらいいなと考えています。

近藤:先ほど、旅行を支援する団体があるとのことでしたが、トラベルドクターみたいなカテゴリのお仕事って今既に存在しているんですか?

伊藤:調べてみると本当に少ないんですけど、例えば医師をリタイアしてそういう旅行とかのツアーとかに同行する人がいたり、自分の診療所で自分の担当している患者さんの願いを個別に叶えようという形で旅行を実現している方が全国で何人かいらっしゃいます。
ただ、旅行専属だったり、僕みたいに仕組み作りとしてやろうとしている人は今のところいないというのが現状です。これは日本だけではなくて世界を見ても同じようなもので、ボランティアとしてはいくつかあるんですけど、そこまで多くはないですね。

近藤:草の根的な活動にとどまっていて、それを仕組み化してスケールさせていくといったことはまだまだ行われていないのが現状なんですね。


後編に続く


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